白か黒ではなく もうそろそろ2者択一の政治はなしにしよう

東京新聞社説より引用

政権交代 対独関係の構築急げ
2012年5月8日

 仏大統領選とギリシャ総選挙を通じて有権者が求めたのは、財政緊縮一本やりの政策修正と経済成長への取り組みだ。鍵は独仏両国が握る。早急に新たな協力関係を構築しなければならない。

 フランス大統領選挙の結果は、経済成長を通した「強いフランスの復興」を掲げながら、金融危機とユーロ防衛策に追われたサルコジ現政権に対する明確な「ノー」の表明だ。

 「欧州緊縮策は欧州にとって必ずしも宿命ではない。共感者も多いのではないか。この日を欧州の新たな出発点にしたい」。オランド次期大統領は、勝利演説で高らかに訴えた。

 ギリシャでも二大政党が惨敗した。緊縮を迫り続けるドイツ型の経済財政運営に対する鬱憤(うっぷん)の表れだろう。経済成長を望まない政党はない。問題はその方法だ。

 「ドイツ型」緊縮策には、歴代政権が取り組んできた構造改革の前提がある。シュレーダー社民党政権はグローバル化への適応をモットーに一九九〇年代後半以降、民営化の促進、福祉切り詰めを断行した。続く大連立政権は、付加価値税率の切り上げ、年金支給年齢の引き上げも決定した。

 これに対し、十七年ぶりに社会党政権を率いるオランド氏が掲げるのは富裕者への増税、年金支給年齢の再引き下げ、公務員採用枠の拡大などいわば「大きな政府」型の政策だ。公営企業が大きなウエートを占めるフランス経済特有の事情がある。

 中でも焦点は、ユーロ救済策としてメルケル独首相とサルコジ氏を軸に合意された新財政条約の「再検討」だ。すでに選挙結果判明後の市場は株安に動いた。

 新たな独仏関係を模索する余地は十分にある。選挙結果はユーロ救済策への異議申し立てではあっても、僅差の結果を見れば全面的なノーとまでは言えまい。オランド氏は、ユーロ共同債導入には積極的な意向も示している。ギリシャで第二党の座を占めた急進左派連合も、ユーロの離脱までは主張していない。ともに欧州統合の大枠維持では一致している。

 経済専門家で柔軟な現実的政治家といわれるオランド氏は勝利宣言で、「国民全員の大統領になる。フランスは分断国家ではない」と、左右両極政党の躍進に見られた社会の分断への危機感を示した。警戒すべきはむしろ欧州社会の分断であり、求められるのはそれを回避する統合欧州の展望を提示することではないか。