『凍てついた明日−ボニー&クライドとの邂逅(かいこう)−』を観てきました。


スポニチ宝塚歌劇支局より引用

 雪組の凰稀(おうき)かなめさんを中心にしたバウ・ワークショップ「凍てついた明日〜ボニー&クライドとの邂逅(かいこう)」(荻田浩一氏作、演出)のBチームバージョンが宝塚バウホールで開幕した。

 20世紀初頭のアメリカに実在した男女2人組のギャング、クライド・バロウとボニー・パーカーの壮絶な愛と死の物語を荻田氏がデビュー2作目としてミュージカル化した作品の再演。AチームとBチームに分けての上演で、クライドはAチームと同じ凰稀かなめさんだが、ボニー役は愛原実花(あいはら・みか)さんから大月(おおつき)さゆさんに代わり、それだけでずいぶん雰囲気が変わったうえ、周りの出演者も場数を踏んでメキメキうまくなり、Aチームの初日のころと比べると見違えるようなできばえとなった。


 凰稀さんのクライドは、スーツ姿がばっちり決まって相変わらずかっこいい。くわえて何を考えているのか分からないクライドのクールな雰囲気がすっかり身体にしみてきて、ますますはまり役。これまでの代表作というにふさわしい。

 ボニーの大月さゆさんは、大舞台で何度も大役を演じてきただけに、さすがに舞台姿に華があり、それがクライドとの逃避行あたりから女性としての凛としたかっこよさに変わっていき、愛原とは違ったアプローチで、全く違ったボニーの魅力を引き出した。距離感を抱いた愛の形も巧みに表現、見事だった。

 Aチームと同じ役で出演したメンバーはベテランも含めていずれもよくなったが、レイモンド役の沙央(さお)くらまさんが、Aチームの時とは見違えるような好演。力を抜いた演技で余裕がみえ、緩急自在さがでた。レイモンドの恋人メアリー役の+透水(とうみ)さらささんも下品な感じをいやらしくならずによく出した。


 Aチームで大月さんが演じたクライドの元恋人役アニスを演じた愛原さんが非常に細かい丁寧な演技をみせ、クライドの人柄がアニスを通して透けてみえる絶妙の演技。役を大きくふくらませた。これでクライドのなかのボニーとアニスの関係性がはっきりした。大月さん、愛原さんのバランスはこちらの方がよかった。

 クライドの弟分ジェレミーは真那春人さんが演じた。初演の安蘭さんのイメージに近いジェレミーで、どことなく彩吹真央さんにも似た雰囲気でタイプ的に役にあい、しっかりした演技で印象に残った。ジョーンズ役の彩風咲奈さんもいかにも少年ぽくて初々しかった。

 ほかにボブ役の朝風れいさん、ビリー役の早原まこさんも適役好演。アンサンブルでは白渚すずさんの凛としたたたずまいが、ひと際目を引いた。(薮下哲司)


【宝塚バウホール雪組公演 宝塚バウホール開場30周年
『凍てついた明日−ボニー&クライドとの邂逅(かいこう)−』
公演期間:2008年6月12日(木)〜6月22日(日)
主な配役 出演者 
クライド・バロウ 凰稀かなめさん  ボニー・パーカー 大月さゆさん
カミー・バロウ(クライドの母) 京三紗さん  エンマ・パーカー(ボニーの母) 五峰亜季さん  記者/バック(クライドの兄)/フランク(3役) 未来優希さん  
ネル・コーワン 涼花リサ さん
テッド・ヒントン 緒月遠麻さん
レイモンド・ハミルトン 沙央くらまさん
ビリー・メイスン 早花まこさん
ダイナーの店主 香音有希さん
ロイ・ソーントン 香綾しずるさん
ブランチ・コ-ルドウェル 千風カレンさん
ボブ・アルコーン 朝風れいさん
アニス・フラナガン 愛原実花さん
メアリー・オーデア 透水さらささん
ジェレミー・メスヴィン 真那春人さん
ジョーンズ 彩風咲奈さん