劇評 ミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」(宝塚歌劇支局100417:薮下哲司氏)


 宝塚大劇場月組公演 2010年4月16日(金)〜5月17日(月)

 霧矢大夢(きりや・ひろむ)さん、蒼乃夕妃(あおの・ゆき)さんの月組新トップコンビ披露公演、ミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」(小池修一郎氏潤色、演出)が宝塚大劇場で開幕した。

      
      写真=左:蒼乃夕妃さん 右:霧矢大夢さん


 「スカーレット・ピンパーネル」は2年前、安蘭(あらん)けいさんを中心とした星組で初演され大評判となった作品の再演。 参考=20080620三井住友VISAミュージカル『THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)』

「ひとかけらの勇気」はじめフランク・ワイルドホーン作曲の佳曲ぞろいのミュージカルで、霧矢さん、蒼乃さんという実力派コンビのお披露目にはまさにぴったりの選択だった。作品的にはフィナーレがリニューアルされた以外はほぼ星組版を踏襲している。

   
   2008年星組 左:遠野あすかさん 右:安蘭けいさん

 予想通り、霧矢さん扮するパーシーは、硬軟自在、初演の安蘭さんに勝るとも劣らない素晴らしい仕上がり。主題歌「ひとかけらの勇気」も、霧矢さん独特のまろやかな歌声で、さらに魅力的。スパイ・グラパン役は、極端に低い声で演じきったが、このあたりのコミカルな間は、まだやや硬い感じ。これから回数を重ねるにつれてよくなるだろう。

 マルグリットの蒼乃さんも、よく伸びる素直な歌唱が好印象。大人びた雰囲気も役によくあっていて、初演の遠野(とおの)あすかさんを彷彿させた。歌、演技ともトップ披露とは思えない安定感だったが、本領発揮はフィナーレのデュエットダンスだった。霧矢さんを立てながらのあまりの見事なダンスは思わず見惚れるほど。これだけのダンスはこのところ見たことがない。

 ショーヴランの龍真咲(りゅう・まさき)さんは、初演の柚希礼音(ゆずき・れおん)さんの印象がまだ記憶に新しく、やや不安だったのだが、そう思って見たせいか予想以上の好演。なかでも歌唱に工夫が見られ、歌詞の口跡もクリアで、屈折した青年の苦悩が浮きあがり、骨太な感じではない繊細なショーヴランの新たな魅力が出た。

 マルグリットの弟アルマンは明日海(あすみ)りおさん。この役は明日海さんのさわやかな個性にぴったりで、いるだけで魅力的だが、逆に影がうすい感じもした。ショーヴランにかけているのだろうか?役替わりが楽しみだ。

 アルマンの妻マリーは憧花(とうか)ゆりさんのしっかりした雰囲気で実力を発揮した。


 5人以外の出演者は、デュハーストの青樹泉(あおき・いずみ)さんに存在感があったのと、プリンス・オブ・ウェールズの桐生園加(きりゅう・そのか)さんの熱演が印象的だった。

 フィナーレはエンディングが終わったあと、まずショーヴラン役の龍さんが銀橋で「ひとかけらの勇気」を歌い(役替わりの時は明日海さん)第96期生38人のロケットへ。「統一」をテーマに、マルグリットの舞台衣装をイメージした深紅の衣装によるラインダンス。銀橋での足上げが目新しい。


 続いて、白に黒のポイントが入った衣装の娘役陣と霧矢さんによる「謎解きのゲーム」をバックにしたダンス。続いて男役陣の剣のダンスへ。ここは衣装がメタリックなシルバーに変わり、曲も「炎の中に」に変わっていた。桐生さんがリードダンサー的存在。

 そして、霧矢さんと蒼乃さんのデュエットダンスへと続く。曲は「あなたを見つめると」。2人の息のあったダンスが素晴らしい。

 パレードはエトワールが羽咲(はざき)まなさん。階段降りは初日は明日海さんが最初でピンパーネル軍団の珠城(たまき)りょうさん:第94期生を除く6人プラス桐生さん、娘役も彩星(あやほし)りおんさん:第90期生と憧花さんが入り、そして龍さん、蒼乃さん、霧矢さんの順だった。

ランキングに参加しています。
にほんブログ村 演劇ブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村