遊園地 新発想 VR技術を利用

少し価格が高いが、すぐに競争が始まり 適正価格になると思う。

朝日新聞 

 ゴーグルを着けると、まるで本物のような映像が見られる仮想現実(VR)。この技術を使い、お化け屋敷やジェットコースターに似た体験を楽しめる「仮想遊園地」が、夏の行楽シーズンを前に各地で次々と登場している。大型テーマパークさながらのドキドキ体験を狭い敷地で実現し、集客につなげる試みだ。


 「ギャーッ」。東京・渋谷の中心街にあるビルの地下1階。大学生の女性(22)が首をゆっくり振ると、突然叫んだ。顔には360度の映像が見えるゴーグル、耳にはヘッドホン。廃虚の病院での心霊現象を疑似体験し、「本当に歩いているようで怖くなって……」。24日に開業を控える「シブヤVRランド」の内覧会では、絶叫や笑い声があちこちで上がっていた。


 運営するのは、長崎県佐世保市でテーマパークを構えるハウステンボス1時間2200円(税込み)で、約100平方メートルの室内で5種類のVRを楽しめる。高層ビルの合間で落下や上昇を繰り返してスリルを味わったり、かっこいい男性や女子高校生との疑似恋愛で「壁ドン」されたり。どの体験も数分ほどで、ハウステンボス内ではすでに設置されて人気という。高木潔専務は「VRは知名度の割に体験者が少なく、成長の余地が大きい」。渋谷以外での開業も計画中だ。


 ゲーム開発のバンダイナムコエンターテインメントも7月、東京・新宿の映画館跡地に「VR ZONE SHINJUKU」を開く。ジャングルで恐竜から逃げたり、人気アニメ「エヴァンゲリオン」の世界を味わったりできるVRを計15種類そろえ、入場料は4種類分のチケット込みで4400円(同)。神戸市でも9月に小型店を開き、来年3月までに国内外の都市部に20店以上を計画する。


 首都圏では昨春、東京・池袋の高層ビル「サンシャイン60」が展望台でジェットコースターなどのVRを設置した。ゲームセンター運営のアドアーズも昨年末、東京・渋谷にスポーツカーの運転など8種類のVRが楽しめる施設を開業。イオンモールは昨年、埼玉県越谷市と愛知県長久手市の店舗にVR施設を誘致した。


 仮想遊園地の開業が相次ぐのは、少子化傾向でも遊園地・テーマパーク市場が拡大しているからだ。経済産業省によると、国内施設の売上高合計はこの10年間で1・5倍以上になり、昨年度は6650億円で過去最高を更新した。特に東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)やユニバーサル・スタジオ・ジャパン大阪市)といった大型テーマパークの人気が圧倒的だ。


 ただ、遊園地やテーマパークは、多彩なアトラクションを設置するため、広大な土地や多額の設備投資が必要で、都市部での新規開業は難しい。半面、VR施設なら狭い敷地でも実現できる。スマートフォンのゲームなどに客を奪われがちなゲームセンターなどアミューズメント業界からの参入も続いており、今後も開業が相次ぐ見通しだ。(森田岳穂)