「太王四神記」宝塚大劇場公演


ステージレビューより引用。

 キャストを見ると、主人公タムドクの真飛聖(まとぶ・せい)さんは、悩み迷いながら、真の王になろうと努力する青年を繊細に演じている。最初から偉大な王だったのではなく、その人柄にひかれた者たちが彼の下に集まり、タムドクはやがて彼らに支えられ、彼らを率いる立場となっていく。青年の成長する姿を等身大に演じて、共感を呼ぶ。

 真飛さんとコンビを組んでから、可憐で控えめ、妹的な立場の役が続いていた桜乃彩音(さくらの・あやね)さんは、一転して、激情を秘めたヒロイン、キハを演じている。あらがいきれない力に流され、望んでもいないのに周りを巻き込んでしまう。そんな悲しみや絶望をたたえた目の演技が力強くひきつけられる。

 ヨン・ホゲは大空祐飛(おおぞら・ゆうひ)さんにははまり役。武道に優れた彼こそ真の王と目され、闊達に生きてきたが、彼もまた運命の手によって、幼い頃から友情を育んできたタムドクと決別、破滅へと進んでいく。大空はまっすぐな性格ゆえに、一転して狂気に変わっていく人物を深く演じている。甲冑姿も非常にさまになっている。

 彼らの運命を背後で操る黒幕が太古の時代から生き続ける火天会の大長老プルキルで、演じる壮一帆(そう・かずほ)さんは、徹底した悪役ぶりで舞台を引き締めている。明るくまっすぐな人物を演じることが多かったが、この役で大きく幅が広がったのではないだろうか。今後が非常に楽しみだ。

 愛音羽麗(あいね・はれい)さんはスジニ、幼くして生き別れたキハの妹で、玄武の神器の守り主であるヒョンゴたちに拾われ、育てられた。長じてタムドクに恋心を抱く。愛音さんは女役だが、男の子のように育った女の子という設定なので、自然なかわいらしさを発揮している。序盤、前世のセオ役で真飛さんのファヌンと踊る場面も美しい。

 スジニを保護し育ててきたコムル村の村長ヒョンゴを演じる未涼亜希(みすず・あき)さんは物語の導き手でもあり、進行がわかりやすいのも、その語り口によるところが大きい。

 ほか、印象に残った人物として、華形(はながた)ひかるさんの火天会士サリャンは、プルキルの手先でキハを監視しているが、最後はキハを守ろうとして死ぬ。口に出さずともキハを思う心情が伝わる。

 真野(まの)すがたさんが演じた青龍の神器の守り主チョロは、身体に青龍を埋め込まれたために醜くなっていた容貌が、タムドクの力で本来の姿に戻る。真野が仮面をはずし、その顔を見せるところは納得の美しさ。

 芝居のすぐ後に続くフィナーレも品よく、バランスよくまとまっていて、満足感がある。

 真飛さん、桜乃さん、大空さんの3人がじっくり絡む恋愛ドラマは、花組がこの体制になって以来初めて。役柄に、それぞれの持ち味が生かされていて、3人の愛のドラマの行方が気になり、最後まで見守ってしまう。宝塚恋愛ドラマの王道を堪能するにはもってこいの作品だ。

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