見出しが中途半端 防げない被ばく対策

  被曝対策…ヨウ素剤の投与で発症予防 (2011年3月15日17時31分 読売新聞)

. 放射能漏れはどのような健康被害を及ぼす可能性があるのか。とられるべき対策はどういうものか。

 「放射性物質には様々な種類があり、それによって体に及ぼす影響も異なる。どのような放射性物質が漏れているかが重要だ」。放射線の人体への影響に詳しい東京女子医大の三橋(みつはし)紀夫教授は説明する。

 原子力施設から放射性物質が空中に飛散すると、皮膚などに付着した物質から放射線を浴びる「外部被曝(ばく)」と、呼吸などで体内に取り込まれることによる「内部被曝」がある。内部被曝のうちで主に問題となる物質はセシウムヨウ素ストロンチウムだ。

 ヨウ素甲状腺に長くとどまることが多く、甲状腺がんの危険性を高める。セシウムは比較的体内から出やすいが、筋肉や血液に入ると周辺の骨髄や腸管などが障害を受ける。ストロンチウムは骨に集まり、白血病を発症させる恐れがある。 

 ただし、医療分野の放射線専門家でつくる「医療放射線防護連絡協議会」総務理事の菊地透・自治医大RIセンター安全管理主任は人体に影響が出る放射性核物質が広がる範囲は、数キロ・メートル圏内に収まると考えている」と指摘。「汚染された地域は立ち入り禁止になるが、指定された距離以上に離れた地域に避難していれば、一般住民の健康に影響が出ることはないと思う」との見方をしている。

 健康被害の予防策について、チェルノブイリ原発事故で被災者の治療にあたった内分泌外科医の菅谷昭・松本市長は「特に、胎児への悪影響が懸念される妊婦や、放射性物質の影響を受けやすい15歳以下の子どもには、前もって安定ヨウ素剤を飲ませたほうがいい」と話す。安定ヨウ素剤は放射性ヨウ素甲状腺にとどまるのを抑える。専門家が適切な量の投与をすれば予防効果は高く、チェルノブイリ事故の際、緊急投与を行ったポーランドでは、子どもに甲状腺がんが出なかったという。ただ、セシウムストロンチウムの影響を予防する方法はなく、「定期的に検診し、早期に治療できる体制整備が必要だ」とした。 

 首長を務める立場からも、菅谷氏は「政府は当初から危機意識が足りなかった」と批判する。「福島県以外にも放射能の拡散が考えられるので、各地で濃度の測定が必要。どの放射性物質が漏れているのかも分析し、対策を急いでほしい。チェルノブイリ事故では、政府が情報を隠して国民の信用を失った。日本政府は、具体的な状況や今後起こりうることについて正確に情報公開すべきだ」と警告した。