バウ・ミュージカル『THE SECOND LIFE』

TAKARAZUKA SKY STAGE 3月16日放映  2007年11月19日 千秋楽公演

 宝塚バウホール宙組公演 『THE SECOND LIFE』 公演期間:2007年11月10日(土)〜11月19日(月) 作・演出/鈴木圭。

主な出演者
 ◇ジェイク・アイアン 北翔海莉さん (98年、宝塚歌劇団に入団。宙組公演『シトラスの風』で初舞台を踏む。第84期生には未涼亜希さん、桐生園加(きりゅう・そのか)さん、椎名葵さん、音月桂さん、白羽ゆりさん、遠野あすかさんなどかいる。)  ◇ルシア・バートン 和音美桜さん

◇マーク・ホワイト  七海ひろきさん
◇ドン・ヴィンセント/神様  汝鳥伶さん (71年入団 第57期生)  ◇アイラ・ヴィンセント  藤咲えりさん(05年入団 第91期生)
◇ケイト・ミラー  美風舞良さん(96年入団 第82期生)  ◇ルイジ  八雲美佳さん   ◇ケリー・スレーター  早霧せいなさん   ◇カルロ  美牧冴京さん   ◇ジュリオ  麻音颯斗さん  ◇ニーナ  愛花ちさきさん  ◇ニコロ  雅桜歌さん  ◇ファビオ  光海舞人さん  ◇マウロ  澄輝さやとさん  ◇ルーカ  颯舞音桜さん   ◇ロベルト  天輝トニカさん  ◇パオロ  月映樹茉さん  ◇天女 千鈴まゆさん(04年入団 第90期生)。

 物語は、冒頭お墓の前から始まる。ジェイク・アイアンが頭(こうべ)を垂れている。
 シチリアのマフィア(と言っても安全第一!暴力反対がモットー)のボスであるドン・ヴィセントは、誰も寄り付かないヴィセントホテルで娘のアイラ(オーナ)と部下と暮らしていた。ボスの右腕はジェイク・アイアン、切れ者で拳銃の名手だが玉にキズがプレボーイなところ。

 ルシア・バートン嬢は、将来を嘱望されたピアニストだった婚約者マイク・ホワイトを流れ弾で失い、生きる気力を無くした毎日を送っていた。友人のケイト・ミラーは、そんな彼女を傷心のイタリア旅行へと誘う。二人は、シチリアのヴィセントホテルへ滞在することになる。

 だがドンのライバル組織マルコーニ一家にだまされ睡眠薬を飲まされたジェイクは、殺されてしまう。
 さてマークだが、かつては。ルシアとの幸福のゴール寸前、天国へと召されたマークの魂は、天国からルシアを見守っていた。そんな時、天国に大きな問題が起こった。長年にわたり天国を治めてきた神様が、引退を表明。しかし二代目は道楽息子。神に就任してからも、相変わらず天女を追い掛け回している始末。その騒ぎに乗じて、マークは監視の目を盗み、下界に降りてしまう。
 ルシアの目の前に姿を現したマークは、勇気を出して声を掛けた。しかし、ルシアはマークの姿に気付くことはなかった。それもそのはず、マークの姿は人間には見えなかったのだ。ガッカリとしたマークは、ジェイクの死体を見つける。この様子では、まだ誰にも発見されていない様子……。マークは、この体を借りてルシアの前に姿を現そうと考えた。しかし、突然現われた男にルシアは不信感を抱く。ジェイクとなったマークはあの手この手で近づくが、一向に振り向いてはもらえない。一方、ジェイクの生存の噂を聞きつけたドンがやって来て、新たな仕事を依頼する。自分がマフィアになってしまったことを知り驚くマーク。

 マフィアとなったマークの運命は……、そしてルシアとの恋の行方は……。

 美風舞良さんが、千秋楽の御礼あいさつ、最後に主演の北翔海莉さんが「愛情の三ふりかけ」 目 気 声 アンコールには「君に伝えたいことがある・・・・」「お客様は神様です。そして汝鳥さんは神さまです。」
「ありがとう、とはあることが難しいと3年B組の金八先生ばりの格言
アンコールが5度
武田  
大切な思い出を踏みにじることが許せない
「企業秘密」とは何?

 宝塚歌劇支局 『THE SECOND LIFE』評

「SECONDー」は、鈴木圭氏の「里見八犬伝」以来のバウ2作目。オリジナルは初めてとなる。舞台はシチリア。抗争に巻き込まれて死んでしまったマフィアの青年ジェイク(北翔海莉さん)の身体に、流れ弾で死んだマーク(七海ひろきさん)の魂が宿って生き返ったことから巻き起こるてんやわんやの騒動を描いたファンタジックコメディー。若手作家のオリジナルデビュー作というにはまたまたどこかで聞いたお話で、なにやらお手軽感は否めないが、軽いタッチの展開と、演技派、北翔の絶妙の間合いで最後まで見せてしまう。

 将来を嘱望されたピアニスト、マーク(七海ひろきさん)は、フィアンセのルシア(和音美桜さん)との結婚を目前に、流れ弾で死んでしまう。しかし、ルシアに一目あいたいマークは天国の監視の目を盗んで下界へ。そこで、抗争に巻き込まれて死んでしまったマフィアの青年、ジェイク(北翔海莉さん)の身体に乗り移ってしまう。

 それまでキザりにキザっていたジェイクが突然、超マジメに変身するあたりのおかしさを北翔さんが天性の持ち味で見事に表現、おまけに芝居のクライマックスで、見事な弾き語りまで披露したあたりは、もう脱帽もの。これまで、巧すぎてやや地味に見えた立ち居振る舞いも、華やかさがまし、スターとしての風格のようなものまでただよってきた。

 北翔さんがうますぎて、ついついお話に集中してしまいがちになるが、冷静に考えてみるとこの脚本ややおかしなところもある。基本的にジェイクという青年が北翔さんの役なのだが彼は殺されてしまうことから、後半はジェイクに乗り移ったマークの話になり、途中から主人公が代わるのである。一応、ジェイクになったマークが主人公という風にみればつじつまはあうのだが。

 マークの婚約者ルシアの側から見ると、マークとは全く違った青年のなかにマークをみつける話ということになり、それはそれで一つのドラマとして成立するのだが、ちょっと釈然としない。

 セリフでジェイクは天国でプレイボーイしているというくだりが出てきて笑わせるのだが、それはいったいだれの姿をしているのだろうか?

 まあそんな理屈はおいておいて北翔さんの絶妙の演じ分けを見るのが眼目だ。相手役の和音さんはさすがに歌は素晴らしく、死んだはずの恋人が姿を変えて現れたことから揺れ動く心情を的確に表現、ヒロインとしても申し分がなかった。初々しさというか華やかさがにじみ出ればさらによくなるだろう。

 共演者は若手が多いなかジェイクの部下に扮したケリー役の早霧せいなさんが、はつらつとした華やかな演技で一際目を引いた。ベテランの汝鳥伶さんの大胆なカツラにもびっくり。