TAKARAZUKA SKY STAGE 090620


◎06/20 10:00 1914/愛(東京・新人公演) 宝塚歌劇が誕生した1914年の欧州を舞台に、芸術家達の青春群像を描くレビュー劇。'04年星組/東京・新人公演/出演:柚希礼音さん、陽月華さん 他(110分)


  
   写真=柚希礼音さん

◇2004年05月18日(火)星組東京宝塚劇場新人公演『1914/愛』作・演出:谷正純氏。◇

 解説: 宝塚歌劇が誕生した1914年、欧州では戦禍の拡大に、愛と芸術に生きた人々が新たな旅立ちを強いられていた…。モンマルトルの酒場「ル・ミルリトン」と、芸術家村「ラ・リュシュ」を舞台に、ロートレックが描くポスターで一躍有名になった、魂のシャンソン歌手アリスティド・ブリュアン(柚希礼音さん=ゆずき・れおん)と謎の伯爵夫人アデル(陽月華さん=ひづき・はな)の愛の行方を中心にベル・エポック謳歌したアポリネール彩海早矢さん=あさみ・はや)、モディリアーニ綺華れいさん=あやか・れい) など、芸術家たちの青春群像を描くレビュー劇。


☆アリスティド・ブリュアン(シャンソン歌手):柚希礼音さん(本役は湖月わたるさん=こづき・わたる)
☆アデル(オペラ歌手志望の娘)/謎の伯爵夫人:陽月華さん(本役は檀れいさん=だん・れい)
☆ギョーム・アポリネール(詩人):彩海早矢さん2000年、宝塚歌劇団に首席入団。花組公演『源氏物語 あさきゆめみし』で初舞台。同年、星組に配属。 (本役は貴城けい(たかしろ・けい)さん)
アメデオ・モディリアーニ(画家):綺華れい(あやか・れい)さん=2008年2月11日(星組 東京宝塚劇場公演千秋楽)付で退団 (本役は大和悠河さん)
☆マルク・シャガール(画家):夢乃聖夏さん=ゆめの・せいか 2001年入団=(本役は立樹遥さん=たつき・よう)
☆モーリス・ユトリロ(画家):麻尋しゅんさん (本役は真飛聖さん=まとぶ・せい)
☆ハイム・スーチン(画家):鶴美舞夕さん (本役は涼紫央さん=すずみ・しお)
マリー・ローランサン(画家):仙堂花歩さん (本役は叶千佳さん=かのう・ちか 1996年入団〜2004年12月退団 月組星組・娘役)
☆ロシア大公:天緒圭花さん (本役は高央りおさん=たかお・りお 1991年入団〜2006年11月退団・男役)
☆大公夫人:音花ゆり(おとはな・ゆり)さん  (本役は朝峰ひかりさん=あさみね・ひかり 1990年入団〜2009年4月 星組東京公演千秋楽「My dear New Orleans」で退団)
☆ジャン・ポール・フルーレ伯爵(アリスティドの父):大河睦(本役は 立ともみさん=りつ・ともみ)
☆アナトール(伯爵家の執事長):美城れん (本役は英真なおきさん=
☆オルガ(伯爵が決めたアリスティドの花嫁候補):南海まり(みなみ・まり)さん(2008年2月11日(星組 東京宝塚劇場公演千秋楽)付で退団(本役は仙堂花歩さん=せんどう・かほ 1998年入団 花組星組・娘役 2005年8月退団)

ストーリー
 モンマルトルのシャンソン酒場「ル・ミルリトン(葦笛)」の経営者であり、「炎の詩人」と称され庶民に絶大な人気を誇る、同店の看板歌手アリスティド・ブリュアン(柚希礼音さん)。彼は手厳しい毒舌家として知られながら、その歌は庶民に対する深い愛情と共感に溢れており、今宵も彼の歌を目当てに、一杯のワインで長時間粘る貧しい芸術家たちが集まっていた。新進気鋭の詩人ギョーム・アポリネール彩海早矢さん)、その恋人で女流画家のマリー・ローランサン仙堂花歩さん)、画家のアメデオ・モディリアーニ綺華れいさん)、モーリス・ユトリロ麻尋しゅんさん) …そこにはまだ世に知られていない頃の才気溢れる若き画家たちの姿があった。彼らは、「ラ・リュシュ(蜂の巣)」と称するアトリエを兼ねた住居をもち、貧しいながらも夢を抱いて共同生活の日々を送っていた。

 ある夜「ル・ミルリトン」にロシア大公(天緒圭花さん)と大公夫人(音花ゆりさん)が、名前も出身地も秘めた「謎の伯爵夫人(陽月華さん)」と呼ばれる女性を伴って現れる。彼女は貧困にあえぐ若き芸術家に支援者を紹介しており、今日もロシア出身の画家マルク・シャガール夢乃聖夏さん)とハイム・スーチン(鶴美舞夕さん)を大公に引き合わせようとしていた。傍でその様子を見ていたアリスティドが大公の傲慢な態度に苛立ち、「ここはロシアではない。自由の国、フランスだ」と食ってかかった時、「謎の伯爵夫人」はこともあろうにテーブルの上に立ち上がり、「ラ・マルセイエーズ」を歌いだす。アリスティドはこの謎に包まれた女性の思いもよらない行動に驚くと同時に、毅然とした強さを秘めた美しさに心奪われる。やがて今夜の店じまいを始めたアリスティドのもとに一人の男が現れ、アリスティドの父ジャン・ポール・フルーレ伯爵(大河睦さん)が危篤状態であることを告げる。
 実はアリスティドには誰も知らない別の顔があった。彼は凋落したフルーレ伯爵家の御曹司であったが、老醜をさらす貴族社会に嫌気がさして数年前に家を飛び出し、身分を隠して気儘なパリでの生活を送っていたのである。父の病気は自分を呼び寄せるための茶番ではないかと疑いながらも、伯爵家の執事アナトール(美城れんさん)の言葉に動揺するアリスティドは帰郷を決意する。

 アリスティドの疑念通り、父の危篤は資産家の娘(南海まりさん)を息子の妻に迎えるための口実であった。アリスティドは怒って出て行こうとするが引き止められ、フルーレ伯爵家の家訓である〝「愛の歌」を美しく歌える花嫁〟を選ぶオーディションが、早速行われる。新作オペラのオーディションだと聞いてやって来た貧乏学生アデル(陽月華さん)はこの企てを知り、夢をもてあそばれたことに抗議して飛び出して行く。アデルの純粋さに心惹かれたアリスティドは思わずその後を追う。


宝塚歌劇支局040321」引用 ☆2004年03月09日(火)星組宝塚大劇場新人公演「1914/愛」☆

 宝塚歌劇が誕生した1914年のパリを舞台に、ロートレックのポスターにたびたび登場する実在の歌手アリスティド・ブリュアンをモデルにした星組による宝塚グランド・ロマン「1914/愛」(谷正純作、演出)新人公演が宝塚大劇場で行われた。

 宝塚久々の大型スター候補生と入団当初から期待されている柚希礼音さん。今年(2004年)ではやくも入団6年目となり、新人公演の主演は「王家に捧ぐ歌」以来2度目となる。もともとダンスの実力に秀で、本公演のショーでも抜擢が続いているが、今回の新人公演はこれまで課題だった歌唱力の成長が著しく、今後がさらに楽しみな存在となった。

 柚希さんが演じたブリュアン(本役・湖月わたるさん)は炎の歌手と異名をとったシャンソン歌手。モンマルトルで酒場を経営しているが実は由緒ある貴族フルーレ伯爵家の嫡子である。相手が王族であろうがなんであろうが理不尽な行動にはひるむことなく悪口雑言、しかし貧しい民には、こっそりと善行を施す、男気は人一倍。そんなブリュアンを柚希さんは、ていねいで口跡のいいセリフと周囲を包み込むような包容力で演じきり、とても研5とは思えないスケールの大きな男性像を現出させた。他の組の新人公演主演メンバーと比べてもこの存在感は圧倒的だ。笑っていても舞台からの視線に力が感じられる。これはすごいことだ。

 相手役のアデル(本役・檀れいさん)に扮した陽月華さんも成長株の一人。昨年は「雨に唄えば」のヒロイン役に抜擢され、熱演したが、今回もオペラ歌手を夢見る女性をけなげに演じた。ただ、セリフに抑揚がなく聞いている方がしんどくなるのはつらいところ。もう少し肩の力がぬけるとさらによくなると思う。歌唱力も課題だ。

 貴城けいさんが演じたアポリネールに起用されたのは彩海早矢さん。初の大役を自信をもって演じ、舞台姿がずいぶん大きくみえた。モディリアーニ大和悠河さん)は綺華れいさん。ややひ弱な感じだが、もともとのモディリアーニのイメージにはうってつけだったかも。ユトリロ真飛聖さん)は麻尋しゅんさんが演じた。前回「王家に捧ぐ歌」新人公演ではアイーダ役に抜擢された研2の期待の星だ。今回は薄幸の画家、存在だけで表現する難役だが本公演の真飛さんとは違ったアプローチで見せた。

 しかし、何といっても客席をわかせたのは、本公演で仙堂花歩さんが演じたオルガを演じた南海まりさん。仙堂さんもオクターブ高い声で連日、場をさらっているが、南海さんは雨に唄えば」で真飛聖さんが演じた大女優まがいのカエルの泣き声のような声を出したものだから大爆笑。抱腹絶倒の場面となった。