ホリエモン(堀江貴文)ショックの被害者たち

 朝日新聞を引用。

前社長の堀江貴文容疑者(33)は社会に新風を吹き込むかに見え、ライブドア(LD)の成長性に期待した個人株主は少なくない。13日、証券取引等監視委員会が告発したことでLDの上場廃止が決まった。老後の資金まで投資して深刻な差損を抱えた人たちも多く、損害賠償を求める動きが広がっている。
 横浜市に住む50代の会社員は1月末、LD株計6万株を売却し、4000万円以上の差損が出た。妻との定年後の生活に備え、超低金利の銀行に寝かせておくよりはと、2年前からネットで株式投資を始めた。 LDの急成長ぶりに注目して財務諸表を調べた。堀江前社長の挑戦する姿勢にも好感を持った。昨年、堀江前社長が自民党の後押しで総選挙に立候補し、年末にLDが経団連への加盟を認められると、「LDが社会的に認知されたと思った」。数万株単位で買い注文を出した。「平静を装っているが、損失額は妻にも言えない」と肩を落とす。

 東京都内の無職女性(79)は昨年暮れ、証券会社の勧めでLD株を買い、1週間で100万円の利益が出た。さらなる値上がりを期待し、7000株を買い増した。東京地検の家宅捜索後、眠れない日が続いた。2月に売って500万円の差損が出ると、蓄えがほとんどなくなった。同居している息子家族のために自宅をリフォームするつもりだったが、できなくなった。

 パソコンは持たない。情報源はテレビと新聞だけ。証券会社から電話で言われるままに売り買いしていた。「何とか挽回(ばんかい)しましょう」。むなしい言葉を最後に営業マンの電話は途絶えた。

 長崎県の50代の自営業男性は昨年、子どもの資産になればとLD株を約2万株購入。現在も保有しているが、含み損は800万円を超える。もともと高血圧だったが、LD株がストップ安だった頃には動悸(どうき)が激しくなり、一時は本気で死ぬことを考えた。「上場を許した東証や堀江前社長をかついだ政治の責任が問われないなら、我々個人投資家は市場から退場するしかない」

 ■賠償請求、「虚偽」公表日が焦点

 昨年9月末現在でLDの株主は約22万人にのぼる。株主らに損害回復の方法はあるのか。先月結成された被害者弁護団、そして今月立ちあがった被害者の会はいずれもLDへの損害賠償請求訴訟を起こすことを検討している。 焦点になるのが、04年に改正された証券取引法の損害賠償規定だ。同法21条の2では、有価証券報告書に虚偽記載があって株価が下落した場合について、虚偽記載をした者の賠償責任を定めている。
 同法では、虚偽記載の公表前1カ月と公表後1カ月の平均株価の差額を株主の「損害額」にできるとするが、「公表日」がいつになるかで損害額と対象になる株主の範囲が大きく違ってくる。しかし、LDは虚偽記載の事実を自らは公表していない。そこで注目されるのは、東京地検がLDに証取法違反容疑で強制捜査に入り、それが報道された1月16日だ。
 早稲田大の上村達男教授(証券取引法)は「市場に対する影響力を持った日を重視すべきで、その意味では1月16日はひとつの基準日になるのではないか」と話す。仮に同日を公表日とした場合、1株あたりの損害額は約570円になる。