『愛と死のアラビア』を観劇しました。

 座席はS席(7,500円)1階9列25番。

☆2008年5月9日(金)〜6月16日(月) 花組宝塚大劇場公演 宝塚ミュージカル・ロマン『愛と死のアラビア』−高潔なアラブの戦士となったイギリス人− 脚本・演出/谷正純氏。山本史郎訳「血と砂」(原書房刊)を参照。解説= 1807年春、スコットランド高地78連隊の狙撃兵トマス・キースは、オスマン・トルコとの戦いの為、パースを出港した。イタリア、エジプト、アラビア、シリアと転戦したトマスは、1815年秋、イスラム教第二の聖地メジナに没した。しかしそれは、イギリス兵としてではなく、高潔なアラブの戦士としての終焉だった…。「アラビアのロレンス」に先駆けること百年、敗戦で捕虜となりながらも、捕虜交換を拒否し、イスラム教に改宗し、アラビア人の妻を娶り、アラブの戦士として生涯を終えた、実在の戦士トマス・キースを描いたローズマリ・サトクリフ著「血と砂―愛と死のアラビア―」をミュージカル化した作品です。国家・人種・宗教を超越した友情と愛情が確かに存在することを描き、人と人との心の交流の大切さを訴えかけます。 併演はグラン・ファンタジーRed Hot Sea』作・演出/草野旦氏。

 

 「愛と死のアラビア」は完璧なコスチューム劇で、その舞台設定から(セリフがあるのは)ほとんどが男役。これは仕方ないことだけれど、それだからこそ、アノウド役の桜乃彩音(さくらの あやね)さん花組娘役トップスター、とナイリ役の桜一花(さくら・いちか)さんが目立っていました(偶然ともにが名前につきます)。

主演は、トマス・キース(スコットランド人。捕虜となる)=真飛聖(まとぶ・せい)さん。 アノウド(トマスに助けられた娘)= 桜乃彩音(さくらの・あやね)さん。 イブラヒム(エジプト太守の長男)=大空祐飛(おおぞら・ゆうひ)さん。   トゥスン(エジプト太守の次男)=壮一帆(そう・かずほ)さん。   ナイリ(イブラヒムとトゥスンの妹)= 桜一花(さくら・いちか)さん。   ドナルド・マクラウドスコットランド軍医)=音羽麗(あいね・はれい)さん。

△トマス・キースという人物のキャラクター作りはどんなふうに? 。
 作・演出の谷正純先生がおっしゃっていたのは、今では考えられない時代の男たちの生き方であり、戦争の最中に敵国の捕虜となってしまったトマスが、宗教や考え方の違いのなかで、葛藤しながらも生きていくエネルギー、そして前に進んでいく姿を描きたい、ということでした。
 当時の歴史などをご存じのかたには、すんなり入っていけるお話だと思うのですが、難しい宗教用語や地名などがあるので、それにひっかかってしまうと、ちょっと難しく見えるかもしれません。私の演じるトマスは、捕虜になっても敵国で生きていくたくましさや、人間としての魅力を持っていて、愛称が「ハヤブサの目を持つ男」というくらい狙撃の腕もすごいんです。
―― 軍人としても能力が高いうえに、人としても優れている人なんですね。
 いちばんいいところは、自分を隠さずに出す、正直なところでしょうね。たとえば狙撃の腕を誉められても「それは銃の性能がいいからです」と言ってしまうような。自分をちゃんと持ってるし、誇り高さも持っている。そういう人柄が周りの人に認められていって、最後は国を越えた友情や愛が生まれるんです。
―― 大空祐飛さんや壮一帆さんとの関係も、うまく描かれていますね。
大空さんのイブラヒムと壮のトゥスンは、エジプト太守の息子で兄弟なんです。トマスの狙撃の腕の噂を聞きつけて、イブラヒムが腕前を見にくるんです。それで気に入られて、自分の国の兵隊を鍛えてくれと頼まれるんです。弟の方のトゥスンとはすぐに気が合って、親友のようになります。
 そういう結びつきが、周りの人たちまで広がっていくんですが、そのなかには味方もいれば敵もいて、それが後半の物語に影響していきます。 ―― 大空さんの役は、なかなか戦略的なキャラクターですよね。
 イブラヒムは言葉は少ないんですけど、的を射たことを言うし、実は内に秘めた温かいものを持っていますね。壮のトゥスンはすごく素直に慕ってくれて心優しい青年です。トマスが彼らと出会ったことで、国を越えた友情が生まれるのも見どころです。
  実は似ている2人?
―― 大空祐飛さんは組替えで来られたわけですが、一緒の舞台に立った感触は?  イブラヒムは、厳しく育てられてきたので、自分の感情をあまり出さないという役なんですが、その内に秘めた思いはすごく通じるし、トマスとは実は似たもの同士かなというくらい内面は似ているのを感じます。そういう歌詞の入った歌もあるんですよ。
 でも役だけではなく、素の部分でも似たものを持っているのかなと、たまに大空さんと話しています。初めてお芝居するのに、心がとてもわかる気がするんです。
―― 相手役の桜乃彩音さんとは最後は結ばれますが、途中いろいろありますね。
 桜乃のアノウドは旅の途中で盗賊団に狙われて、父親を亡くしてしまうんです。そのあとトマスの部下が盗賊を退治するんですが、イスラムの習慣では人間も戦利品なので、危うく部下の奴隷にされそうになったところを、トマスが守ってあげる。
 ただ、イスラムの世界は宗教が違うと結婚できないし、女性は親族以外に顔や肌を見せてはいけないし触れてもいけない。ましてやトマスは外国人ですから、すごく壁があるんです。普通に手を取ることもできないなかでの恋なのでお互いに苦しくて苦しくて。それで最後の最後、幕が降りる寸前にやっと手と手が触れられる(笑)。開演して1時間半、ずっと耐えっぱなしです(笑)。
  これからの季節にぴったり
―― ショーもいろいろ見どころがありますが、全編、海をモチーフにしてあるそうですね。  いろいろな海が出てきます。寂しい海や楽しい海、潜ったら夢の世界もあるし。でも「レッド・ホット・シー」ですから、基本は華やかで明るいショーです。季節もこれからどんどん暑くなってきますし、東京公演の頃は夏まっさかりで、ちょうどふさわしいかなと。
 出ている側も本当に海が見たくなる気分なんです。お魚がいっぱい泳いでますからね。ショーでは私は一応人間の役なのですが、お魚とも一緒に遊んでいます(笑)。
―― 昨年末から花組の主演になり、その立場にもかなり慣れたと思いますが、今の花組のイメージを。
 すごくみんな元気で明るいです。まずそれが基本で、身体も心も元気ということをいちばん大切にしてます。そして無理せずに自然に今という時間を大事に生きたいし、いろいろなことをなるべく前向きにとらえていきたい。
 みんなも、とくに新生花組だからという気負いよりも、今という時間を楽しんでくれています。そういう状態が真ん中に立つものとしてはいちばん望ましいし、嬉しいなという気持ちです。
―― 自然に前向きというのがいちばんいいですね。楽しそうな感じが舞台にも出ています。  稽古場で振付の先生に「花組、路線変わったー?」って言われるくらい元気というか弾けてるというか(笑)。私も、ふだん二枚目でいないといけないときにも、思わず三枚目が入ってしまったり(笑)。でもカッコつけるときはビシッと決めますので(笑)。ぜひ、そういう私と新生花組を観にきていただきたいですね。