小沢幹事長への「狙い撃ち」ではなかったのか?


東京新聞より引用

 「秘書の壁」に阻まれ、政権の最高実力者を罪に問うことはできなかった。小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体の土地購入事件をめぐる東京地検特捜部の捜査は四日、小沢氏不起訴、衆院議員石川知裕被告(36)ら三人起訴で決着した。昨年三月に始まった「小沢VS特捜」の十一カ月に及ぶ攻防。事件にはなお疑問が漂う。政治とカネだけでなく、検察捜査にも厳しい批判の風が吹き付けている。 

 「これだけの証拠で小沢氏を共犯に問うのは無理だ」。小沢氏の不起訴の方針が決まった三日夜、検察幹部の一人は語った。

 「四億円の原資を隠すため、小沢氏に『銀行から借りたことにしておきます』と報告し、了承を得た」。石川知裕被告がこう供述し、特捜部は、小沢氏の立件を視野に捜査を進めた。

 特捜部は、小沢氏の署名のある銀行融資関連書類も押さえていた。「小沢氏が原資を隠そうとした証拠だ」とみる地検幹部もいた。

 しかし、上級庁の東京高検や最高検と協議を始めると、反応は違った。「偽装工作を了承しても虚偽記入そのものを了承したとは言えない。立件に十分な証拠とは言えない」との意見が相次いだ。

 ゼネコンからのヤミ献金の有無も石川被告らは受け取りを否定する供述に終始した。「原資をゼネコン資金と認めれば、虚偽記入の共謀は、小沢氏とのあうんの呼吸でもいい」と話す検察幹部もいたが、小沢氏の立件には至らなかった。

 「精いっぱいやった。だが、最大の壁を突き破れなかった」と検察幹部。威信をかけた捜査は幕を閉じた。


◆水谷資金『立証には自信』
 土地購入費にゼネコン資金が含まれていたか否か。石川知裕被告らの公判でも最大の焦点となるが、検察側は立証に自信を示す。

 検察側の立証の柱は、ゼネコン側の供述だ。中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)の元トップらは、土地購入直前の二〇〇四年十月と〇五年四月に五千万円ずつ、同年九月に二千万円を石川被告や大久保隆規被告に渡したことを認めているとされる。

 ある検察幹部は「石川被告らが現金授受を否定しても、小沢氏側への資金提供は立証される」と話す。

 裏金を用意したとされる水谷建設経理担当者らの証言に加え、元トップが上京の際に利用した新幹線の使用済み切符などの物証もあるとされ、現金授受の立証は可能とみているようだ。

 もう一つのポイントは、小沢氏から二度にわたって聴取し、同氏が署名した複数の「小沢調書」だという。別の検察幹部は「小沢氏ほどの人物が、調書に記録された供述内容を公判で翻すことはないだろう」と話す。

 公判で小沢調書への反証を展開し、その内容の信用性を否定することで、土地購入費への「水谷資金」充当の立証を目指すという。


◆特捜部長ら『狙い撃ち』否定
 小沢氏らの処分後、午後六時から東京地検で行われた記者会見には、谷川恒太次席検事と佐久間達哉特捜部長が出席。土地購入代金の原資や小沢氏の不起訴の理由に質問が集中した。

 佐久間部長は「原資は必要に応じて公判で明らかにする」と明言を避けた。ただ、「事件は原資を隠すのが目的。原資は悪質性を示す一つのポイント」とも述べ、問題のある資金であることを示唆した。

 「原資が解明できなければ形式犯との批判も出るのでは」との質問には、「原資の実態、隠ぺいの手口、虚偽記入の規模などを考えて三人を起訴した」と反論。さらに「小沢氏の会見通りのことをわれわれが認定しているわけではない」と述べ、「原資は個人資産」という小沢氏の主張と一線を引いた。

 小沢氏の不起訴理由にも質問が相次いだが、「起訴できるだけの証拠がなかった」と繰り返すのみ。狙い撃ちとの批判には「特定の政治家を狙っているわけではない」と語気を強めた。

 政治への影響は「身柄確保は国会会期直前、できるだけ配慮したがやむを得なかった」とした。


◆巨額資金移動闇の中
 小沢氏の資金管理団体陸山会」をめぐっては、土地購入原資など総額二十億円を超える虚偽記入が罪に問われた。同会の政治資金収支報告書に記入のない巨額の資金移動は、ほかにも明らかになったが、小沢氏はこうした資金の説明を一切していない。

 陸山会が二〇〇四年十月に東京都世田谷区の土地を購入する直前、小沢氏関連の三つの政治団体から同会に計一億四千五百万円が集められた。この資金は、銀行融資を受けるための担保となった四億円の定期預金の原資となったとされる。この資金移動は陸山会や三つの政治団体の収支報告書に記入はない。

 〇七年五月に陸山会の銀行口座から引き出され、小沢氏に返却されたとされる四億円は虚偽記入罪の対象になったが、原資は不明だ。直前に小沢氏関連の複数の政治団体から陸山会の口座に計四億円の入金があり、これは収支報告書には記入されていない。

 〇五年三〜五月には、陸山会の銀行口座に四億円が入出金されていた。石川知裕被告は「小沢先生から預かった資金」。小沢氏は「側近(故人)から預かったお金」とそれぞれ供述しているという。

 なぜ四億円もの資金を出入金しなければならなかったのか。理由は不明なままだ。


◆不正資金授受ない石川被告
 石川知裕被告が弁護士を通じて出したコメント 私の軽率な判断に基づく行動により政治資金規正法違反の罪で起訴されました。このことについては、有権者の皆さま、民主党支持者の皆さま、私を支援してくださっている地元十勝をはじめとする支持者の皆さま、その他大勢の方にご迷惑やご心配をおかけしたことを深くおわび致します。私が収支報告書に不適切な記載をしたことに間違いなく、このことについて深く反省しておりますが、一部に報道されているような不正な資金を受け取ったことは断じてないことをお誓い申し上げます。その点では、どうか私を信じていただきたく存じます。


 単純な疑問 5〜6年前の「新幹線のキップ」なんかいつまでも保存しますか? 刑務所にいる水谷建設の元会長が所持しているの?