まさにその通り 『政権が終わった』

 東京新聞 消費増税 衆院可決 政権交代が終わった日
2012年6月27日 07時04分

 
 消費税率引き上げを柱とする社会保障と税の一体改革関連法案は26日午後の衆院本会議で民主、自民、公明三党などの賛成多数で可決、参院に送付された。消費税増税法案の採決で、民主党では小沢一郎元代表鳩山由紀夫元首相ら57人が反対し、16人が棄権・欠席した。元代表は当面は党に残留しながらも、離党・新党結成に踏み切る意向を示唆。民主党は事実上の分裂状態となった。消費税増税への反対の世論が根強い中、野田佳彦首相はこうした民意に耳を傾けず、今国会中の成立を目指す意向を表明した。


 2009年の夏が、はるか昔に感じられる。2012年6月26日は、政権交代が終わった日だ。
 国民の圧倒的な期待を受けて政権を獲得した民主党はこの日、消費税増税の関連法案をめぐり、事実上の分裂状態に陥った。政権交代のけん引車だった小沢一郎元代表民主党政権の初代首相・鳩山由紀夫氏を含む五十七人が反対するという、過去に例をみない事態。野田佳彦首相ら執行部も元代表らも、民主党に寄せられた約三千万人の民意を分断させてしまった罪は大きい。


 首相は党が割れるのを覚悟の上で、衆院選では約束しなかった消費税増税を実現しようとしている。そして衆院選で戦った自民、公明の両党と組む「疑似大連立」に踏み込んだ。
 
 民主党を押し上げたのは、霞が関と癒着して劣化した自民党政治に代わり、国民が主役の政治を実現してほしいという国民の期待だ。だが、期待はすぐに失望に変わってしまった。

 マニフェストの主要政策は、ほとんど結実していない。その理由について民主党は、財源確保の見通しが甘かったことを上げるが、もしそうならば、霞が関の既得権にもっと切り込む道もあったはずだ。だが野田政権はその道を取らなかった。政権を取り、自民党時代から続く「主権在官」の体質に染まってしまったのだろう。


 政権の変質は消費税増税以外でも、ひっそりと進む。原子力基本法宇宙航空研究開発機構法を改正。原子力と宇宙は平和利用に限るとの理念を捨て、軍事利用への道を開いた。自民党と連携し、そのタカ派的な体質まで引き継ぐようになると、どれだけの国民が想像しただろうか。

 民意と無関係なところで政治が動いている。正すのは、私たちの一票しかない。そのためにも、次の衆院選まで、政権交代が終わった日のことを記憶にとどめておく必要がある。 (関口克己)