小泉さんについて「マスコミとは池に落ちそうな犬は蹴倒す」

 社説:小泉首相5年 気力がうせてはいませんか
 小泉政権が発足して以来、26日で丸5年となった。戦後3番目の長期政権である。5年間を総括するのはもちろん大切だ。だが、その前に指摘しておきたいことがある。9月退陣を表明している小泉純一郎首相に最近、気迫が感じられないことだ。

 むしろ、退陣まで「まだ5カ月もある」と見るべきである。まさか、首相も「きれいな引き際」のみを考えて9月まで漫然と過ごすつもりはあるまい。しかし、発言こそ相変わらず強気一辺倒だが、現状は心もとないのだ。

 高支持率を維持してきた小泉内閣だが、やはり「先」が見えれば求心力は衰えるものだ。政界の関心はすでに「ポスト小泉」に移っている。首相を訪ねる政治家や官僚は減り、懸案は後継候補の一人、安倍晋三官房長官に任せられる場面が増えた。「実態は安倍内閣」との声まである。

 有権者も同様に見ているはずだ。衆院千葉7区補選での自民党敗北も、「先が見えた」ことと無縁ではなかったと思われる。「劇場型」が飽きられてきたのも確かだろうし、郵政民営化に代わる新たな改革メッセージも発信できなかった。首相が一度しか地元に入らず、腰を引いたのは、有権者の「小泉離れ」を自身が最も感じていたからではなかろうか。

 今国会の最重要課題と位置づける行政改革推進法案の国会審議は盛り上がりを欠いたままだ。行革法案後は教育基本法の改正問題が大きなテーマになるが、首相に高い関心があるようには見えない。実際、首相は改正案の中身は与党に委ねるのみだった。

 在沖縄・米海兵隊グアム移転経費の59%を日本側が負担する日米合意では、首相は額賀福志郎防衛庁長官に国民にわかりやすく説明し、理解を求めるよう指示したという。ここでも自ら先頭に立つ意欲は感じられないのだ。

 6月18日までの今国会の会期を延長することに首相は一貫して慎重だという。最近の「丸投げ」ぶりを見ていると、「国会で論戦する気力がうせているのでは」と思えてくる。自民党からは「論戦を続けても民主党に有利になるだけだ。早く閉会して自民党総裁選のみに国民の関心を引きつけた方がいい」との声も聞こえるほどだ。

 残る任期中、解決の道筋くらいはつけてもらいたい課題は少なくない。だが、首相は25日、靖国参拝中韓両国が反発している点に関し、売られたけんかは買うと言わんばかりに「(両国は)後悔すると思う」と批判。格差拡大の指摘に対しても「小泉改革を進めなかったら逆に格差は増えていったのでは」と反論した。つまり、在任中、本腰を入れて是正に取り組む考えはないという宣言である。これは無責任というものだ。

 小泉首相の退陣は「自民党総裁任期」という党の決まりによる。法で定められているわけでなく、国民と直接関係のないルールだ。後始末すべき課題に何ら手をつけないというのなら、総裁選を前倒しして、後継を早く決めてもらって一向に構わないのだ。

毎日新聞 2006年4月27日<<