ファンにとっての『宝塚』その6


『宝塚というユートピア川崎賢子氏著)』より引用。

 宝塚はひとにぎりのスターだけのものではない。群舞、コーラス、ロケットでチームワークを発揮しつつ、集団に埋没しないことをタカラジェンヌは求められる。ラジオシティのロケットは、その道一筋の熟練のダンサーの見せ場だが、宝塚の場合は、むしろ新人の活躍の場であり、毎年四月に初舞台生は、開演前に黒紋付、緑の袴で日上をつとめ、フィナーレでロケットを披露するのが、近年のならいとなっている。

 

 ショーのなかでダンサーが一列になって脚を上げるダンスがいつごろから始まったのかはさだかではありませんが、それを有名にしたのはニューヨークのラジオ・シティ・ミュージック・ホールのダンスチーム「ロケッツ(Rockettes)」です。ロケットダンスという言葉はここから生まれました。


 

 1922年、ブロードウェイで大ヒットしたレビュー「ジーグフェルド・フォーリーズ」を見たラッセル・マーカートはジョン・テイラー振付の「テイラー・ガールズ」のダンスに刺激され、もっとスタイルが揃っていて、複雑なステップと、高い脚上げ(eye-high kicks)ができることを目標に1925年に「セントルイスミズーリ・ロケッツ」というダンスチームを作りました。このチームがアメリカで評判になり、1932年からラジオ・シティ・ミュージック・ホールで公演を行うようになったのです。

 セントルイスミズーリ・ロケッツはラジオ・シティ・ミュージック・ホールの前にもブロードウェイの様々な劇場で公演を行っていましたが、ロキシー劇場のオーナーはことに彼女たちを気に入って、劇場に合わせチーム名を「ロキシエッツ(Roxyette)」と変えました。本拠地をラジオ・シティ・ミュージック・ホールとしてからも、しばらくはロキシエッツと呼ばれていましたが、やがて女性形の「ロケッツ」に改名し、今に至っています。

 参考ブログ 『My舞ダンスin New York』より引用。

 NYの冬の風物詩といえば、1933年から続くクリスマスショー「ラジオシティ・クリスマス・スペクタキュラー」

 ラジオシティ・ミュージックホール(Radio City Music Hall)はアメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市ロックフェラーセンターにあるホール。5933席収容の世界最大のホールでもあり、毎年6月のトニー賞の授賞式もここで行われます。

 


 このショーの最大の見ものは、The Rocketsによるダンス・レビュー。ラインダンスからおもちゃの兵隊からスケートからネイティビティまでいろいろあります。イメージ的には、MGM映画のダンサー、または宝塚歌劇団のロケットダンス。でも、規模が大きいので見応えあります。


『宝塚というユートピア川崎賢子氏著)』より引用。

(宝塚)大劇場(東京宝塚劇場)公演中には、研究科7年(研7)以下の若手による新人公演が一度だけある。

 本拠地のバウホール、大阪の梅田芸術劇場メインホール、シアター・ドラマシティ、東京の日本青年館など、中小の劇場での公演の場合は、幕間休憩をはさんで2幕2時間半ほどの一本ものとなる。選抜メンバーによるやや少人数の上演で、スペクタクル性よりはウェルメイドなドラマとしての掘り下げが可能だったり、若手の演出家のこころみが許容されたり、大劇場ではせりふを貰えない下級生に活躍の場が与えられたりする。

 私は恥ずかしながら「新人公演」を観たことがない。というのもこの公演は平日の夕方という日時なのでなかなか予定がつかない。1度は観に行きたいが終演が宝塚で20時半ころで家に着くのが22時前なので明日の仕事がつらいのと良い席が抽選で当たらないのも原因かも
 そして地方公演も観たことがないどころか東京宝塚劇場さえ行ったことがない。うちの奥さんはお姉さんが「宝塚ファン(鳳蘭さんの大ファン)」という影響もあって、博多座中日劇場、そして旧の東京宝塚劇場も行っている。(実にうらやまし)
 

 ウェルメイド・プレイ(芝居)は、偶然のできごとが重なって意外な展開を見せていく、ある種ご都合主義的な筋立てで構成されている。しかし観客はそれに気づかないほどハラハラし、登場人物の行動に一喜一憂する—そんな物語の語り口の上手さが「上手く作られた芝居」という名の所以である。それゆえにウェルメイド・プレイは、今日の商業演劇にまで続く、娯楽演劇の劇作の基本として主流となった。
 しかし今日ではウェルメイド・プレイという言葉は、劇作上の上手さをほめることもあるが、多くの場合、ストーリーはうまく出来ているがそれ以外は何もないような劇—テーマやメッセージのない、劇として深味のない作品という意味で使われることが多い。


『宝塚というユートピア川崎賢子氏著)』より引用。

生徒たちはしばしば「舞台のどこに居ても輝くことのできる舞台人」になりたいと語る。一言のセリフもない下級生であっても、プログラムには全員の名前と顔写真が載り、その一人一人にファンが付いている。その意味では、すべての演技者がスターだといっても良い。顔を見せずに舞台袖のマイクで歌をきかせる生徒であれば「カゲソロ」「カゲコーラス」として名前が載る。スペクタクルの影の存在ではあるけれど、その他大勢ではない、その歌はBGMではない。「カゲソロ」に拍手を送るファンもいるのが宝塚である。

 以前にも書いたが、生徒ひとり一人がどのポジションに置いても全力を尽くすというのが「宝塚」である。演技は目立たないけど(セリフがなかったり少なかったり)「歌」がうまい「踊り」が上手「ダンス」が秀逸など、生徒さんの才能を見つけて、自分だけの「スター」にするという人も多い。