久々の好試合だったけれど 日英戦

 

  結論的にはイングランドが勝利(これはこれでイングランドファンとしては少しうれしい)したが、日本も随所で良くなってきた。5月25日に書いた「素人からみた「日韓戦」」ではせめて引き分けて意地を示せと書いたが、かなり本気モードになりつつあるなと感じた。


 しかし、良い点もあったが、克服しなければなと思う弱点はまだまだある。1つはボールへの執着=パスミスで取られたら、とことんまで追いかけまわして取り返す、または進行を遅らせる(英国プレミアリーグでは当たり前=マンチェスター・ユナイテッドFC朴智星パク・チソン)選手がいい例です)ようなマイナスは取り返すというガッツがほしい。2つめは持久力と瞬発力=今日の試合ではコンデションが悪いみたいだったが、マンチェスター・ユナイテッドFCのウェイン・マーク・ルーニー選手は攻撃もするが守備も手を抜かない。守備からのカウンターでは今シーズンでも自陣から走り出して約80メートルを駆けて、自らゴールを決める瞬発力。そして、試合後半になっても全速力でいけるスタミナ=残念ながら今の日本代表ではFC東京長友佑都(ながとも・ゆうと)選手しかおらず、それでも彼に得点力を望むのはどうかなと思う。もしメンバー交代できるならサンフレッチェ広島佐藤寿人(さとう・ひさと)選手をぜひ召集してもらいたい。彼は本当に献身的に走れる。


 FIFAワールドカップに出てくる国の実力は紙一重だと思う。いくら優勝国と予想されていても予選リーグのたたかいにつまづいた国は数知れない。ほんの小さな出来事で試合の流れは変わる。ひとりひとりがボールを扱うフットボール(サッカー)と集団で扱うことの多いラグビー(ほぼ実力通りに試合は決まる)との違いであろう。
 それだけに、韓国戦から急に見違えるようになった日本=小さなことをそれぞれが克服すれば、チームの状況は変わるということかも知れない。


 しかしですが、前日本代表監督のイビチャ・オシムさんが言うように70分までは互角以上だったのに、残りの20数分で日本はエナジーがなくなる。これは何を意味するのか?前半に動きすぎなのか?もともとスタミナ不足なのか? 今日の守備は良かった。ブロック(かたまり)でイングランドの攻撃を阻止していた。攻撃は、阿部を起点の一つとして機能していた。 それほどムダな動きがなかったのに後半の後半から運動量ががくっと減り、前へ進む選手がいなくなった。どうしてだろう? これがほんとうに克服できないとしたら  紙一重の勝利ではなく紙一重の「3連敗」もありうるだろう。

 それにしても、イングランドの方が心配だ。パスミスの多さは異常だ。連携もとれていなかった。これから軌道修正だと感じた。


セルジオ越後コラム

 5月30日のイングランド戦は1−2の逆転負けだった。スコアだけ見れば惜敗で、「強豪相手に善戦」という見方もされているけど、錯覚してはいけないね。確かにどん底だった韓国戦より良かった部分はあるかもしれない。でも、明らかな練習試合モードだったイングランドのモチベーションを考えると、日本にとって強豪相手に試合をする新鮮さがもたらした「1点差」負けに過ぎない。

それは試合後のTVインタビューに答えた選手のコメントにも表れていたよね。「強い相手とできて楽しかった」と。つまり、いかにこういう相手と試合をしてきていないか、ということだよ。

振り返れば、ドイツW杯直前のドイツ戦、その前年のコンフェデ杯のブラジル戦、2004年のイングランド戦。スター選手を相手に目を輝かせた日本代表は、いつも惜しい戦いを見せてきた。しかし本番では負ける。今回もそれと同じことが起きただけで、とてもじゃないけど状況が好転したとは言えない。

理由としては、終盤に足が止まって逃げ切れなかったこと、そして攻撃でほとんど何もできなかったことがある。
早い時間帯にセットプレーで1点取ることができたが、その後は時間を追うごとにチャンスの数が減っていった。川島が当たっていなかったら、点差はもっと開いていただろう。

終盤に足が止まるのも、それを交代で改善できないことも不安要素だ。4年前、オーストラリアのヒディンク監督に狙われたのもそこ。ここを放置したまま本大会に臨むのは危険すぎる。

今から劇的に体力が向上するわけはないのだから、戦い方を考えなければいけないね。次のコートジボワール戦では、勝ち負けは関係なく、こうやって攻める、こうやって流れを変える、こうやって勝ちを狙う、といった明確なものを見せてもらいたいね。

はっきり言ってこれまでの日本代表の流れには大きく失望しているが、希望も可能性もゼロになることはない。コートジボワール戦で何か光を見せてほしい。(了)

サッカー強化試合・日本1−2イングランド(30日、オーストリアグラーツイングランドのふがいない戦いぶりに英国BBC放送は試合後、日本戦を「説得力に欠ける試合」とばっさり切り捨てた。

 4−4−2の布陣で試合に臨んだイングランドは、開始直後から気だるいプレーを展開。動きの鈍さから先制点を奪われたと非難した。先制点を決めた闘莉王に対して、マークについたG・ジョンソンは簡単に前に入られシュートを許した。強靭な体を持つセンターバックファーディナンドは20分、小柄な岡崎に競り負けあわやというシュートを許した。

 攻撃では、両サイドのレノンとウォルコットが試合を通してスペースを見つけるのに苦労。レノンは19分の得点機も生かせなかった。W杯への生き残りを掛けて試合に臨んだFWベントも、至近距離のヘディングシュートを外した。

 後半には4−4−1−1のコンパクトな布陣に変更。パスもつながり始めたが、A・コールが森本にかわされ危ないシュートを許し、FWヘスキーも押し込むだけのダイビングヘッドを左に逸らし、「あのミスが代表落ちにつながる可能性もある」と厳しく報じた。

 イングランドは6月1日、現在の30人から最終メンバーを23人に絞り込むが、BBCは「期待外れの試合を終えたカペロ監督は、答えを出すよりも、逆に頭を悩ますことになるだろう」と選考の混乱を予想した。

 オシムかく語る

 前日本代表監督のイビチャ・オシム氏(69)が日本代表のために約45分間熱弁を振るった。1−2で惜敗した30日のイングランド戦後、オーストリアグラーツ市内のホテルで会見。優勝候補の一角に挙げられるイングランドを苦しめた岡田ジャパンの戦いぶりを評価する一方で課題も指摘。W杯本大会に向けて三つの提言を行った。

 <1>オシム監督は日本選手をたたえる言葉を並べた。イングランド戦は4−1−4−1の新システムが機能。前半7分にDF闘莉王の得点で先制するなど、W杯でも優勝候補の一角に挙がるイングランドと互角に渡り合った。オシム監督はその果敢な姿勢をまず評価した。

 「イングランド相手にコンプレックスを持たずに戦った。選手は、テレビでしか見たことがないジェラード、ランパードといった選手が空を飛べる怪人ではなくただの人間であるということが分かったはず。時間帯によってはどっちがイングランドなんだというようなプレーをした。日本は良い内容の試合をしたと思う」

 しかし、後半27分、同38分にいずれもオウンゴールで失点し1−2で逆転負け。知将は、試合のペース配分に問題があったと分析した。岡田監督は1点リードした後半も追加点を狙って攻め続けるよう指示したが、オシム氏の考え方は違った。

 「大久保、長友はよく走った。長谷部と阿部は体力があるまで、つまり後半途中までは中盤でボールを支配することができた。チェスなら70分までは、イングランドが“参った”と投了してもおかしくなかった。残念なのは残り20分もたなかったこと。なぜかというと1−0で勝っているのに、前に前に走って取られてまた戻るということを何度も繰り返したから。最後は走れなくなっただけでなく、技術の正確性がなくなった。それがオウンゴールになったと思う。今野、中沢ももっとフレッシュな状態でブロックに入っていればゴールになってなかった。最後まで出し切るようなペース配分ができないという問題点が、あのプレーに象徴されていた」

 初戦カメルーン戦までは2週間。もちろん、ここからフィジカル面で劇的な進化は望めない。そこで重要になるのがメンタル面の整備と言う。

 「微調整の時間しか残っていません。ですから準備ができる分野はメンタルです。そこで戦術的にもう少しみんなが共通の判断力を持って、力をセーブするところはセーブするようなテンポを変化させることができれば、残り20分までではなくて90分でも120分でもできるかもしれない。それこそがメンタルの準備です」(スポニチ