素人からみた「日韓戦」


 2010年03月05日に書いた 「明日からは Jリーグ」で 日本代表の実力から「カウンター」攻撃が最良の戦術だと思う。英国のプレミアリーグをテレビで観戦していると、本当に悪いけれどJリーグは見てられない。それでも、日本代表には勝ってほしいけれども、ここ1年の闘い方をみて「絶望的」な思いだ。
 
 昨日の「日韓戦」だが、韓国は決して万全なコンデションではなかったが、ひとりひとりの選手が「前へ前へ」のスタイルを着実にひたむきに貫いていた。それに比べて日本の方は、いまだに正選手になりたくて、思い切り(つまり失敗したくない)がなく、足が前へ向いていない選手が多すぎた。それと
パスだけでなく、クリアしたボールが自軍の選手にわたる確率が低すぎる。また引いて守る相手にボールをどんなに支配しても(支配すればいいという傾向が強い)かたく守る相手の前では無意味に近い。オシムさんが言う「走るサッカー」の意味を取り違えている。考えて走らなければエナジーのロス、それゆえ最後の最後に失点するパターンも多い。

 本気で「ベスト4」というなら、せめて英国と引き分ける実力を見せてほしい。


スポーツナビより引用

 あまりにも不用意な「進退伺い」発言

 「今まで積み上げてきたものがちょっとずつ消えてきている」(中村俊)
「あらためて、このままではいけないという気持ちになった」(本田)
「もっともっと速い選手、もっともっと仕掛けられる選手が必要だと思う」(長谷部)

 試合後のミックスゾーンからは、選手たちの焦燥と戸惑いの声ばかりが聞かれた。無理もない。国内最後の試合、そしてW杯初戦のカメルーン戦まであと3週間というこの時期に、これまで積み上げてきた「自分たちのサッカー」が、世界レベルでは通用しないという現実を突きつけられたのだから。先月のセルビア戦に大敗した際には、まだ「海外組が不在だった」というエクスキューズがあった。だが、この韓国戦の結果を受けて、岡田監督は大きな方向転換を決断せざるを得ないだろう。すなわち、アンカーを用いた守備ブロックを形成し、無失点の時間帯をできるだけ長引かせながら、カウンターアタックに活路を見いだす。そう、文字通りの「弱者の戦い」である。そこまで腹をくくった上で、まずは「初戦のカメルーン戦に勝利すること」にチームの意思統一を図る。これこそ、今の岡田監督に残された道であると私は考える。

 その意味でも、試合後の会見での「進退伺い」発言は、実に残念かつ不用意な失言であった。この発言について、あえて弁護の余地があるとすれば、岡田監督はその生真面目な性格から「1年に2回、韓国に負けて申し訳ないと思って」、その責任感ゆえに犬飼基昭会長に尋ねたところ「やれ」と言われた――という経緯を素直に会見で語ったものと思われる。結局のところ、この人は基本的にウソがつけない人なのである。ただ、その実直さが、時に他者の気持ちを必要以上に傷つけることも少なくない。

 2月の東アジア選手権で中国に引き分けた際、代表戦のファン離れが進んでいることについて「お客さんのことに関しては、そこまで背負い切れない」と語ったことがあった。この発言も物議をかもしたが、今回は「代表がどんな状況にあっても、ここまで来たのだから最後まで応援しよう」というファンの心を逆なでする内容であった。たとえ、ある種のパフォーマンスであったとしても、あまりにもタイミングが悪すぎたと言わざるを得ない。この雨の中、スタジアムに駆け付けて声をからして声援を送った約5万8000人のファン。そして、さまざまなリスクを承知で南アフリカに向かおうとしているサポーターたち。そうした人々の想いを、岡田監督はどのように感じているのであろうか。

 帰宅後、カバンからPCを取り出すと、青いタオルがはらりと落ちてきた。受付でもらった、JFA(日本サッカー協会)のエンブレムが描かれた小さなタオル。よく見ると、そこには「私達に力をください!! 岡田武史」という直筆が印刷されてあった。何ともいえぬ、深いため息がもれる。なぜ岡田監督は、自らの言葉で、ファンやサポーターに「力をください!」と言わないのだろうか。たとえ壮行試合で韓国に敗れても、指揮官が堂々とスタンドに向かって訴えたならば、きっとブーイングではなく「オカダタケシ」コールが沸き起こっていただろう。なぜなら、W杯は監督や選手やスタッフのみならず、国民の総力を挙げて戦うものだからだ。その事実は、ほかならぬ岡田監督自身が、最もよくご存じだと思うのだが。
宇都宮徹壱(うつのみや・てついち)