今頃 月野姫花さんを確認するとは

 花組の若手スター、朝夏(あさか)まなとさんのバウ初主演作「BUND NEON上海」(18日まで)は、1930年代の上海を舞台にしたサスペンス仕立てのミュージカル。フランス、イギリスなど列強国が支配した租界を舞台に話はテンポよく展開する。朝夏さんやヒロインの白華(しらはな)れみさんはもちろん、バウホール公演らしく、さらなる若手の熱演も手伝って見応えある作品に仕上がった。

 薄暗い照明に中国風シャンデリア、中国格子をほどこした何枚もの壁…。セットのすべてがうっそうとした上海の裏社会を表し、見る者を引き込んでいく。期待の演出家・生田大和氏のデビュー作ともなった「BUND NEON−」はテンポの早いサスペンスミュージカルに仕上がった。


 新人公演で4度の主演、今回がバウ主演2度目となる朝夏さんも、そんな裏社会に一人飛び込んでいくエリート捜査官を熱演。172センチと男役として恵まれた体格に長い手足、大きな瞳。大劇場よりライブ感が強いバウホールではさらに舞台映えする。素手での立ち回りは迫力満点だ。ヒロインの白華れみさんも、大きく切れ込みの入ったチャイナドレスや妖えんな黒のロングドレスを見事に着こなし、ナゾの人妻を好演している。

 物語は1930年代のロンドンと上海を舞台に展開。朝夏さん演じるクリストファーが恋人を殺され、事件を解明するために乗り込んだ租界時代の上海で裏社会にまぎれていく。どこまでが味方でどこからが敵なのか。一瞬たりとも気が抜けない。

 さらに、同公演で特筆すべきは若手の熱演が目立つことだ。朝夏さん演じるクリストファーの婚約者・シンシアを演じる月野姫花さん、中国の裏社会を牛耳る杜月笙(とげつしょう)を熱演する紫峰七海(しほう・ななみ)さん…。月野さんは初舞台の時から可憐(かれん)な舞台姿が話題だったが、今回は薄幸な犠牲者、しかも回想シーンでの登場とあって抜群の透明感で演じきり、一層事件の悲壮感を引き出した。紫峰さんはドスの効いた低音、いでたち、堂に入った立ち回りと抜群の存在感で舞台を支えている。新年最初のバウ公演、勢いある若手も手伝い、さい先のいいスタートになった。

 ◆BUND NEON上海〜深緋の嘆きの河〜 1937年。上海ではチンパンと呼ばれる中国マフィアが絶大な影響力を持っており、その頂点に立つ杜月笙(紫峰七海さん)が社会のすべてを掌握していた。
 そんな中、スコットランドヤード特別捜査官のクリストファー(朝夏まなとさん)は観光と偽って上海にやってくる。彼の恋人シンシア(月野姫花さん)とその両親がロンドンで誘拐され殺害された事件を解決するためだ。
 クリストファーは早速、英中間貿易を取り仕切るトラヴァース商会のパーティーに乗り込む。同社は、シンシアの姉・ミシェル(白華れみ)の嫁ぎ先だった。夫のエドガーは会社を大きくしようと杜に取り入るうち、アヘン中毒に陥っている。事件が杜と関係があるとにらんだクリストファーはその手先・劉(望海風斗さん)らと対峙(たいじ)していく。