宝塚歌劇支局劇評 月組新人公演『スカーレット・ピンパーネル』

 月組「スカーレット・ピンパーネル」新人公演は、研3の珠希りょうさんがパーシー役に大抜擢、マルグリット役は歌唱力に定評のある彩星りおんさん(研7)のコンビで上演された。いずれも初主演。

 初演の星組の時の新人公演よりカット場面が少なく、本公演を出来るだけ忠実に再現したのが特徴。一幕のコメディフランセーズやマリーのアトリエ、フィナーレのカットなどはあったが休憩なしで約2時間あった。

 結果は、珠希さんが研3とは思えない落ち着いたたたずまいとソフトで確かな歌唱力で多重人格のパーシー役をみごとに最後まで演じぬき、類いまれな実力を発揮。前回「ラスト プレイ」新人公演で霧矢大夢(きりや・ひろむ)さんが演じたムーア役に起用されて好演、注目されたが初主演の今回も難役を難なくクリアした。ただ、大劇場の空間を一人で支配する存在感はまだまだ。あとは、自ずから身に付く華のようなものが備われば鬼に金棒か。なんたってまだ研3である。まだまだ時間はある。

 彩星さんのマルグリットも適役好演。元々男役だった経験が生かせる大きな娘役であることが功を奏し、その芯のあるパワフルでしかも涼しげな高音が大劇場の隅々まで響き「あなたを見つめると」と銀橋ソロの「忘れましょう」は聞かせた。相手役とのバランスの点ではやや貫禄がありすぎた感もあるが、化粧法にも工夫がみられ、華やかな雰囲気が漂った。


 ショーヴランは紫門ゆりや。龍真咲さんと明日海りおさんの中間みたいな役作りで、立ち姿はきりっとしているが、主役2人に比べると歌唱が不安定。歌というよりセリフのような歌い方は面白かったが低音が聞きづらかった。

 ほかにはロベスピエール役の宇月颯(うづき・はやて)さんが、歌、演技ともにメリハリが効いてうまかった。シュザンヌ役の咲希あかねさんの清楚なたたずまいにも注目。

 アルマン役の煌月爽矢さん、アントニー役の鳳月杏さん、アンドリュー役の貴千碧さんらはこれといった見せ場がなく次回に期待。プリンス・オブ・ウェールズ役の響れおなさんは舞踏会で弾けまくり、ここ一発が冴えた。

 ともあれ主役2人の大健闘が際だった新人公演だった。

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