ヤングスター 明日海りお(あすみ・りお)さん

 月組エリザベート」新人公演は 2009年6月9日

2009年6月8日 日刊スポーツ記者・土谷美樹氏。
 3作連続での新人公演主役を前に「どっしりとした存在感を出せるよう頑張りたい」と話す明日海りおさん
 

 月組の若手スター明日海りおさんが6月9日、宝塚大劇場で上演される「エリザベート」新人公演で主役・トートに挑戦。本公演では悲劇の皇太子ルドルフ、ハンガリー独立を目指す革命家シュテファンを日替わりで熱演。今や本公演でも重要な役どころを演じ、新公では「ME AND MY GIRL」「夢の浮橋」に続き、連続3度目の主演と波に乗るが「私も新公の最高学年。圧倒的な存在感を出せるように頑張りたい」と気を引き締めた。
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 鮮やかなブルーの軍服が舞台でよく映える。青年ルドルフの登場は2幕から。わずか20分足らずの間にピストル自殺してしまうため出番は少ないが、強烈な印象を残す役どころだ。特に銀橋でトート(瀬奈じゅんさん)と腕を引き合い、デュエットする場面では、2人の美しいハーモニーと存在感で客席を一気に引き込む力がある。
 ファン時代から大好きな場面のひとつだった。音楽学校に入ってからも同期の間で「エリザベートごっこ」をするほど夢中になった作品だ。あこがれの役を演じることにプレッシャーを感じながらも「1回1回、後悔しないよう必死ですけどうれしくて」と子どものように目を輝かせた。


 3番手男役・遼河はるひ(りょうが・はるひ)さん、上級生の青樹泉(あおき・いずみ)さんとの3人での日替わりルドルフは三者三様。トップスターの瀬奈さんは「3人とも個性的なんでこっちも楽しい。みりお(明日海さん)は見た目の美しさもそうですが、自殺するにいたる神経質さ、追い込まれていく課程の切なさがよく出ている」と評価した。 
 そんな皇太子を演じる明日海さんが新人公演では一転、黄泉の帝王トートを演じることになった。明日海さんにとっては3度目の新公主役だが、今回は特別な作品だ。一筋縄ではいかないことも十分承知している。「どっしりした、絶対的な存在感を出さなきゃっていうのが一番の課題。新人公演でも1番上の学年(研7)になったし、しっかりしなくちゃって思います」と気を引き締めた。


 下級生のころから、華やかなルックスで注目される存在だったが、このところの躍進ぶりには目を見張るものがある。昨年1月、バウホールホフマン物語」で初主演したかと思えばミュージカル大作「ME AND MY GIRL」の本公演で女役の大役ジャッキー、男役3番手のジェラルドなどを役替わりで熱演。新人公演では主役のビルを好演。さらに今年になって若手スター龍真咲さんとダブル主演したバウ公演「二人の貴公子」では、シェークスピアの難作に真正面からぶつかった。本番前は毎日、おなかが痛くなるほどのプレッシャーの中での熱演だったという。

 「本当に怒とうの1年超?ですね。毎日、頭がウゥ〜ってなってたけど、これが実は幸せなんです。いろんな事を覚えることができたし、将来振り返った時、タカラヅカ人生でこれだけ幸せな時期があっていいんだろうか?って思い返せる時期だと思います」。一言一言、噛みしめるように話した。新人公演とはいえ「ME AND−」に「エリザベート」とミュージカル大作2作で主役できる喜びと重圧。また大きなステップを踏み出せるはずだ。

 ◆「エリザベート 1898年、ヨーロッパ随一の美ぼうをうたわれたオーストリアハンガリー皇妃・エリザベート羽桜しずくさん、本役・凪七瑠海さん)が暗殺された。舞台はその暗殺犯ルキーニ(宇月颯さん、本役・龍真咲さん)が独房で自殺を図ったところから始まる。死後の世界では犯罪から100年以上たった今もルキーニへの尋問が続いていた。「なぜ彼女を殺したのか」と。ルキーニは「エリザベートが現世に愛想を尽かし、黄泉(よみ)の帝王・トートと恋に落ちて彼女自身が死を望んだのだ」と主張する。
 この証言を元にエリザベートと同じ時代を生きた人々が霊廟(れいびょう)からよみがえり、彼女の少女時代、皇帝・フランツ(紫門ゆりやさん、本役・霧矢大夢さん)との結婚、皇太后ゾフィー(玲実くれあさん、本役・城咲あいさん)との摩擦、息子ルドルフ(煌月爽矢さん、本役・明日海さんら3人の役替え)の自殺など数奇な運命をつづっていく。

 ☆明日海(あすみ)りおさん 6月26日生まれ、静岡市出身。静岡雙葉中を経て2003年「花の宝塚風土記」で初舞台。2008年1月「ホフマン物語」でバウホール初主演。続く大劇場公演「ME AND MY GIRL」で新人公演初主役。本公演では女役の出世役とされるジャッキー役を好演し話題となった。2008年12月には日本物「夢の浮橋」でも新人公演主役を果たした。身長169㎝。愛称「みりお」。