絹の靴下制作発3

 「THE CONVOY」のカッコいいダンスで女性たちを魅了してきた今村は、「アステアは57歳にしてこんなすごいことをやってるんだと感じる。湖月さんを支える、いい男の味が出せれば」という。

 湖月さんも私たちにしかできないデュエットダンスをお見せしたい」。女役4年目でも「まだまだ男性をリードしてしまいがち」という湖月さんは、まずは女性らしい歩き方を身につけるために、ソシアルダンスをはじめたとか。

 今回、振付は名倉佳代子と港ゆりかの2人。「クラシカルで、ミュージカルの良さをわかっておられる名倉さんにロマンチックな部分を担当してもらい、若い港さんには、現代的なテンポ感を期待しています」と荻田氏。アステアのテイストを残しつつ、ブロードウェイとは一味違うダンスが味わえそうだ。

 ズバリ、みどころは?と聞くと、今村は「ダンスナンバーもさることながら、やはりニノチカが自由の風にあおられて、変わっていく姿ではないでしょうか?」、湖月さんは「ねずみさんのおっしゃる通りですが、加えて、不況で先のみえない時代だからこそ、理屈抜きで楽しめるミュージカルが必要なのだと思います」。


 そして、演出の荻田氏は「この作品は、1つの信条に凝り固まった人間が、違うタイプの人に触れることで、自分の心を素直に見つめ直し、自我に目覚めていく物語。それを縦軸として、『この世に生きてるって楽しい』と実感できるような音楽とダンスを横軸に舞台をつくっていきたい」と語る。タカラヅカ時代から、その独自の世界観を感じさせてきた荻田が、古き良き時代のミュージカルをいかにアレンジしてみせるかも楽しみだ。


 出演者はこのほかに、ハリウッドのスター女優ジャニス役に樹里咲穂(じゅり・さきほ)さんソ連の高名な作曲家ボロフ役に渡部豪太ソビエトのお役人三人組イワノフ、ビビンスキー、ブランコフに戸井勝海、伊礼彼方、神田恭兵。

 心浮き立つような音楽とダンス、女性として感じるところがありそうな興味深いストーリー展開、そして「今だから」集まったキャストの面々。どうやら、一粒で三度も四度も美味しいミュージカルになりそうである。