乗客を見捨てる船長・乗組員に厳罰を 韓国客船沈没


NHK4月18日 7時06分

沈没の旅客船 通報直前に右に急旋回
韓国南部の沖合で起きた旅客船の沈没事故で、韓国政府は、旅客船が救助を求める直前に右に急旋回していたことを明らかにするとともに、この急旋回が沈没につながった可能性もあるとみて慎重に調べを進めています。

この事故は、16日午前、韓国南部の海上を航行中だった旅客船「セウォル」号(6825トン)が大きく傾き、そのあと沈没したものです。
旅客船にはソウル郊外にある高校の修学旅行生300人余りを含む乗員乗客合わせて475人が乗っていましたが、これまでに高校生など25人の死亡が確認され、179人が救助されたものの、依然として271人の安否が分かっていません。
この事故について、韓国海洋水産省は17日夜、AIS=自動船舶識別装置のデータを分析した結果、旅客船が救助を求める数分前に急激に右に旋回していたことを明らかにしました。
救助された複数の乗客も、急旋回のあとに「ドーン」という音がして船が傾き始めたと証言しており、急激な右旋回によって船内に載せていた積み荷や車両が左に偏り、船体のバランスが崩れたのではないかという見方が出ていました。
AISのデータはこうした見方を裏付けた形で、海洋警察などは、この急旋回が沈没につながった可能性もあるとみて、操船に過失がなかったかや積み荷の量や積み方が適切だったのかなど、慎重に調べを進めています。

救命ボートほとんど使われず
沈没した旅客船には事故当時、乗船していた人数を超える、1000人以上が乗り込めるだけの救命ボートが備え付けられていましたが、そのほとんどが使われないままでした。
救命ボートは1隻に最大で25人が乗り込むことができ、旅客船には船体の左右に40隻以上が取りつけられていました。
簡単な操作で船体から取り外し、水面にテントのように広げることができるほか、水中に沈んでも一定の水深に達すると水圧で自動的に広がるよう設計されています。
ボートの中には非常食や飲料水も備え付けられており、避難した人が一定の期間、救助を待つことができます。
しかし、旅客船が沈む前の映像では、救命ボートはほとんどが船体に固定された状態で、使用されておらず、船体と共にそのまま海中に沈んだものとみられます。
このため、乗員が乗客の避難のためになぜ救命ボートを使わなかったのか、また、救命ボートの管理が適切に行われていたのか、疑問視する声が上がっています。
韓国の旅客船沈没事故で、パク・クネ大統領が安否の分からない乗客の家族たちが集まる体育館を訪れたところ、救助活動が進まないことに焦りと苛立ちを募らせる家族たちから相次いで不満の声を浴びせられました。

パク大統領に不満や怒りの声
パク・クネ大統領は、17日チンドを訪れ、旅客船が沈没した現場を訪れたあと安否が分からない高校生らの家族たちが集まる体育館に行き、直接、対話しました。
この中で、パク大統領は、困難な条件の中でも救助に全力を挙げていると述べて理解を求めましたが、家族たちからは「活動の状況がきちんと伝えられていない」とか、「船は必ず引き揚げられるのか」といった不満や不信の声を浴びせられました。
パク大統領は「家族の皆さんにこそ、最も早く情報が伝えられるべきだ」と述べて、沈没現場のもようを映し出す大型モニターを設置すると約束するなどしましたが、家族たちは次々に立ち上がって政府の対応に怒りをぶつけ、大統領や同行する幹部らが立ち往生する一幕がありました。