星組の新星 蒼乃夕妃(あおの・ゆき)さん


 蒼乃夕妃(あおの・ゆき)さん。2004年入団第90期生。愛称:まりも、ゆき。身長:164cm。誕生日:9月12日。出身地:岡山県岡山市

    
   
   写真=蒼乃夕妃(あおの・ゆき)さん

プレシャス!宝塚より引用。

 星組期待の若手娘役・蒼乃夕妃さんが太王四神記Ver.II」(2009年7月27日まで宝塚大劇場)で“かっこいい娘役”に変身した。トップスター柚希礼音さん演じるタムドクの近衛隊を率いる女武将。キレのある立ち回りに歯切れのいいセリフ、まるで韓国版オスカルといったところだ。先日行われた新人公演ではヒロイン・キハも熱演。3度目の新公ヒロインで「前回(の新公)よりは広がりはあったかな?」と自身も手応えを感じるほどの完成度だった。

 長い髪をひとつに束ね、鮮やかな剣さばきに長いヤリも難なくこなす。「並みの男には負けません!」。セリフ回しもサバサバしていて、まさに韓国版オスカルといったところだ。


 蒼乃さん演じるカクダンは、今年1月の花組バージョンでは男役(望月理世(もちづき・りせ)さん 第86期生2000年〜2009年3月22日退団)が演じていた。「実は立ち回りをやってみたかったんです。男役さんの立ち回りを見る度に“かっこいいな〜”ってうらやましくて。でも見るとやるでは大違い。未知の世界への挑戦でした」。最初は剣の構え方さえ分からず、見よう見まねでやっても決まらない。普段使わない筋肉を駆使するため「なんでこんなところが?」と思わぬところが筋肉痛になり、自分で笑ってしまったという。


 一転、先日行われた新人公演ではヒロイン・キハを熱演。カクダンとは対照的にソロで透明感あるソプラノを聞かせるなど、3度目の新公ヒロインということもあり完成度の高い演技を見せた。「毎回、毎回、少しでも階段を上がって行かなければって思っているんですけど…。今回は自分の中では前回より演技の広がりはあったかな?って思います」。謙虚さの中にも確実な手応えを感じていたようだった。
 
 初めての新人公演:2008年7月8日(火)18:00開演 宝塚大劇場・2008年9月2日(火)18:30開演 東京宝塚劇場「THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)」ヒロイン(マルグリット・サン・ジュスト(元女優。パーシーの妻) 本役は遠野あすか(とおの・あすか)さん)は、がむしゃらだった。前回の新人公演:2009年2月24日(火)18:00開演 宝塚大劇場・2009年4月9日(木)18:30開演 東京宝塚劇場 「My dear New Orleans(マイ ディア ニューオリンズ)」ルイーズ・デュアン(ルル)役(本役は遠野あすかさん)は「舞台度胸はついたかな、って思うけど度胸だけじゃダメだって気付かされた」という新公だった。今回は「勢いも若さも大事だけど、自分の身になるモノがなければ(ヒロインを)させていただく意味がない」と自分に課題を与えた。


 このところの活躍は目を見張るものがある。2008年04月05日(土)〜04月15日(火)星組バウホール公演 宝塚バウホール開場30周年 バウ・ワークショップ『ANNA KARENINA(アンナ・カレーニナ)』原作/レフ・トルストイ氏。脚本・演出/植田景子氏。では不倫に走ってしまう貞淑な貴婦人アンナを好演し、評判となった。これをきっかけに劇団での存在感も増し、新公ヒロインはもちろん2009年2月6日(金)〜3月9日(月) 宝塚大劇場公演の Musical
『My dear New Orleans(マイ ディア ニューオリンズ)』−愛する我が街− 作・演出/植田景子氏。での妊婦役など本公演でも強烈なインパクトを放っている。「アンナ・カレーニナ」がターニングポイントと思われがちだが、実はその前に出演した2007年9月1日(土)〜9月23日(日) 星組日生劇場公演ミュージカル『Kean (キーン)』作詞・作曲/ロバート・ライト、ジョージ・フォレスト氏。脚本/ピーター・ストーン氏。潤色・演出/谷正純氏。翻訳/青鹿宏二氏。が「私を変えた」という。


 「若いハツラツとした(アンナ・ダンビー)役だったけど“何もできなかった”という印象しか残らなかった。“こんな思いは2度としたくない”って思って真っ白な状態にリセットしたんです」。悔しさをバネに「アンナ・カレーニナ」で好演し、その後3度の新公ヒロインで少しずつ階段を上ってきた。2009年10月13日(火)〜10月25日(日) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演される「コインブラ物語」でヒロイン(イネス役)を演じることも決まっている。今後も目が離せない娘役だ。

 ◆『太王四神記 Ver.II』星組新人公演:2009年7月14日(火)18:00開演
 韓国・高句麗には2000年に1度「チュシンの星に輝く日に生まれた王が世界を統一し平和をもたらす」という伝説があった。ある晩、ついにチュシンの星が輝き王族に2人の男の子タムドク(真風涼帆(まかぜ・すずほ)さん、本役・柚希礼音(ゆずき・れおん)さん)とヨン・ホゲ(麻央侑希(まお・ゆうき)さん、本役・凰稀かなめ(おうき・かなめ)さん)が生まれた。
 いとこ同士の2人は仲良く成長していったがヨン・ホゲの母親が自分の息子に王位を継承させようと、タムドクの父ヤン王に毒を盛ったことで対立。さらにホゲが思いを寄せていた炎の巫女(みこ)キハ(蒼乃さん、本役・夢咲ねね(ゆめさき・ねね)さん)がタムドクを愛していることを知り、ホゲは一方的に対抗心を燃やす。しかし、タムドクは剣の力でなく、人心を掌握しながら真の王へと成長するのだった。


2007年06月27日 花井伸夫「宝塚通信」より引用。

 宝塚の“専科スター”轟悠さんと、柚希礼音さんら星組選抜34人が出演する星組日生劇場公演、ミュージカル『Kean (キーン)宝塚歌劇団としては日生劇場での6度目の公演だが、専科スターで歌劇団理事でもある轟さんは、日生劇場での宝塚歌劇団最初の公演2002年04月06日(土)〜04月16日(火)専科・雪組・04月18日(木)〜04月29日(月)専科・花組 宝塚歌劇88周年記念特別公演 宝塚グランドロマン「風と共に去りぬ」第1部 君はマグノリアの花の如く・第2部 さよならは夕映えの中で 原作:マーガレット・ミッチェル氏。脚本・演出:植田紳爾氏。演出:谷正純氏。レット・バトラー役、2004年09月01日(水)〜09月23日(木・祝)宝塚歌劇90周年記念公演 専科・雪組「花供養」後水尾天皇役、2006年10月05日(木)〜10月27日(金)月組公演 ミュージカル「オクラホマ!」音楽:リチャード・ロジャース氏。脚本・作詞:オスカー・ハマースタインII氏。潤色・演出:中村一徳氏。カーリー(牧童)役。に続いて4度目の主演となる。

 「Kean (キーン)」は19世紀初頭に実在した“シェイクスピア俳優”エドマンド・キーンをズバリ!タイトルにした作品で、ストレート演劇としてはアレクサンドル・デュマの戯曲があり、またジャン・ポール・サルトルの「キーン〜或いは狂気と天才」が名高い。日本では文学座江守徹氏らの出演で上演されているが、ストーン脚本によるミュージカルの上演は初演だ。
 谷さんは「英国では有名な物語で、それがブロードウェイでミュージカル化され、さらに宝塚バージョンとして日本初演へという形です。シェイクスピアの名セリフが約30曲の歌とともに全編に散りばめられていて、イメージとしてはオペラに近いミュージカルと思って頂くといいでしょう」と説明している。
 
 ブロードウェイ版は1961年9月にボストンでのロード上演からスタートし、好評で、1961年11月には、もうブロードウェイで初演され大きな話題を呼んだという。だから、ブロードウェイでのミュージカル版初演から半世紀近く経って、宝塚バージョンとして甦るわけだ。
 シェイクスピアの戯曲を演じさせたら右に出るものはいないとまで言われた名舞台俳優キーンの“名優ぶりと1人の男のとしての真実”。さらに、“キーンを巡る複雑な愛の人間関係”が、シェイクスピアの名セリフと重なり合い、歌に紡がれて重層的に展開されていくのが見どころ、聞きどころの作品と言えるだろう。

 もちろん、轟さんが狂気と天才の人・キーンに挑む。そしてキーンが唯一、自らの真実をさらけ出せるほどの親友プリンス・オブ・ウェールズに進境著しい柚希礼音さん。人生の皮肉というか、2人が同時に想いを寄せてしまうデンマーク大使夫人エレナ・デ・コーバーグに南海まり(みなみ・まり 1999年入団〜2008年2月11日退団)さん。女優志望で熱烈なキーンのファンで、貴族との挙式前夜に失踪してしまうアンナ・ダンビー役で入団4年目の蒼乃夕妃さんが抜てきされているのも特筆ものだ。