発想を変えなければならない経済団体


 今後の日本にとって最重要なのは「人」ではないでしょうか。
 それは『質と量(数)』だと思う。
 人口減はたしかに利点もある(環境の面にはよいだろう)。
 しかし、人口増は現在の歪んだ人口構成(ピラミッド)を正して、世代間負担の
 公平を促し、技術と活力の伝承をスムーズにする。
 なにより今しなければならないのは、非正規雇用者を減らし、正社員にすること。
 結婚が次第に晩婚になっている原因のひとつである。
 企業や経済団体は賃金を上げると国際競争力を失うと
 すぐ発言するが果たしてそうだろうか?
 資源のない国だからこそ「人」が財産だと発想をかえなければ
 いつまでもデフレの底にもがいているしかない。

 東京新聞社

企業と賃上げ 格差縮める任を果たせ 2013年1月28日

 安倍政権も企業の潤沢な資金の存在に気づいたのだろう。賃上げした企業の法人税負担を和らげる税制の導入を決めた。企業が貯蓄に励み、設備投資も賃上げも躊躇(ちゅうちょ)していてはデフレ脱却は危うい。


 人件費を増やした企業は、その最大一割を法人税から差し引く。与党の自民、公明両党がまとめた二〇一三年度税制改正大綱に、企業の税負担を緩和する新たな制度が盛り込まれた。企業の手元に積み上がっている巨額の内部留保を眠らせることなく、勤労者に移し替えて内需を盛り上げる。デフレ脱却に対する安倍政権の意図が込められている。
 だが、経団連春闘方針「経営労働政策委員会報告」は、賃上げを「実施の余地はない」と一蹴、年齢などに応じて給与を引き上げる定期昇給も延期や凍結があり得るとほのめかしている。法人税軽減というニンジンを見せられても、減税が時限措置ゆえに、やすやすとは応じられないと冷淡だ。
 日本の経営者は一九九〇年代からの「失われた二十年」にうろたえ、すっかり内向きになってしまったようだ。分厚い手元資金に安心を求め、賃上げはおろか、設備投資さえためらっている。日銀統計によると、企業が抱える現預金は二百十五兆円にも膨らんだ。


 経済界は「アジアの成長を取り込む」と勇んではいるが、海外子会社からの年三兆円に上る受取配当なども有効に活用しているか疑わしい。日本経済をむしばんでいる原因の一つは、十五〜六十四歳の生産年齢人口減少に伴う内需縮小であり、企業はとりわけ消費性向が高い子育て世代にお金を回し、内需拡大に転じることが求められていると言うべきだ。


 経団連の企業行動憲章は「従業員のゆとりと豊かさを実現する」とうたっている。円高などの六重苦を嘆いてばかりいないで、日本再生への自助努力を受け入れる度量をしっかりと示すべきだ。


 オバマ米大統領は二期目の就任演説で、米国の成功は復興しつつある中間層に支えられるべきだ−と訴えた。「なぜ1%が金持ちで、99%が貧乏なのか」を合言葉とした金融の中枢、ウォール街占拠への回答でもある。
 

 購買力のある中間層の復活は日本も重い課題だ。格差拡大の原因にもなった製造業への派遣就労拡大を法制化したのは、かつての自民党政権ではなかったか。税制で賃上げを促そうとする安倍政権には、中間層復活に向け、経済界に協力を強く求める責務がある。