ジーコ監督背水の試合

 本夕のバーレン戦を負けてしまうとほぼワールドカップ出場は絶望です。4年に1度の祭典というより4年間を通じて、本選にでるための戦いに胸があつくなります。ジーコ監督も今日の試合に監督の座を賭けてのぞむ決意であり、選手もコーチもスタッフもそしてサポーターと国民がひとつになってドイツへ行く夢をかなえたい。

試合前日2005年03月29日 バーレーン代表ジドカ監督会見より

■日本が背水の陣で臨んでくるのは分かっている

バーレーンにとってアウエーの試合ですし、日本はアジアカップで優勝している強敵です。さらに今回はテヘランで負けを喫しているので、背水の陣で臨んでくるのは分かっています。大変厳しい試合にはなると思いますけれど、全力を尽くしたいと思います。

――練習メニューを大まかに教えて下さい

 25分間公開で練習し、その後30分間練習しました。以上です。この期におよんであまり多くのことをしたいとは思いませんでした。芝に慣れるということ、雰囲気に慣れるということ、そういうリラックスした気持ちでやっていきたいと思いましたので、それほど根を詰めた練習をしたわけではありません。とにかく、このスタジアムは素晴らしいと思います。私が知っている中で一番素晴らしいスタジアムではないでしょうか。 とにかく、明日は楽しみたいと思います。

――今回バーレーンの監督をするのは2回目ですが、昔と変わった点は?

 以前は2002年ワールドカップの予選の時でしたが、そのときもすごく若い選手が多かったので、それが4年、5年たって、経験が増えた、経験値が高くなったという部分だけは変わったと思います。そのぶん経験を積んでいい選手がたくさんいると、そういった印象を持っています。

――チームを引き継いで、1週間そこそこと時間がないですが、どういうことにポイントを置いてチームを作ってきましたか?

 以前このチームの監督をしていたので、たいていのメンバーは顔見知りですし、よく知っていて気心も知れているので、まったく新しいというわけではありません。心掛けたことは、22、3人の選手が来ていますが、そのメンバーを取りまとめること、マネージャーやトレーナー、そういったスタッフ全体をとりまとめること、そういうチームのとりまとめに心を配りました」

■出場停止の2人が抜けた影響はない

――現在、日本ではチームのフォメーションについて議論しているが、システムというものをどう考えていますか。また、それは監督が決めるものか選手が決めるものなのか、ご意見を頂けますか

 このシステムがいいとか悪いとか、そういうことではなくて、選手には個性があるし、選手にも監督にも意見があります。そういうものを考慮しながら決めていくものであり、どのシステムがいいとか、どちらが決めるべきという問題ではないと思います。

――北朝鮮戦の先発メンバー2名が出場停止になったことの影響と、日本ではどの選手に注意しているか教えてください

 これはチームプレーなので、選手が抜ければ補充するだけのこと。新たに11人を選んで最善を尽くします。2人が抜けた影響はありません。
 日本人選手は皆、素晴らしい。すべての選手が得点をする可能性を持っているので、すべての選手を警戒しているといってもいいでしょう。

――東アジアで2連戦となりますが、チームの疲労感は? また明日は気温が低くなりそうですが、寒さ対策は

 平譲は非常に寒かったのですが、その中で勝ったので、寒さは問題ないと思います。疲れたとか疲れてないとか、そういうことは問題外です。ベストを尽くすのみ。そんなことには注意も払っておりません。

ジドカ監督は賢いなと思う。質問に対して巧妙にはぐらかし、かつ日本を持ち上げ不要な敵対心を抱かせないようにしている。
対してジーコ監督は、どうも南米人の気質なのか、あけぴろっげです。でも勝てばいいんです。

バーレーン戦前日 ジーコ監督会見

■日々全力を尽くす。ゆえにプレッシャーは感じていない

――バーレーン戦に向けての抱負をお願いします

 この数日はしっかりした内容で、気持ち的にも内容的にも、非常にいい練習をこなすことができた。明日は久しぶりにホームに帰って来て、確実に勝ち点3を取るサッカーを心掛けたい。選手も、気持ち的に非常に強いものを持っているので、全力を尽くして戦う。予選すべてが大切な試合だが、特に明日は、しっかりした内容で確実に勝ち点3を取りに行くサッカーをしたい。

――昨日の練習試合では、中田英が福西と同じラインでプレーしていたが、もっと上がっていった方が中田英のオフェンシブなセンスが生かせると思いませんでしたか。また、それについて中田英選手と話し合いはしなかったのですか

 話し合いは別に持たなかった。必要ないと思ったし、昨日の彼(中田英)の動きも良かったと思う。彼は非常に攻撃的な選手だが、1.5列目や2列目にポジションを取って常にプレーするという必要はない。今の彼の良さを出すには、もう一つ後ろのラインから、昨日もいいパスやタイミングのいい上がりを見せていた。すごく満足している。彼の良さをチームに結びつけるのには、非常にいい形だったと思う。だから話し合いは持たなかった。

――イラン戦ではプレッシャーを感じていないと仰っていましたが、今回は絶対に勝たなければいけない試合で、どれぐらい、どのようなプレッシャーを感じていますか

 正直に言って、まったくプレッシャーを感じていない。日々、自分は最大限の仕事をしていると思っているし、全力を出し切っている。就任した時からだが、予選であれフレンドリーマッチであれ、自分の全力を尽くすということ。果たして全身全霊を込められたか一日、一日確認する意味でやっている。偽りのない日々を過ごしている。
 ただ、これはあくまで私が感じていることであって、私は雇われの身。協会の方には、日本のために最適な人物を選ぶ権利がある。自分はまったく気にしていない。雇われている限りは、全力で期待に応えたい気持ちで毎日過ごしている。契約書にサインしたときから、より重要な任務を負っていることは理解している。ただ2年半やらせていただいて、ここまでチームが来ていることは大きな自信になっている。これからも変わらない気持ちで、正直に仕事をしていきたい。

■前回の対戦とはシチュエーションが違う

――前回のバーレーン戦は点の取り合いになりましたが、今回も同じ展開を想定していますか。また相手チームの若さはどう見ていますか

 相手が非常に若いということで、年齢的なものより運動量が豊富で縦の速さがあるチームと考えている。彼らの長所を消すためには、彼らが得意としているものを高い位置からやらせないこと。今日もいくつか練習に盛り込んだが、非常に特徴のあるチームなので、まずはそこを消していくをチームとして考えている。
 あとは経験の問題。前回の対戦とはシチュエーションが違う。あの時は3バックで始めて、遠藤が退場して4バックにして最終的には4−3で勝った。皆さんがよく気にしている3バックなのか4バックなのかということだが、どちらにした時に実際に勝利が転がってきたか、ひとつお考えいただきたい。

――昨日の練習試合では、後方の中田英がゲームメークする形で、中村はFW的に動くシーンもあったが、明日も(中村が)フィニッシャー的な働きを期待するのですか

 それぞれ見方は違うと思うが、自分としては、中村の役割はそれほどいつもと変わらないと思っている。というのは、昨日は高校生が相手だったので、チーム全体的に押し上がった中で比較的トップに近い位置にいたように見えたのだろう。実際に明日になれば、中村も中田英も経験からどこで自分を生かせるか察知して動ける選手。こぼれ球を拾える位置、あるいは自分のスキルを生かしてエリアの中に行くかもしれないし、試合の状況によってそれぞれ異なってくると思う。
■大きな武器であるセットプレーに時間を割いた

――イラン戦でCKが8本もあったが、1点も取れませんでした。セットプレーは試合を左右する重要なポイントになると思いますが、明日はもっと正確なものが期待できるでしょうか

 セットプレーは自分たちの大きな武器だし、これだけリスタートから点を取っていれば、相手も研究してくる。ボールのコースや動きを封じる策を取られていることは確かだ。だからこの数日間を利用して、意識的なものと、リスタート時の動き、ボールを蹴る人間と受ける人間の呼吸も含めて時間を割いてきた。毎回狙っているが、今回またリフレッシュした気持ちで点を取るべくやってくれると思う。

――セットプレーのキッカーは、練習どおり中村ですか

 選手とも話し合ったが、左右とも中村で行く予定。というのも、選手もどのボールを受けたいかということで、普通は右からだと選手に向かってくるボールを望むことも多いが、今回はいいボールを蹴っているので、両方とも中村でという声があった。

――「確実に勝ち点3を取る」サッカーをするために何が一番重要と考えていますか。また試合前に、選手にどのように伝えるつもりですか

 シンプルなことで「バーレーン以上に点を取る」ということ。これに尽きる。

――今日のセットプレーの練習の後で11人の選手に数分話されていましたが、どんな内容だったのでしょうか

 彼らは非常に引いて守りに人数をかける。彼らの強みは、カウンターの速さとフィニッシュの精度。自分たちが攻めていた時に、切り替えの早さと同時にいかに組織的にポジションを取りながら戻れるかということ。ただ戻るだけでは、一方に選手が固まり、相手に逆を突かれてしまう。それぞれが、しっかりとポジションを埋めていく、組織的な速い戻りが必要だということを確認した。

■3バックでも4バックでも、流動的に対応できるのが理想

――3(バック)か4か、どちらが勝っているか考えてほしいということですが、ジーコ監督はどちらが勝てるシステムとお考えですか

 根本的なやり方として、主力である選手がやりやすい状況を考える。もちろん自分の理想的な考えはあるが、まずは選手と話し合う。理想は4枚だと思うが、最近のサッカーは研究し尽くされた場合、裏を突くために4枚から3枚、3枚から4枚と流れの中で形を変えたりして、それが功を奏している部分も多い。それが理想だと思う。一つのシステムでしか戦えないというのは、世界に出た時に弱さを露呈することになる。そういった意味では、今の選手たちは非常に順応してくれている。だからシステムを変更した時に結果が出たりしている。

 選手たちに望みたいのは、これを絶対にと押し付ける気持ちはまったくない。自分が彼らに望んでいる中で、どのシステムでもポジションでもやれるようになるユーティリティな選手が数多くいること。それが世界への道が近くなるということ。どうしても「自分はこれしかできない」となると、戦法が読まれたときに打つ手がない。これでは非常に少ないパフォーマンスしかできない。今の選手はだんだんそれを理解してくれている。

 ヨーロッパから選手を呼べない時、国内組だけでやっている時に、理想は4枚と思ったが、彼らの中で一番慣れているのは、当時ほとんどのクラブがやっていた3バックだった。試合で結果を出さなくてはいけないとなると、当然3バックを導入することが最適だと思ったので、そうした。

 ただ、うちの場合は3バックといっても、ちょっと違う。ウイングバックが絞るので、変形的な4バック。選手がよく理解してくれて、ピッチで実践してくれた。おかげで今は流動的に試合の流れを変えることもできる。自分が信念を持って言えるのは、絶対に一番大切なのは選手の質だということ。システムで勝てるような時代ではなくなったということは、確実に言える。どちら(のシステム)でもスムーズに行える選手が1人でも多くなることが日本全体の底上げのポイント。ただし、4か3かで皆さんが議論するのはうれしいことだと思う。それだけ関心がある。多くの人が意見を述べる場、それを職業にしていくことができる場をサッカーが与えてくれているのは、非常に有効だと考えている。