インタビュー 愛原実花(あいはら・みか)さん


プレシャス!宝塚(日刊スポーツ記者・土谷美樹氏) 

 6月25日に開幕した「ロジェ/ロック・オン!」(7月26日まで)で退団を決めた雪組娘役トップスター愛原実花さんタカラヅカきっての演技派娘役として人気を集めたが、トップに就任してからわずか1年での退団。今回のさよなら公演もトップスター水夏希(みず・なつき)さんとのダブル退団で注目度は高まる一方だ。愛原さんは「自分のサヨナラというよりも水さんの集大成への責任を感じています」と、タカラヅカの娘役らしい責任感を漂わせ、完全燃焼を誓った。

 最後の作品はタカラヅカらしくない? ハードボイルドなミュージカルになりそうだ。第2次大戦後にユダヤ人として生まれ、家族が受けた迫害への復讐(ふくしゅう)を果たそうとする“強い女”。愛原さんも「難しいけどやりがいがあります。最後なのに、また新たな挑戦ができる。本当にすごく幸せだと思います」と静かに決意を語った。

     


 入団当初からダンス力で注目を集め、演技力に磨きをかけトップ娘役に就任したのは昨年6月。わずか1年での退団には惜しむ声が多いが、本人は随分前からこの時期での退団を決めていたという。「自分の中では随分前から退団へのカウントダウンが始まっていて。そういう覚悟は早いうちからできていたんですよね。それこそ前の公演から意識していましたし」と明かした。

 誰もが“最後の思い出”として大切にする「さよなら公演」。しかし、自分のさよなら以上に同時に退団するトップスター水への思いが強いという。「自分のトップお披露目の時もそうだったんですけど、役を演じること、センターに立つことに必死だったんです。だから今回も“さよならだから”っていうことよりも、役としてどう息づけるか、特に水さんの集大成なんだ、ということに重きを置いている感覚です」。男役に寄り添うことが大前提の娘役を地で行く覚悟だ。

 劇作家・つかこうへい氏(62)の長女として生まれ4歳からバレエを習ってきた。タカラヅカが大好きで学校帰りに東京宝塚劇場に通い、当日券目当てに並んだこともある。小さなころからの夢をかなえ順調に成長していく娘を、厳しいことで知られるつか氏も優しく見守ってきた。

 新人公演で初ヒロインを演じた時も 雪組宝塚大劇場新人公演『君を愛してる−Je t'aime−』公演日程:2008年1月22日(火)18:00開演 雪組東京宝塚劇場新人公演公演日程:2008年2月26日(火)18:30開演 マルキーズ役 愛原実花さん(本役は白羽(しらはね)ゆりさん)  、客席で静かに見守ってくれた父は、今回の娘の大事な決断も静かに笑って背中を押してくれた。「“あの時も、みなこ(愛原)は全部自分で決めてしまったからね”って。私、割と退団もすっぱり決めてしまったんで両親にも事後報告だったんです」。

 「あの時」とは、宝塚歌劇団を受験しようと決意した時のこと。「私、タカラヅカに入りたいって時も全部自分で決めちゃって。両親からは『高校を中退して関西に行っちゃうの?』って言ってましたから」。父は今回の退団のことも、その驚きになぞらえ、励ましてくれたという。

 入団して7年。トップ娘役としてわずか1年。全力で駆け抜けた。「想像もできなかった素晴らしい立場(娘役トップ)になれたこと、まずタカラヅカに入れたこと自体夢みたいだった」と話す。ゴールラインを決めた今、何げないことに寂しさを感じるそうだ。

 「宝塚大橋を歩いている時とか、音楽学校の制服を着た子を見た時とか、何げない風景でふと“寂しいなあ”って思ったりするんですよね。でも、自分の中では心の準備が早くからできていたので、思い残すことなくできると思います」。真っすぐ前を見据え、役と同じように凜(りん)とした強さを携え、完全燃焼を誓った。

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