壮さん、野々すみかさんお疲れ様でした

 無事に千秋楽を終えて、お疲れ様でした。本当に良いお芝居でした。

宝塚歌劇支局」より引用。

 中世に生まれた説教節のなかで最もスケールの大きな話として歌舞伎にもなっている「をぐり」のミュージカル化。幕があくと巨大な馬の頭とそれを取り囲む円柱のような太い竹林が目に飛び込んでくる。装置の太田創氏によるガリバーの世界に迷い込んだような斬新な装置が、これから始まる物語が尋常な物でないことを予感させるには十分、なにやら面白そうな気配が漂う。
 舞台は専科の藤京子さんが馬頭観音の使いという設定で語り部となって展開していく。口跡のいい藤の落ち着いたセリフ回しがすばらしく、舞台全体の質感を高めた大きな要因となっている。宝塚生活の最後を飾るにふさわしい大役に恵まれたといっていいだろう。
 歌舞伎よりも説話に忠実な舞台化で、二幕のクライマックスは、蘇った小栗(壮一帆さん)と遊女屋に売られた照手姫(野々すみかさん)の再会の場面。壮さん野々さんの好演もあって、ここは感動的な名場面となった。

 壮さんは「さすらいの果てに」以来、久々のバウ主演だが、王朝衣装がよく似合って見映えがするのに加え、押し出しのある堂々とした演技で、歌唱も格段に表現力を増し、スケール感もでてきた。大空祐飛さん組替え後の花組の大きな戦力になりそうだ。

 さらに加えて、宙組次期娘役トップスターに内定している野々さんが、宝塚の王道ともいえる見事なヒロイン演技で手堅くまとめ、新たな成長ぶりを披露した。

 共演者も好演。ワキながら重要なポイントで登場する商人、後藤左衛門役の華形ひかるさんが「銀ちゃんの恋」の好調ぶりを持続して軽妙ながら芯のある演技で好印象。横山の息子で照手姫の兄、三郎役の紫峰七海(しほう・ななみ 第86期生研10)さんのなめらかなセリフも、なんとも心地よかった。

 グランド・ロマンス『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴(トカゲ)』(2007年花組)、ラブ・ロマンス『君を愛してる−Je t'aime−』(2008年雪組)に続く木村氏の新作は、装置(小栗が荒馬を乗りこなす場面の仕掛けが絵巻物に似せてあり面白かった)や音楽(長谷川雅大氏作曲)にも支えられ久々のヒットとなった。