ジダンは最後までたたかう人だった 断固支持したい

 ワールドカップ勝戦、個人的にはイタリアを応援していた私だけれど、フランスのジネディーヌ・ジダン (Zinedine Yazid Zidane, 1972年6月23日生まれの34歳)だけは別格の存在だった。両足が本当は磁石ではないかと思わせるほどボールに吸い付き、囲まれても、するりと抜ける「ルーレット」の技、味方への適格なパス、そして自分自身もドリブルで敵陣へ突入し、ゴールができる天才サッカー選手である。この不幸な事件=「現在日記を参照」は、相手の多分許しがたい(そうでなければこんなことをするわけがない)発言が巷にながれているように人種差別的なものであったとしたら、この大会で誓った人種差別をなくすという主旨から大きく逸脱するものである。最後の試合そして世界1をかけた試合を放棄するほどの侮辱であったこそジダンは頭突きをしたのである。この闘志を誰が非難できるだろうか。


 国際サッカー連盟(FIFA)理事を務める日本サッカー協会小倉純二副会長は11日、ワールドカップ(W杯)ドイツ大会決勝(9日)で退場処分を受けたフランスのジダン選手と、頭突きを受けたイタリアのマテラッツィ選手がFIFAの規律委員会から処分を受ける可能性があることを明らかにした。
 ジダン選手の頭突きは、マテラッツィ選手の発言に原因があると推測されている。11日、ドイツから帰国した小倉副会長は成田空港で「FIFAは差別行為に対し非常に厳しい。証拠が出て事実が確認されれば、出場停止や罰金になるかもしれない」と見方を示した。[ 共同通信社 7月11日 10:10 ]

9日のサッカーW杯決勝でフランスの主将ジダン選手がイタリア選手に頭突きして退場になった「事件」が、仏社会で波紋を広げている。同選手が暴力行為に訴えた理由については真相が明らかにされないまま、人種差別的な挑発が原因だとして同情する見方も出た。その半面、「ジダン選手にあこがれる子供に示しがつかない」との戸惑いも。サッカー界にはびこる人種差別や仏国内の移民問題も絡んで、騒ぎはしばらくやみそうにない。
 報道では、イタリアのマテラッツィ選手がアルジェリア系移民2世のジダン選手を「テロリストと呼んだ」「家族を侮辱した」などの憶測が飛び交っている。しかし、両選手とも真相には口をつぐんだまま。挑発発言にジダン選手が怒りを爆発させたのは確実とみられ、仏市民の多くは「人種差別的な侮辱発言に違いない」と信じている。
 欧州サッカー界では近年、人種差別が問題になっており、非白人が多い仏選手が標的になるケースも多い。04年、両親がカリブ系のアンリ選手を「黒いクソ野郎」と形容したスペインの監督が制裁金を科された。やはりカリブ海の仏海外県出身のチュラム選手もルモンド紙で「イタリアのリーグで観客がサルの鳴きまねをするなど人種差別が目に余る」と苦言を述べていた。
 パリ郊外でW杯をテレビ観戦したアフリカ系のジョスランさん(26)は「差別発言への怒りをぶつけて退場になったのなら、それで負けても僕は誇りに思う」とジダン選手をかばった。世論調査では51%が同選手の行為を「理解できる」と回答。仏人権団体は10日、国際サッカー連盟に実態調査と、差別発言が事実だった場合の制裁を求める声明を出した。

ジダンはなぜイタリアのマテラッツィに頭突きをしたのか――。ワールドカップ決勝から一夜明けたパリの街はこの話題で持ちきりだ。当事者は黙して語らないので憶測の域を出ないが、メディアの報道などを参考に皆が「これが真相」としたり顔で語っている。
 仮説の1つは「人種差別的な発言」。ジダン本人はマルセイユ出身のフランス人だが、アルジェリア系移民の家庭に育った。イスラム教徒やマグレブ系を侮蔑(ぶべつ)する発言、あるいはイスラム過激派のテロリストに絡めた暴言があったとの推測だ。
 第2の仮説は「家族を侮辱する発言」。ジダンは情熱や闘争心を内に秘めながらも家族、特に母親思いだとの定評がフランス国内にある。母親に絡めたののしりの言葉が吐かれれば、いかに温厚なジダンでも正義感から黙ってはいられないだろう、というわけだ。
 「イタリア代表は最初からジダンを怒らせて退場させる作戦だった」――。これもよく聞かれる話である。試合中、イタリア選手が接触プレーのたびに大げさに転がりまわる姿がみられた。「狡猾(こうかつ)なイタリアに善良なフランスはまんまとはめられた」との思いが背景にはある。
 「審判も悪い」。この手の不満も後を絶たない。退場を宣告した審判は現場を見ておらず、結果的にビデオでの映像が決め手になったのではないか、との不信感だ。
 8年前のフランス大会でイングランド代表のベッカムが退場宣告を受けたときに、ベッカムは「10人の勇敢なライオンと1人の愚か者」と英メディアから総スカンを食らった。今回のジダンに対しては擁護する見方が圧倒的だ。
 「ジズー!ジズー!」。10日、「レ・ブルー」の雄姿を一目見ようとコンコルド広場埋めた数千人の群衆のなかには声を枯らしてジダンの愛称を連呼する年老いたパリジェンヌの姿もみられた。レッドカードでさえもジダンの人徳を物語る「神話」の1ページに加えてしまうところにフランス国民のジダンへの底知れぬ愛情が表れている。(パリ=奥村茂三郎)

 イギリスの国営放送『BBC』のインタビューに答え、ジネディーヌ・ジダン代理人アラン・ミリアッキオ氏は、ワールドカップ・ドイツ大会決勝で退場処分を受けたてん末について、ジダンが近日中に語るだろうと述べている。

マテラッツィは相当ひどいことを言ったそうだが、ジダンは私に内容を教えてくれなかった」と同氏は言う。
ジダンは大変失望し、悲しんでいる。あんな形で現役生活を終えたくはなかった」