一時的か 継続か 米株の下落 

【NQNニューヨーク=神能淳志】米株式相場の下落が止まらない。15日には米ダウ工業株30種平均が一時1万5855ドル12セントと、取引時間中としては約8カ月ぶりに節目の1万6000ドルを割り込んだ。前日からの下げ幅は460ドルに達し、まさに急落劇を演じた米株式相場。大引けには1万6000ドル台を回復するなど底力を発揮したようにも見えるが、年末にかけては神経質な展開を余儀なくされそうだ。


 15日は取引開始直後からダウ平均が急落し、わずか10分の間に節目の1万6000ドルをあっさりと割り込んだ。ダウ急落の影響は金融市場にも及び、米長期金利は節目の2%を下回ったほか、外国為替市場では円相場が1ドル=105円台前半まで急伸。ある邦銀の外国為替ディーラーが「今年最大の瞬間風速」と漏らすほど、金融・資本市場でリスク回避の動きが急加速した。
 ウィンダム・ファイナンシャル・サービスの最高投資責任者であるポール・メンデルソーン氏は「米経済への信頼に対する陰りが株安につながっている」と話す。早朝発表された9月の米小売売上高は前月比0.3%減と市場予想(0.2%減程度)よりも悪化し、ニューヨーク連銀が公表する10月の景況感指数や9月の卸売物価指数も市場の期待に届かなかった。


 米経済の先行きにも不透明感が強まっている。ゴールドマン・サックスは15日、9月の小売売上高に対する失望や8月の在庫積み増しの鈍さを理由に7〜9月期と10〜12月期の米国内総生産(GDP)見通しをそろって下方修正した。世界景気に比べて堅調さを維持するという米経済の「一人勝ち」の構図が崩れつつあることが投資家のリスク回避を後押ししている。


 もっとも、市場では「米主要企業の業績改善が確認できれば徐々に(株価も)値を戻す」(投資顧問会社スウォーズモア・グループの株式ポートフォリオマネージャー、カート・ブランナー氏)と、発表が本格化している決算への期待も根強い。多くの機関投資家が運用の参考指標とするS&P500種株価指数は一時1820.66と昨年末の水準(1848.36)を下回るなど10カ月間の含み益は消えつつある。しかし、好業績への評価は残り、最も下げた「金融業」のなかでも好決算だった資産運用大手のブラックロックは上昇して通常取引を終えた。


 ダウ平均は1万6000ドルの大台を回復して今年最大の逆風を乗り越えたようにみえるが、市場では「年内にきょうの水準を上回る可能性は少ないだろう」(ウィンダム・ファイナンシャルのメンデルソーン氏)との声も浮上する。しばらくは改善する企業業績と悪化するマクロ環境との綱引きに伴う緊張感が保たれたままとなりそうだ。