組織戦ができなかったのが敗北の原因

監督ジーコ、語る

監督ジーコ、語る

2005年03月26日 2006FIFAワールドカップ・アジア地区最終予選 イラン戦後 ジーコ監督会見

内容は決して悲観すべきものではない

(以下、イランの記者からの質問)

――キャプテンが中田英から宮本に代わったのはなぜか

 中田英は1年間の代表チームのブランクがあったわけですが、3日前に彼の方から「今までの流れどおり、宮本がキャプテンのほうがチームとしてもよいのではないか」ということで、私もそれに同意してこういう形になりました。キャプテンが変わったということが、今日の試合結果に影響したわけではないと思います。

――今日の試合についての感想は?

 この試合は、われわれが当初思っていたとおり、決して簡単ではない、難しい拮抗(きっこう)した試合になったと思います。イランは非常にいい形を作りましたし、日本もいい形を作った。ただ、イランの方がひとつ多くゴールに結びつけたということです。内容に関しては決して悲観すべきものではないと思いますので、これからまた切り替えて次に臨みたいと思います。

――2試合を終えて(1勝1敗となり)ワールドカップに出場できるチャンスはあると思うか?

 2試合を終えた時点で、日本、イラン、バーレーンの3チームが競り合いを始めた感じですが、現時点ではまだ何も決まっていません。日本としては、これからの試合を確実に勝つことで十分なチャンスがあるわけですし、イランとの直接対決もまだ残っています。たとえ現時点で1勝していなくても、可能性は十分にあるわけで、まだ2節終わっただけで、ここで頭を下げる必要はないし、どんどん積極的に前へ進んでいくつもりです。自分としてもこのチームを信じていますので、必ずやワールドカップに出場できると確信しています。

――今日は素晴らしい試合で日本の内容も良かったと思うが、この試合であえて中田英を招集した理由は?

 ご指摘のとおりこの試合は日本の内容が良かったわけですが、それと同様に中田の動きも良かったと思います。今回彼を招集したポイントとしては、彼は長い間けがに苦しんでいたわけですが、コンディションが戻りつつあること、現時点で中田を呼び戻すということが日本にとって非常に有益である、と判断したからです。

 私が就任して以来、彼とは何試合も共に戦ってきたわけですが、非常にいいポジティブな面を日本のチームに与えてくれましたので、これからも彼の力を、ひとつの歯車としていいものをたくさん出してくれると信じています。ですから私の気持ちとしては、非常に彼はよくやってくれたと思いますし、今後も引き続き日本のために全力を尽くしてくれると確信しています。

――あなたは、82年ワールドカップの印象が強い。当時のイメージからすると、今回、笑顔が少ないのが気になるが……

 今回はイランの皆さんに大変な歓迎を受けまして、国民の皆さんが自分を好いてくれていることについて、心から感謝いたします。(日本とイランの)距離的な問題から、皆さんがそこまで私を慕ってくれているとは思いもしなかったので、本当にびっくりして感激しています。ただ、ご指摘のように私の顔が寂しげだとか、表情が湿り勝ちだとかいうことですが、それはやはり皆さんが私の日常をご存じないからだと思います。実際、仕事の間は真剣に取り組んでいるためこういう顔になりますが、仕事を離れたら――今は非常に幸せを感じているときですし、特に日本のサッカーがレベルアップしている段階にあって、ワールドカップの最終予選を戦っているということに喜びを感じております。ですから、このままいい仕事を日本のためにしていきたいと思います。

バーレーン戦はさらに攻撃的に、勝ち点3をもぎ取りに行く
(以下、日本の記者からの質問)

――今日のイランは、初戦のバーレーン戦とは異なるシステムだったが、それに対してどう対処しようとしたのか?

 イランのバーレーンとの初戦ですが、そこで勝ち点1を取れたというのは、アウエーで戦うことを考えれば非常にいい数字だと思います。今回の第2戦はホームということで、彼らの力をもってすれば、できるだけ高い位置でわれわれのボールを奪ってくるというのは予想していました。実際ふたを開けてみると、その通りになって、われわれの印象以上に中盤より前からどんどんプレッシャーをかけてきましたが、ただし自分たちがそれによって(サッカーの)内容が変わったかというと、それはありませんでした。選手たちとの確認の中で、イランは前に出てくるということを確認していました。

 ただ2つの失点に関しては、どちらもクロスからいったん選手にボールが当たってコースが変わってしまって、そのこぼれ球が相手に落ちてしまってから決定的な仕事をされてしまったという部分もありました。やはり彼らの持っている技術、経験といったものが得点に結びついたのだと思います。ただ、自分たちもアウエーの試合ですので、勝ち点3を取れれば非常に素晴らしい結果、また勝ち点1でも好都合だったんですけれど、攻めはしっかりできていたし、チャンスも作り出していたんですけれど、得点には至らなかったということです。

――2トップのうち、ボールが止まらない不調の高原を残して玉田を下げたのはなぜか。また2点目はセンターバックの中澤が引っ張り出される形になってしまったが、それについてはどう見るか?

 まず高原ではなく玉田を代えた件ですが、玉田の場合、一瞬のダッシュから縦へ突破するのが持ち味なのですが、今日はその良さが出ていなかったと思います。前半は滑っている部分が多かったので、足元がゆるいというか良さが発揮できない状態が続いていたので、これは代え時だろうと。それで、同じ速さを持った柳沢を投入したわけです。
 高原を残したのは、やはり彼が持っている一発、それと経験とで流れを変えてくれるのではないかという見解によるものです。確かに本来の高原に比べて良さが引き出せませんでしたが、そのあたりのことを期待して玉田を下げました。

 それと(2点目の失点については)、実際にああいう形でDFが1人引き出されてしまいました。実際にセンターバックが引き出されるのは悪い形ですが、あの場合カバーリングということを考えると、中澤が出るのは正解だったと思います。ですから不運も重なりましたが、そのあたりで確実にゴールを決められたということで、これは3バックでも4バックでも同じことで、やはりボールが少し変化するとあり得ることです。アジアカップのヨルダン戦でも3バックで戦っていましたが、同じような形で引き出されて失点したということもありました。

――今日の最大の敗因は? それから日本でのイラン戦の対策は?
 イランとはこれまでも3勝3敗4引き分けということで、非常に拮抗したチーム同士の戦いということで、敗因としては、ウチが1ゴール、相手が2ゴールを挙げてしまったということです。スコアどおり、非常に内容も拮抗していましたし、イランもホームで全力を尽くし、ウチも全力で戦ったわけですが、やはりスコアがすべてを物語っているということですね。
 ホームでのイラン戦ですが、これはその前のバーレーン戦をまず考えるということで、イランをどうするかということはまだ考えていません。今度もバーレーン戦はホームなので、やはり多少のリスクを冒してでも前からボールを取りに行ってプレッシャーをかけながら、さらに攻撃的になるような形で勝ち点3をもぎ取りにいく、ということです。イランについては、(最終予選の)最後に考えたいと思っています。

 昨日は見ていて全然勝てる気がしなかった。中田は確かに素晴らしい選手だが、あまりにも「冷たい」。小野や中村にはパスでも相手を活かすパスをするけど、中田には「俺はここまでボールを持ち込んだのだから後はお前ら決めろよな」「あぁミスしやがった」的に見える。
NAKATA―中田英寿イタリア戦記 (朝日文庫) 
 日本としては最強の布陣で臨んだのだから、イランが強かったから負けたといえる。しかし、日本の特色の中盤に相手からボールを奪い、前線へ球を放り込んで、コーナーを得てセットプレイで点を取るというひとつの戦術を4バックにしてしまい(ジーコの責任)中盤でボールが奪えず、攻撃において組織的な動きが出来なかった。まさにイランの高い技術力に裏打ちされた個人戦のわなに陥ってしまった。 
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