TAKARAZUKA SKY STAGE090622

◎06/22 13:30 ファントム('04年宙組・東京・千秋楽) 小説「オペラ座の怪人」をアーサー・コピットの脚本により舞台化された「PHANTOM」を新たに宝塚版として上演。'04年宙組/東京・千秋楽/出演:和央ようかさん、花總まりさん/樹里咲穂さん/安蘭けいさん 他(182分)

☆2004年07月17日(土)〜08月29日(日)宙組東京宝塚劇場公演☆

宝塚歌劇支局040515」より引用。

 和央ようかさん、花總まりさんの宙組トップスターコンビが主演する話題のミュージカル「ファントム」(中村一徳氏脚本、演出)が、5月14日、宝塚大劇場で開幕した。2004年05月14日(金)〜06月21日(月)宙組宝塚大劇場公演。

 「ファントム」は、19世紀後半のパリ、オペラ座を舞台に繰り広げられるファントム(怪人)と歌姫クリスティーヌの悲恋を描いたガストン・ルルー原作「オペラ座の怪人」のミュージカル化。「オペラ座の怪人」といえば劇団四季によるアンドリュー・ロイド・ウェーバー版が有名だがこちらは「グランドホテル」や「ナイン」などのモリー・イエストンが作曲したもうひとつのミュージカル版。これをもとに宝塚の絢爛豪華な舞台に再現したのが「ファントム」で、ストーリーの骨子は四季版よりルルーの原作に忠実で、ファントムの出生の秘密に迫り、クリスティーヌへの愛に親子の愛をからませてドラマティックに展開する。

 ファントムといえば顔の傷をマスクで隠すのが決まり。顔が売り物の宝塚のトップスターがマスクで表情を覆うというのは企画当初から賛否両論だったがベールを脱いだ話題のマスクは、山田操氏デザインによるブルー、白、黒、赤と4種類。ファントムの心理状態によって異なったマスクが使われる。なかでもクリスティーヌへの愛の象徴として登場するクリスタルブルーのマスクがいかにも宝塚らしいゴージャスさでムード満点。宝塚ならではのファントムの登場となった。

 約2分間のオーバチュア(序曲)のあとオペラ座の屋根の上にファントム(和央さん)が登場。主題歌「僕の悲劇を」を歌う。巨大な三日月がこれからの悲劇を象徴するように黄色く輝き、意味ありげなオープニングだ。

 場面はオペラ座前の通りに変わり、楽譜売りの少女クリスティー花總さん)が歌っている。その美しい歌声にシャンドン伯爵(安蘭けいさん)がほれ込みオペラ座でレッスンを受けられるように取り計らう。衣装係として働くことになったクリスティーヌの歌声を地下から聴いたファントムはその歌声に魅せられ、自ら歌を教えることにする。またたく間に上達したクリスティーヌは新作オペラのヒロインに抜擢。しかし、嫉妬した歌姫カルロッタ(出雲綾さん)の陰謀で公演中に声がでなくなってしまう。怒ったファントムはクリスティーヌを誘拐、オペラ座湖底の棲み家へ小舟に乗せて連れていく。ここまでが第一幕。

 同じ物語といっても劇団四季バージョンとはやや違った展開で、音楽も異なっていることから全く違った印象。安蘭さんが歌う「パリの夜」などは「ミー&マイガール」を思わせる心うきたつ楽しさだ。

 一方、第2幕からは、ファントムの出生の秘密が明かされるなどストーリーが急展開、幻想的な場面や宝塚らしい豪華な装置のなか、メロドラマチックに盛り上がって行く。ややご都合主義的な展開で物足りないところもあるが、ファントムの悲しい性はうき あがった。

 和央さん、花總さんは適役好演。とりわけ和央さんの充実ぶりが素晴らしい。花總さんの相変わらずの初々しさにも感嘆させられる。ファントムの父親であることが明かされるキャリエール役の樹里咲穂さんも息子を捨てた親の苦悩を熱演、シャンドン伯爵の安蘭さんはひたすらかっこいい。

 若手のほとんどが団員であるとか従者といったせりふもない軽い役しかないのがかわいそうだが、なかでファントムの母親役を演じた音乃いづみさん、若い団員メグを演じた花影アリスさんが印象的だった。


◎06/22 18:30 ファントム('06年花組・東京・千秋楽) 仮面を被り生きていかなければならない運命を背負ったファントムの、心の葛藤を描いた作品。'06年花組/東京・千秋楽/出演:春野寿美礼さん・桜乃彩音さん 他(185分)

☆2006年08月25日(金)〜10月01日(日)花組東京宝塚劇場公演☆


2006年9月12日 (火) 感激!観劇記 宝塚の「ファントム」はすごい!★花組「ファントム」 

いや素晴らしかった花組公演「ファントム」! って中本千晶さんの「ヅカ☆ナビ!」と同じ出だしを使わせていただきました。 私は宙組初演を観てないので比較も何もなく言いきってしまいますが、宝塚のファントムはスバラシイ!泣きました。

 観る前は、2006年9月10日に劇団四季での公演が4000回を迎えた『オペラ座の怪人』の宝塚版だと思っていたのです。四季版は10数年前に観て、「スペクタクル!」とは思いましたが、当時はまだ理解が足りなかったためもあって、私にとってはそれほど心残るものではありませんでした。だから宝塚版もそれほど期待してなかったし、逆に「『オペラ座の怪人』を無理やり宝塚版に変更して変なコトになっちゃってるんじゃなかろうか」と不安だったくらいです。

 しかし!そもそも「ファントム」と「オペラ座の怪人」はまったく別のミュージカル作品だったのでした。「オペラ座の怪人」は英国ミュージカルの大物作曲家アンドリュー・ロイド・ウェーバーによる作品。一方の「ファントム」はA・コピットとM・イェストンによるアメリカ製ミュージカルです。どちらもフランス人作家ガストン・ルルー怪奇小説を元にしていますが、音楽はもちろんのこと、物語の焦点も異なります。

 宝塚「ファントム」は、主人公エリック(=オペラ座の怪人)の心情が掘り下げられ、“怪人”として生きねばならなかったエリックの哀しい運命に心動かされます。「オペラ座の怪人」ではおっかない怪人という印象しかありませんでしたが、宝塚「ファントム」のエリックは、社会から隔離されて育った、成長しきれていない青年。音楽の天才で、ナイーブで子どものように残酷で、そして心から愛を求めている“オペラ座の怪人”なのです。

 花組トップスター春野寿美礼さんの素晴らしい歌声や、ノーブルな、それゆえに周囲の人を寄せつけない孤高の雰囲気が、そのままエリックのキャラクターと重なります。まさに春野さんのために作られた舞台?と思ってしまうほど。そんな孤独で、愛を求めているファントムだから、2幕目の展開には大泣きなのでした。うう、ネタばれになるのでもう書けませんが、ゼヒ当日券や映像でも観ていただきたい作品です。

 敵役のプリマドンナ、カルロッタも素晴らしいです。女性の敵役は、通常の宝塚の舞台では存在しにくいキャラクターだと思いますが―2番手以降の男役が演じる主人公の友人や敵役は魅力たっぷりに造形されるが、女性のライバル役はあまり作りこまれないという印象―、宙組版でも同役だったという出雲綾さんがコミカルに意地悪に、そして迫力ある歌声で思う存分に演じていて見どころたっぷり!彼女が豪快に演じれば演じるほど、娘役トップの桜乃彩音さん演じるクリスティーヌの可憐さもまた際立つのでした。

 宝塚「ファントム」を観て、私はあまりメジャーではないと思われるこの作品をよくぞ発掘してくれ、私の中では評価が低かった「ファントム(オペラ座の怪人)」を再評価させてくれた!と思いました。改めて劇団四季版を観なおしてみたいとも思いました(そういえば07年3月で千秋楽を迎えるそうです)。劇団四季で、ブロードウェイまたはウェスト・エンドで、あるいはハリウッド映画で観た方も、ゼヒ宝塚版の繊細な「オペラ座の怪人」も観比べて欲しいと思います。「ベルサイユのばら」が宝塚の全てと思っている方にもおすすめです。宝塚で演じられるのにふさわしい作品ではないかと思います。

 (おまけ)やっぱり「ベルばら」もすごい―「ファントム」を観たのは7月、「ベルばらの時代展」取材の前日のことでした。感動の舞台に「『ベルばら』の次に観るべき作品はこれで決まりだな」と強く確信し、春野さん歌うテーマを頭の中でリフレインしながら、奈良の「ベルばら」展会場へ。1時間後に会場を出たとき、頭の中の音楽は「愛あればこそ」にすりかわっておりました…。「恐るべし“ベルばら”、恐るべし昭和歌謡」と、そのとき震撼したものです←大げさ(オノ)。