貴重な敗戦になった なでしこ


 昨年のワールドカップよりフランスは進化し強化されていた。
 江橋さんも指摘しているが、日本のコンデションは相当悪かった。
 さらに芝が粘りっこく、思いのほかパスが走らなかった。フランス
 は地元なのでその面で有利だし、パスを強めに蹴っていた。
 決勝トーナメントでぶつかるが、ワンマークを付けて得点チャンスを
 つぶすべきです。スピードが加速する前にボディチェックを!!

 体調が皆戻れば、実力は互角とみるので、いい勝負になると思う。
 一部評論家がえらそうに金メダルはないなどとか発表している
 小谷泰介  岸名章友 (敬称略)

小谷の言い分

 ロンドン五輪の開幕戦を数日後に控えたなでしこジャパンが、フランス代表との練習試合で大苦戦。特に前半の戦いぶりは、先日大敗を喫した米国との強化試合を思い出させる非常に悪いものであり、厳しく分析すれば、このままの状況では金メダルなどとても無理と言わざるを得ません。それどころかメダル獲得も難しい状況と見るべきでしょう。

 その主たる原因は明白で、ひとつは世界チャンピオンとなった日本を強豪各国が十分に研究し、前線から厳しいプレスを掛ければ日本が誇るパスワークを封じ込めることに気が付いたからです。米国もフランスも、日本のお株を奪うかのような前線からのプレッシングと、複数人でボールを持っている相手選手を素早く囲い込む戦術で、日本のストロングポイントを消すことに成功しました。もともと身体能力は白人や黒人の方が高いわけで、彼女達が前線からきついプレスを仕掛けると、日本のディフェンス陣に余裕がなくなり、前方へのフィードに狂いが生じて来るというわけです。

 一方でこの戦術は、体力の問題で後半戦には必ずプレスが効かなくなりますが、アメリカ、ブラジル、フランス、イングランドスウェーデン、そして今回は出場しませんがドイツといったレベルの高い国ならば、組織的にも意思統一が出来ているので、なでしこジャパンの攻撃を去なし切る術を持ち合わせていると見るべきだと思います。

 もうひとつの原因は、なでしこジャパンの心臓部とも言える澤選手が本調子には程遠いことです。W杯優勝時の澤選手のコンディションを10とすると、現在は甘く見積もっても6、厳しく見れば4程度しかないことが痛すぎます。私が見る限り、澤選手の出来はかつての彼女からは考えられないほど酷く、フットワークがパタパタとしていて足が地についていませんし、これがあの澤選手かと目を覆いたくなるようなシーンが多すぎます。何よりも彼女の特徴であるポジショニングの良さと圧倒的な存在感が、すっかり鳴りを潜めてしまっています。どうなのでしょう。そんなこと感じているのは私だけなのでしょうか。澤選手に関しては是非とも皆様の忌憚のない御意見を聞かせて頂ければと存じます。

 とにかく、ここへ来ても澤選手があの状態であるということは、本番もさして変わらないということが予想され、であるとするならば佐々木監督は澤選手を先発から外すことも視野に入れなければならないのではないでしょうか。私は現在のままの澤選手であれば、田中選手や岩淵選手等若手の有望株にチャンスを与えたほうが、良い結果を導き出せる可能性が高いと考える次第です。そして、その際にはこれまで澤選手が担ってきた心臓部としての働きを、宮間選手が十分に補ってくれるはずです。

 さて、三番目に挙げられる要因ですが、これは今回に限らずこれまでなでしこジャパンがずっと抱えてきた問題です。それはW杯優勝時にも指摘させて頂きましたが、フィジカルに長けた選手が少な過ぎるということです。

 アメリカのワンバック選手やモーガン選手、そしてフランスのデリー選手やルナール選手を見てもわかるように、高さやスピードで存在感を示す選手がなでしこジャパンにはおらず、この部分を今後補って行かないと、世界の上位をキープすることは困難と言わざるを得ません。若年層の段階で、バレーボール界、バスケットボール界、或いは陸上界に流れて行くようなフィジカルと運動神経に勝る人材を取り込んで、育成する努力をもっとすべきです。何故ならば、パスワークは訓練によって伸ばして行けるものなので、いずれは世界が日本のレベルに迫り、パスワークが日本だけのストロングポイントでなくなる日が必ず訪れるからです。かつては日本のお家芸と言われたコンビネーション・バレーで世界の頂点に君臨した女子バレーの日本代表でしたが、世界がその技を盗み、今やその面影が見られないように、なでしこジャパンも今のままでは同じ運命を辿ることになるでしょう。

 五輪開幕直前に行われた最後の調整試合を観戦し、思い浮かんだことを徒然に書き連ねましたが、以上の理由からなでしこジャパンが金メダルを獲得出来る確率は極めて低いと言わざるを得ません。そしてW杯優勝という快挙は、ありとあらゆる幸運が重なった結果、手にすることが出来たものであり、そもそもが出来過ぎであったこと。そして当時、神がかっていた正真正銘のスター選手である澤選手が、深刻な病から復帰して間もない状況であることを、私達はもう少し直視するべきだと思うのです。


 
 がワールドカップ前もなでしこは評価されていなかった。
 イングランド戦の敗北後になでしこは変化した。
 もちろん油断はいけないが、落ち込む必要もない。
 サッカー(フットボール)は、流れをつかんだ方が強い。
 昨日の澤さんは1点を失ってからは見違えるように闘志が
 出てきた。やはり鍵は澤さんだ。がんばれなでしこ。
 帰りはぜひファーストクラスで凱旋ですよ。

「未来の女子サッカー」と呼べるハイレベルな戦いに

 守備の面では、MF中央の3人をどうつかまえるかが課題になる。ドゥリとネシブの「縦の2トップ」を、なでしこがラインを上げることによって「横の2トップ」にしてしまうことも、理屈上では可能だ。しかしそれをやりきるには、前線から強いプレスを掛け続けなければならない。DFリーダーの岩清水梓は、「前の選手が(ボールを)追えない時にどうするかは、これからみんなと話し合って確認したい」と、解決に意欲を見せた。

 さらにもうひとつ、0−2の結果を生んだ要因のひとつとして、両チームのコンディションの差も挙げられるだろう。全体的にフランスの選手のほうが、体は動いていた。なでしこは、五輪メンバーが決まった後の国内合宿から練習の強度を上げ、フランス入り後も連日、かなりの負荷をかけて練習をこなしている。一方のフランスは、この試合の前に2日間のオフを設け、ビーチに出かけて心身をリフレッシュしていたという。

 なでしこジャパンはフランスを、ロンドン五輪の準々決勝で対戦するかもしれない相手として警戒してきた。しかしこの日のパフォーマンスを見ると、考えを改める必要があるかもしれない。フランスがアメリカに勝ち、グループGを1位で通過する可能性も十分にある。そうなれば、なでしこジャパンがグループFを1位通過した場合、準々決勝で対戦するのはアメリカということになる。

 五輪本番で、なでしことフランスが再び対戦するならば、互いに自分たちの強みをさらに生かすべく、戦い方を整えて臨むはずだ。互いが互いに刺激され、またタイトルへの強い意欲を見せることによって、さらに好プレーが引き出されるのならば、なでしこジャパン対フランスの試合は、「未来の女子サッカー」と呼べるような、ハイレベルな戦いとなるだろう。

江橋よしのり(えばしよしのり)