再生可能エネルギーの活用こそ 日本の進む方向

 いつもながら東京新聞の社説はすばらしい。 

自然エネルギー 大きく育てたい純国産
2012年6月21日

 自然エネルギーの固定価格買い取り制度が七月から動きだす。小出力の電源ではあるが純国産だ。火力発電の燃料高で生じる所得の海外流出を抑え、日本経済に元気を取り戻す役割も担わせたい。太陽光や風力、地熱、中小の水力など、電源に応じて発電量一キロワット時当たり一三・六五〜五七・七五円を向こう十〜二十年間、電力会社に全量買い取りを義務づける。これが固定価格買い取り制度の枠組みだ。


 自然エネの発電量は天候に大きく左右されるので、出力を調整する火力発電や揚水発電によるバックアップや、適地が北海道や東北に偏在する風力発電の効率的運用など、取り組むべき課題は多い。


 国土の北部に風力発電が集中するスペインは国の送電網一元管理で偏在を克服してきた。日本は電力会社の地域独占が広域管理を妨げており、東西で異なる周波数の変換設備増強など、送電システムを早急に見直すよう求めたい。


 買い取り費用は企業などの電力利用者が負担し、標準家庭は月額で平均八十七円が電気料金に上乗せされる。電力供給量に占める自然エネの割合は約1%。二〇三〇年を目標とする25〜35%まで増えると負担は重くなる。しかし、かつて一キロワット時約四十八円だった太陽光の発電コストは量産効果で三十八円に下がってきた。一段のコスト削減で普及に弾みをつけたい。


 さらに純国産の自然エネが持つ潜在能力にも目配りすべきだ。〇一年度に二兆円だった液化天然ガス原油などの燃料費は新興国の需要増による価格高騰で四兆円規模に膨らんだ。福島第一原発事故で失った電源を火力発電で補った一一年度は六兆円近くにも上った。兆円単位の日本の所得が資源国へと消えていくのが現実だ。現在は欧州の金融危機などを背景に価格は値下がりしているが、長期的には上昇が避けられない。野田佳彦首相が表明した脱原発依存が進めば火力依存が強まり、電気料金値上げなどを通じて企業収益や勤労者所得が縮みかねない。


 自然エネは個々の出力は小さくても、純国産ゆえに所得の流出は避けられる。流出を食い止めて、その資金を日本経済の再生にいかに役立てるか。目標の25〜35%が実現すれば燃料の過度の海外依存はいくぶん和らぐだろう。

 目標をさらに高く掲げ、二酸化炭素を出さない自然エネから日本経済を支える持続可能な強さも併せて取り込みながら、大きく育てていくべきだ。