サヨナラ公演 


☆2009年4月17日(金)〜5月18日(月) 宙組宝塚大劇場公演 ミュージカル・ロマン『薔薇に降る雨』作・演出/正塚晴彦氏。併演はロマンチック・レビュー『Amour それは・・・』作・演出/岡田敬二氏。


宝塚歌劇支局」より。

 大和悠河さん、陽月華さんの宙組トップスターコンビのサヨナラ公演、ロマンティック・レビュー「Amourそれは…」(岡田敬二氏作、演出)。 1984年、花組公演「ジュテーム」から始まったレビュー作家、岡田氏のロマンティック・レビューの18作目。岡田氏いわく「清く正しく美しくの宝塚の伝統をふまえながら清潔な色っぽさをにおわせるような作品を目指して作り始めた」というシリーズ。
 1984年、花組公演「ジュテーム」から始まったレビュー作家、岡田氏のロマンティック・レビューの18作目。岡田氏いわく「清く正しく美しくの宝塚の伝統をふまえながら清潔な色っぽさをにおわせるような作品を目指して作り始めた」というシリーズ。

 今回は宝塚屈指の美男美女コンビのサヨナラ公演にふさわしく、オープニングからパステルカラーに統一された宝塚ならではのゴージャスで夢心地の世界が展開された。

 オープニングは、大階段の中央、真っ赤な衣装を着た大和さんを大きな帽子をかぶりカラフルな衣装の娘役陣が囲むという、まるでバスビー・バークレー振付のMGMミュージカルの一場面をみているようなゴージャスさ。いまこんな場面を作れるのは宝塚しかないと思わせられる贅沢さ。娘役陣の衣装はすべて新調とか。そして大和さん、陽月さんコンビを中心にした華やかなプロローグが展開していく。

 続いて、蘭寿とむさん、北翔海莉さんの歌に悠未ひろさん、十輝いりすさん、七帆ひかるさん、春風弥里さん、鳳翔大さん、蓮水ゆうやさんの宙組が誇る若手男役の最初で最後の新ユニット”6カラット”がからむ。各組にこういうユニットを作っていこうというのが劇団の方針だそうだが、宙組七帆さんが今回限りで退団するので最初で最後の所以。

 大和さんの王子様、陽月さんのお姫様というファンタジックな場面が登場するのは「アムール、それは」。高木史朗氏の名作「華麗なる千拍子」に使われたシャンソンの名曲に乗せてトリスタンとイゾルデの伝説の世界が睡蓮の庭園をバックにくり広げられる。大和さんはこういうスタイルははじめてだそうで、サヨナラ公演でやっと実現したがまさにうってつけ。

 続いて深紅のイメージによる情熱的なラテンの場面。大和さん、陽月さんを中心にした宙組主要メンバーが激しく歌い踊る。

 中詰めは、一転して白のイメージ。白井鐵造氏の宝塚のエポックメーキングな名作「パリゼット」に登場した名曲「ラモーナ」をフィーチャーした場面だ。まず純白のドレスに舞扇をもった花影アリスさん、美羽あさひさん、純矢ちとせさんの3人の娘役をメーンにした幻想から大和さん、陽月さんら宙組全員が登場しての大群舞に発展していく。大和さん、陽月さんが白の衣装で銀橋ラインアップする場面は壮観。

 蘭寿とむさんが手話で歌うのは映画「ノッティングヒルの恋人」のヒット主題歌「She」。天羽珠紀さん、美風舞良さんに、ここでも6カラットがからむ。

 スパニッシュ風の場面のあとは95期生のラインダンス。今年は御織ゆみ乃氏の振付で、足上げが30回以上あるハードなダンスがモーツァルトの名曲に乗せて展開する。ダイナミックでフレッシュな空気は初舞台生ならではのもの。

 フィナーレは韓国ドラマ「ソドンヨ」に使われた曲「へミル(未来へ)」を大和さん、陽月さんのサヨナラへのはなむけとしてデュエットダンス。大和さんだけが残り黒エンビの群舞に展開していくという宝塚レビューの定番で締め括った。

 「当初は大和さん、陽月さんの退団は決まっていなかったというが、ひょっとしたらという予感のようなものはあった」といい「踊りを中心にきれいなものを考えた」という岡田氏。宝塚きっての美男美女コンビにふさわしいゴージャスなレビューに仕上がっている。

 なお、東京公演は初舞台生のラインダンスがなくなるので、新たな場面の追加がありそうだという。 (薮下哲司)