ベルばら 開幕

 ☆2006年2月10日(金)〜3月20日(月) 雪組宝塚大劇場公演 マリー・アントワネット生誕250周年記念 三井住友VISAシアター 宝塚グランドロマン『ベルサイユのばら』-オスカル編- 〜池田理代子原作「ベルサイユのばら」より〜  脚本・演出/植田紳爾氏。演出/谷正純氏。 解説=マリー・アントワネット生誕250周年を記念しての、名作『ベルサイユのばら』5年振りの再演。これまでにも様々なバージョンで上演してきたが、初演より31年の時の経過の中で、現在のバランスを考えて再構築。新場面やマリー・アントワネットが作曲した楽曲が登場するなど、新たな見所も多く、またキャスティングにおいても、各組からの特別出演など、話題満載の公演。オスカルは朝海ひかるさん。ロザリーを舞風りらさん。

 物語=先祖代々フランスを守る役目の家柄であるジャルジェ将軍家の末娘オスカルは、幼い頃より男の子として育てられていた。そして今ではマリー・アントワネット王妃付きの近衛士官として仕え、宮廷の夫人たちの憧れの的であった。一方、幼くして両親を失ったアンドレは、オスカルの乳母である祖母のマロングラッセがいるジャルジェ家に引き取られ、オスカルと共に兄弟のように育つ。
 栄華を誇ったブルボン王朝も国家財政は非常な危機にあり、そのための重税と数年来の飢饉も加わり、人民の間には不満が渦巻いていた。そのことを知ったオスカルは、ジャルジェ将軍やジェローデル少佐の反対を押し切り、王宮守護の近衛隊から人民を守る衛兵隊の隊長に転属を願い出る。物語はここから始まる―。
 衛兵隊の隊士たちは手に負えない連中の集まりであった。オスカルが女だと侮って反抗する隊士たち。しかし次第に彼らは心を開いていく。フランス国内はますます混迷を極め、人民の不満は募る一方で、それを力で押さえつけるため、オスカル率いる衛兵隊に出動命令が下るのは必至であった。
 オスカルの屋敷で小間使いとして働き、オスカルを姉のように慕っていたロザリーは、今では革命家ベルナールの妻となっていたが、オスカルの転属を聞き、その身を案じていた。
 平民議員たちは国民議会解散の命に従わず、会議を開いていた。ブイエ将軍は、この議員たちを追い出そうと衛兵隊へ出動を要請する。しかしオスカルは、国民に銃を向けることはできないとその命令を拒否する。そのためオスカルは官位を剥奪されそうになるが、ジャルジェ将軍の取り成しで何とか事なきを得る。ジャルジェ将軍は娘を男として育てたことを悔いていた。将軍はオスカルにジェローデル少佐との結婚を勧める。
 オスカルの結婚話を聞いたアンドレは絶望する。アンドレは、身分違いの恋と知りながらもオスカルに想いを寄せ、影のように寄り添い生きてきたのだった。アンドレはオスカルに毒酒を飲ませ、自分も死のうとする。しかし自分勝手な思い上がりに気付き、危うく思い止まる。オスカルはアンドレの秘めた愛情の深さを知り驚くが、アンドレの存在の大きさを改めて思い知る。遂に国王からのパリ出動命令が下ったその夜、オスカルはアンドレの想いを受け入れ、二人は結ばれるのだった。
 戦端は切られた。オスカルは貴族の称号を捨て、フランスのため、衛兵隊と共に国王軍と戦う決心をする。その戦闘で、まずアンドレが銃弾に倒れた。その深い悲しみを振り切ってオスカルは指揮する。しかし、そのオスカルにも銃弾が。「バスティーユが落ちたぞ!」という民衆の歓声を聞きながら、オスカルは静かに息絶えるのだった…… 。


資料=「宝塚歌劇支局」 

 朝海ひかるさんのオスカル役が話題の雪組公演「ベルサイユのばら〜オスカル編」(植田紳爾氏脚本、演出、谷正純氏演出)が2006年2月10日、宝塚大劇場で初日の幕をあけた。

 マリー・アントワネット生誕250年を記念した再演シリーズの第2弾として上演されるオスカル編。前回の星組公演は大入り袋がでる人気で、各組トップスターがアンドレ役でゲスト出演する今回の雪組公演も前売りチケットは完売、この日も当日券を求めて早朝から長蛇の列が出来た。

 さて、舞台は沙央くらまさん、大湖せしるさん、蓮城まことさんの3人の大型?小公子が登場するオープニングから星組公演にもまして豪華絢爛。中幕が開くと白バラが咲き乱れる中、湖月わたる扮するアンドレを中心に同じ軍服の貴城けいさん、水夏希さんらばらの青年たちのダンス、続いて大階段に朝海オスカルが登場、白いドレス姿の娘役陣とのダンスへと展開。そしてひときわ豪華な白いドレス姿の舞風りらさんも加わって、朝海さん、湖月さんの3人が中央にラインアップ、しゃんしゃんをもってのパレードとなる。いきなり度肝を抜く華やかさだ。

 物語はオスカル編の定番、ジャルジェ家の庭園でオスカルの妹たちが、アンドレがやってくるのを待っている場面から始まる。少年時代のアンドレ愛原実花さん、オスカルは早花まこさん。早花がなんとも愛らしい。

 フェンシングの練習をしながら一気に少年から大人に成長、オスカルが近衛隊から衛兵隊に転属した後、革命前夜まで一気に飛ぶ。

 そして、オスカルの衛兵隊での水扮するアランはじめ、荒くれ男たちとの交流と平行して、幼なじみのアンドレとの愛、加えてジャルジェ家の小間使いロザリーのオスカルへの憧れに似た熱い思いが語られていく。

 今回の大きな特徴はロザリーのオスカルへの想いを前面にだしたことで、新曲「乙女の祈り」に加え「愛の幻想」というダンスシーン、さらに2幕、ベルナールの妻となった後にもロザリーのオスカルに対する愛の告白がある。

 しかし、ロザリーのオスカルへの想いは本筋とはあまり関係がなく、これによって肝心のアンドレとオスカルの愛のドラマがやや薄まった感があるのは残念。


 一幕ラスト、空飛ぶペガサスに乗った朝海オスカルの宙乗り場面は、アンドレの幻想として登場する。なかなかの迫力だが、ドラマの上で効果があったかどうかは別問題だ。

 2幕はパリ出動を決意するオスカルと行動を共にする決意を固めるアンドレの愛、そしてバスティーユの戦いと続き、ラストは馬車で天国へのぼるオスカルとアンドレの幻想的な場面で幕となる。星組公演が歴史編とすれば、雪組公演は劇画編。軽いセリフや大仰な演出がひたすら漫画チックだ。しかし、ここまで徹底してやられるとそれが「ベルばら」なのだと改めて想う。

 朝海オスカルは、軍服を着ている時と脱いだ時で大きく変化する演技が絶妙で、星組公演にゲスト出演した時よりさらに魅力的。星組公演でフェルゼンを好演した湖月さんもその大きさ、包容力の豊かさでやはりアンドレがよく似合う。

 他に荒くれ男アランの水さんが適役で場面をさらう。ジェローデルの貴城さんも気品ある演技でぴったりあったが、前半にほとんど出番がなく、やや手持ち無沙汰の感。

 今回、一番得をした?ロザリーの舞風さんは、歌、ダンスと持てる力を最大限に発揮している。

 ほかに壮一帆さん、音月桂さんといった期待の男役たちは衛兵隊員の一人。アランの妹役ディアンヌの山科愛さん、盲目の少女イザベルの晴華みどりさんら娘役陣の健闘が目立った。