ステージレビュー 「ハムレット」をロック調に 宝塚バウホール公演開幕 


 2010年2月4日 文・さかせがわ猫丸氏 写真・岸隆子氏 

 宝塚月組バウホール公演「HAMLET!!」が、2月4日に初日を迎えました。まずポスターのインパクトがすごかったですね。龍真咲(りゅう・まさき)さんの美しい顔のアップは、思わず目を引きます。脚本・演出の藤井大介さんは、ショー作家として名作をいくつも世に送りだしているだけに、ロック・オペラと称する今回の作品は、どんなパフォーマンスをみせてくれるのか、期待も高まります。


 題材の「ハムレット」は世界的に有名なシェイクスピアの戯曲で、宝塚でもこれまで3度上演されています。観たことがない人でも「生きるべきか、死ぬべきか」「尼寺へ行け」などのセリフは耳にしたことがあるのではないでしょうか。男女や親子の愛憎が絡む、王子ハムレットの復讐劇を、生バンド演奏の「ロック」で表現とはいかに!?


 主役のハムレットを演じるのは、もちろん龍さん。そして、まもなく花組のトップ娘役に就任する蘭乃はな(らんの・はな)さんが、恋人のオフィーリアに扮します。ハムレットが復讐の炎を燃やす相手・クローディアスには、越乃リュウ(こしの・りゅう)さんが。その妃となるハムレットの母ガートルードは、専科の五峰亜季(いつみね・あき)さんが演じます。


 デンマークにある宮殿では、新しい国王の戴冠式が行われていた。先王だったハムレットの父が亡くなって2カ月もたたない間に、弟クローディアスが王位につき、あろうことか母ガートルードを妃に迎えるという。悲しみと憎悪に苦しむハムレットに、親友ホレーシオが「城壁で先王の亡霊を見た」と打ち明ける。ハムレットは真実を確かめるため、深夜、城壁を訪れることを決断した。


 ステージには、いわゆる芝居のセットはありません。電飾が光る可動式の階段があるのみで、まるでコンサートステージのようです。物語の展開はほとんど歌で進行し、意表を突くほどの激しい音楽がガンガンに登場します。主演の龍さんはロングの髪を高く盛って、ハードなレザーのスーツで、まさしくロック歌手のよう。小さな顔に抜群のスタイルで、華やかさも満点です。越乃さんに至ってはブルーの髪が豪快に立っていて、どこのビジュアル系バンドの人かと思うほど! 周りのダンサーや登場人物も同様なのですが、唯一、オフィーリアだけが真っ白なふわふわドレスでお嬢様スタイルのため、清楚な雰囲気が際立ち、強烈な印象を残します。蘭乃さんはとても可憐で、ややアニメチックな声もキュート。なるほど、トップ娘役になるのもわかるなあと納得してしまいました。


 ハムレットとの恋は、クローディアスの側近でもあるオフィーリアの父や兄に快く思われておらず、ついには言葉さえ交わしてはならぬとさえ命じられてしまう。一方、深夜に城壁を訪れたハムレットの目の前には、先王である父が亡霊となって姿を現した。父は、眠っている間に毒薬を耳に流し込まれ殺害されたと告げる。そしてその犯人こそ、王座と王妃を奪ったクローディアスだというのだ。怒りに燃えたハムレットは復讐を誓い、人々の目を欺くために狂気を装うことを決意した。それがたとえ恋人オフィーリアの前であったとしても…。


 ハムレットといえば、周囲が戸惑うほどの≪狂気≫な演技が重要となりますが、その様子を表すのにもロックな音楽は合っているようでした。「尼寺へ行けソング」も軽快で、独特の古いせりふまわしはあるものの、リズムある音楽に乗せて現代風にアレンジされているので、若い人にもなじみやすくなっています。有名な「ハムレット」という作品を一度は見てみたかった、でも古典は難しそう…という人にもおすすめです。


ロック・オペラ「HAMLET!!」
《宝塚バウホール公演》2010年2月4日(木)〜2月14日(日)
⇒詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ
日本青年館大ホール公演》2010年2月19日(金)〜2月25日(木)
⇒詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ