朝日ベストテン映画祭(日本映画)

2006年12月04日
 関西の劇場で昨年12月から1年間に公開された日本映画250本、外国映画377本を対象に、秀作各10本を選ぶ「第49回朝日ベストテン映画祭」(朝日新聞社朝日放送主催)の選考会が開かれ、日本映画と外国映画の上位10作が決まった。1位は「ゆれる」(西川美和監督)と、韓国映画グエムル 漢江の怪物」(ポン・ジュノ監督)。入選作から6本を選んで上映する映画祭が、来年2月5日から大阪・中之島のリサイタル・ホールで開かれる。

 〈審査委員〉 浅野潜(映画評論家)▽浅野宗祐(ぴあ編集部)▽笹井弘順(映画ライター)▽服部香穂里(映画ライター)▽春岡勇二(映画評論家)▽森川みどり(シネマコミュニケーター)▽柳博子(映画ライター)▽長谷川千尋朝日新聞記者)

■日本映画

(1)ゆれる(西川美和

(2)紙屋悦子の青春黒木和雄

(3)時をかける少女細田守

(4)フラガール(李相日)

(5)ストロベリーショートケイクス矢崎仁司

(6)博士の愛した数式小泉堯史

(7)蟻の兵隊池谷薫

(8)花よりもなほ是枝裕和

(9)雪に願うこと根岸吉太郎

(10)かもめ食堂荻上直子

 ある事件をきっかけに信頼が揺らぎ始める兄弟を描いた西川美和監督の「ゆれる」が1位に。地方で家業を継ぐ兄と東京に出てカメラマンとして成功した弟。香川照之オダギリジョーの演技への評価と、「兄弟の愛憎を女性監督ならではの繊細な視線でとらえた手腕がすばらしい」(柳委員)など、各委員から支持が集まった。

 2位の「紙屋悦子の青春」は、今年4月に亡くなった黒木和雄監督の遺作。第2次大戦末期、思いを寄せていた青年は特攻で出撃、その友人と結婚した女性を通して戦争の不条理を淡々と描いている。「自らの戦時体験を深く顧みて、戦争と平和について考え抜いた黒木監督ならではの作品」(浅野潜委員)。

 アニメ作品の中からは筒井康隆原作の「時をかける少女」が3位に。主人公を現代の快活で積極的な高校生に置き換えた躍動感ある青春もの。「展開がスピーディーで、少女を経験したことのある人ならラストシーンに感激するはず」(森川委員)。

 4位は「フラガール」。閉山になる炭鉱の街が生き残り策としてハワイアンセンターを計画。盆踊りしか知らない少女たちがプロのダンサーに成長していく実話に基づいた物語だ。「彼女たちの姿を見ると頑張ろうという気持ちになる」(笹井委員)。一方、都会の女性の孤独と自立を描いた「ストロベリーショートケイクス」は5位。「原作の漫画を読み解き、4人の女性の思いをうまく映画にしている」(服部委員)。

 ドキュメンタリーにも秀作が目立ち、「蟻(あり)の兵隊」が7位に選ばれた。第2次大戦後に中国で国民党軍の日本人部隊に組み込まれ、共産党軍との内戦を戦い続けた旧日本軍兵士の姿を追った作品。一般に知られていない事実を映像で紹介した点が評価された。