虞美人新人公演 劇評


         
    左:天咲千華(あまさき・ちはな)さん 右:鳳真由(おおとり・まゆ)さん


宝塚歌劇支局 薮下哲司(やぶした・てつじ)氏 100403より

 新人公演は劉邦のモノローグと続くプロローグのレビューシーンがカットされ、いきなり桃娘(本役・望海風斗=のぞみ・ふうと=さん)に扮した実咲凛音(みさき・りおん:2009年入団第95期生)さんが登場。ドラマ部分のみを抽出した形で展開、休憩なしで約1時間55分となった。(新人公演も木村信司氏が担当)

 実咲さんのさわやかで名前通り凛とした桃娘を筆頭に、花組の新人公演メンバーは、どの役もセリフも歌も充実しており、新人公演のレベルを超えた仕上がりぶり。


 項羽の鳳真由(おおとり・まゆ)さんは、今回が新人公演初主演。最初は立ち姿に毅然とせず、ソロの声が上づったりして男役の力強さに欠ける部分があったのだが、中盤からはどんどよくなり、どっしりと落ち着いた雰囲気で項羽らしい直情的な剛毅さをも表現、なかなか見事な主演ぶりだった。甘い表情を引き締めてシャープさがでればさらによくなるだろう。

 
 虞美人は天咲千華(あまさき・ちはな:2006年入団第92期生)さん宙組から組替えで異動「外伝ベルサイユのばら」で初の新人公演ヒロインを務めたが2度目が虞美人という大役となった。男役から転向しただけあって、可憐な雰囲気の割には演技に押し出しがあり、今回の虞美人のように大舞台で数人の演技で見せる場面の多い芝居は彼女にとっては逆にツボにはまったようだ。前半のラブシーン、後半の牢獄、そして、自害とドラマチックに演じ分けた。あとは娘役としての華を身につけてほしい。


 劉邦壮一帆(そう・かずほ)さん)の瀬戸(せと)かずやさん:第90期生。この人もうまい。本役の壮さんそっくりの力強い歌声とセリフ回しにはびっくりしたが、これだけうまくコピーできるというのも才能だろう。立ち姿も凛としていて見映えがした。


 あと韓信音羽麗(あいね・はれい)さん)の彩城(あやしろ)レアさん:第90期生は、その上背が一際目立ち、公演の長としての責務からか1部と2部のナビ役としても活躍した。

 范増(夏美(なつみ)ようさん)の真瀬(まなせ)はるかさん:第92期生、張良未涼亜希(みすず・あき)さん)の煌雅(こうが)あさひさん:第90期生も巧演。宋義天真(てんま)みちるさん:第92期生と紅林の鞠花(まりか)ゆめさん:第92期生・159㎝のコンビも舌を巻く巧さだった。

 若手二枚目役の虞美人の兄、子期(朝夏(あさか)まなとさん)は真輝(まき)いづみさん:第93期生だったが、こちらもさわやかな演技で目を引いた。


 娘役では実咲さんのほか呂妃(花野(はなの)じゅりあさん)の梅咲衣舞(うめさき・いぶ:第90期生)さん、戚(白華(しらはな)れみさん)の月野姫花(つきの・ひめか)さんも忘れがたい。

20090928『宝塚評 「外伝ベルサイユのばらーアンドレ編ー」新人公演
宝塚ロマン「外伝ベルサイユのばらアンドレ編ー」(植田紳爾氏脚本、演出)の新人公演(鈴木圭氏担当)

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