「新型ウィルス」の対策は?

一斉休校などの感染拡大防止策の是非について、専門家に聞いた。(毎日新聞

 根路銘(ねろめ)国昭・生物資源研究所長(ウイルス生態学)は「新型ウイルスは、肺で増殖し重症化させるたんぱく質の構造が壊れており、感染力はあまり強くない。現在の患者数程度で休校するのはやり過ぎだ。過剰反応は社会全体への不安を拡大させ、経済的な影響などマイナスの影響の方が大きくなってしまう」と懸念する。

 

 感染症拡大のシミュレーションを研究する浦島充佳・東京慈恵会医科大准教授(小児科学)は「何も対策をとらなければ、患者が急速に拡大する。感染拡大を収束させるため、患者隔離や休校は有効な手段だ」と話す。

大阪市、一夜で方針転換 

 新型インフルエンザの感染拡大を受け、大阪府内では全域で中学・高校の7日間の休校措置が18日、始まった。前日、一斉休校をいったん見送った大阪市、小学校を含めて休校すると方針転換した。住民の生活に大きく影響を与えるだけに、市は難しい判断を迫られた。

 大阪、兵庫での感染拡大を受け、厚生労働省は中学、高校の府県全域での休校を要請。大阪府橋下徹知事は、これを実施する方針を表明した5月18日未明の記者会見で「幹部には『時期尚早』の声もあった」としつつ、行動範囲の広い中高生が感染を拡大させる危険性を考慮したと説明した。

 一方、大阪市は前日の5月17日、6人の感染者を発表。しかし「発生は限定的」として、市立校の休校を当分見合わせることを決めた。感染者が出た途端、一斉休校を決めた府内の吹田、豊中両市などと対照的だった。

 平松邦夫市長は「(多数の生徒が感染した高校がある)茨木市から同心円的に広がっており、現時点で大阪市は発生源となっていない」と強調。「全部休校したら安全なのか。(かえって学校が生徒らの健康状態について)情報を取りにくくなるのではないか。鳥インフルエンザとはまったく違う」と述べていた。

 しかし、大阪府内の感染は一夜で急拡大。大阪市5月18日午前10時からの対策本部会議で「状況が大きく変わった」と一斉休校を決めた。登校していた生徒らを下校させるよう各校に伝えた。

 これに先立つ5月18日午前9時前には橋下知事が「休校措置に大阪市が乗っかってくれない。行政の欠陥だ」と平松市長を批判。その後、方針転換を聞き、知事は「足並みがそろった」と述べた。

 ただ大阪市保育所の休園は見送った。市幹部は「(仕事を持つ)保護者のことを考えると、社会的影響が大きい」と話している。(共同) [2009年5月18日12時39分]