政治家小沢一郎の言葉

僕は、政治家は優れたアジテーターと思っている。言葉は言霊(ことだま=一般的には日本において言葉に宿ると信じられた霊的な力のこと。声に出した言葉が現実の事象に対して何らかの影響を与えると信じられ、良い言葉を発するとよいことが起こり、不吉な言葉を発すると凶事がおこるとされた)とも思っている。古今東西の有名な政治家は演説が上手い。大衆を魅了し、味方につかせることが権力を得ることにつがる。いくら優秀な政治家であっても野党でいるかぎり自分の思いを実現することは不可能だからだ。

 その点で昨日の民主党代表選挙における小沢一郎氏の政見演説は、2月から続いた民主党の不始末を一掃してしまう名演説であった。特に、最後の 最近、青年時代に見た映画「山猫」のクライマックスのせりふを思い出す。「変わらずに生き残るためには、変わらなければならない」。明日のため、子供たちのため、私自身を、民主党を改革しなければならない。まず私自身が変わらなければならない。民主党を改革し、日本を改革しよう。 はなかなか小泉首相には言えないセリフ(彼はワンフレーズの天才だけど)だろう。「まず私自身が変わらなければならない」は間違いなく今年の流行語大賞にノミネートされる。

 テレビでは、上記のところだけを切り取って放送しているが、全体を知りたくて、読売新聞に要旨が掲載されていた。冒頭に、「政権交代こそが日本の真の構造改革だ。私は、36年間に及ぶ政治家経験と思いの全てをかけ、再度、政権交代ののろしを上げたい」と意気込みを。本旨は、「日本は、でたらめな小泉政治の結果、屋台骨が崩れて迷走を続けている。立て直すには明確な理念と設計図が不可欠だ」とした。その理念とは、「共生」。人間と人間の共生は平和問題、自然との共生は環境問題、両面で日本がリーダー役を果たさなければならない。また、民主党の目指すべき社会は、もくもくと働く人、努力する人、正直な者が報われる社会。とした。そして、「設計図」については、13年前に執筆した日本改造計画を具体化させた著書を執筆中、新しい日本の設計図を示し、党内の同意を得たうえで、民主党の政権構想を高く掲げて統一地方選参院選で必勝を期す。とした。

 僕が懸念していた代表選挙についても、「代表任期切れの9月には、地方議員、サポーターも参加する代表選を実施する」と約束した。

 僕は党の指導者となる者は年令できまるとは思わない。若ければそれでいいのか、ベテランなら良いのか、そうではなく国民を納得させる言葉を持った政治家が必要なのである。政治家小沢一郎はこれまで多くを語ってこなかった。もちろん民主党にたどり着くまで色んな政党の代表はつとめてきたけれど、それは多分彼の持論の自民党に代わる政党交代が出来る「政党」づくりのために最低必要なポジションだったのであろう。あくまでも自分は器でないと思っていたのだろう。ところが、ようやく政権交代が視野に入った民主党が小泉旋風の前に惨敗した時点で覚悟は決まっていた。そう思う。

もうひとつ、記者会見で「中国に関する考え方」はと聞かれて、小沢一郎は「日中、日韓の隣国同士が本当に信頼し合い、新しい世紀を築くことが心底大事。中国の指導者も国民も同じ気持ちで日本と日本国民に接して頂きたい」と応えた。いい答えだ。


日本改造計画

日本改造計画

 


 民主党小沢一郎代表選出を受け、共同通信社が七日夜から八日にかけて実施した全国緊急電話世論調査によると、小沢民主党への期待は57・4%と過半数に達した。

 最も望む課題として「自民党との違いの明確化」を挙げた人が43・8%でトップ、小沢氏の掲げる対立軸路線は評価された格好だ。ただ、政権交代が実現すると思わない人は72・7%に上り、メール問題の対応にもたついた民主党への評価は依然厳しいことをうかがわせた。

 民主党の支持率は、メール問題の渦中だった二月下旬当時の11・3%のどん底から、19・9%まで持ち直した。対照的に小泉内閣の支持率が47・2%と、今月一、二両日の前回調査より7・3ポイントダウン、昨年八月以来の50%割れとなった。不支持は4・3ポイント増の39・9%。民主党代表選に世論の関心が集中したことが背景といえそうだ。

 小沢民主党に期待しないと答えた人は37・9%。望む課題では、自民との違いの明確化に次いで、「政権交代」(21・9%)で二位。「基本政策の一致」(17・0%)が続き、「挙党態勢の確立」は6・4%にすぎなかった。政権交代が実現すると思うとした人は21・3%にとどまった。

 内閣の支持理由としては「ほかに適当な人がいない」が25・7%で引き続き最多。不支持理由は「経済政策に期待が持てない」が23・9%で一番高かった。

 政党支持率は、民主党が上昇したものの、自民党は43・4%(前回比0・1ポイント増)と横ばいで、自民支持層を取り込むまでいっていない。このほか、公明党3・0%(1・5ポイント減)、共産党2・6%(1・7ポイント減)、社民党1・5%(0・7ポイント減)、国民新党0・3%(増減なし)、新党日本0・1%(0・3ポイント減)、支持政党なし27・3%(0・8ポイント増)。今、国政選挙が行われた場合の投票先は、自民党45・2%、民主党27・4%で、支持率と比べると接近した。