いよいよ決戦へ

 昨日、フジ側が思い切った手をうってきた。以下、ヤフーニュースを引用
 しかし、この行為が許されるなら、株主の権利は著しく侵害または不安定になるわけだから株式の公正性は保たれなくなる。株式を上場している限り、会社は「株主」が主体とならざる得ない。フジが60%を超す株を取得すれば上場廃止も視野にはいってくる。それに、某与党政治家が発言していた「電波(この場合はニッポン放送)は国民のもの」ということと矛盾するのではないか。また、放送局がこのようなマネーゲームを仕掛けてもいいのか?さまざまな問題が多い「新株予約権の発行」である。

ニッポン放送株をめぐるフジテレビジョンライブドアの争奪戦で、フジ側が一気に勝負に出た。新株予約権の発行で買収者の持ち株比率を引き下げる“ポイズン・ピル”の日本初の本格的な活用。実現すれば、ニッポン放送は当初構想通りフジの子会社になる。しかし、ライブドア側が発行差し止めなどの法的措置を取るのは必至で、すべてが白紙に戻る可能性もある。フジにとっては、泥沼の長期戦に陥る可能性をはらんだ「賭け」だ。
 ◇リスク抱えた作戦 泥沼の法廷闘争にも
 「言いたいのはただ1点。フジサンケイグループに残ります」。記者会見で、ニッポン放送亀渕昭信社長は繰り返した。ライブドアの傘下に入れば、グループ各社はニッポン放送との取引をすべて打ち切るとも。そうなれば「ニッポン放送企業価値に甚大な悪影響がある」(亀渕社長)。会見では、「(ライブドアの)支配権を奪うための新株予約権は商法違反ではないか」「(市場価格より低い価格での割り当ては)特定の者に有利な条件になるのでは」との質問も出た。だが、亀渕社長は「普通は株主が変わっても企業価値が変わらないが、今回は違う。グループにとどまれば価値を維持向上できる」として問題がないことを強調した。
 フジ側が法廷闘争のリスクを冒してまで思い切った策を取ったのは、ライブドア過半数を握らせないとの強い意思表示と言える。フジがTOB(株式公開買い付け)の目標とした25%超を確保して、ニッポン放送からの議決権を消滅させたとしても、ニッポン放送ライブドア傘下に入れば、フジとしてはニッポン放送をグループから切り離して本体を防御せざるを得なくなる。また、TOB価格の引き上げでできるだけ多くの株を取得する選択肢もあったが、その場合は市場価格も暴騰し「シーソーゲームになる恐れがあった」(フジ関係者)。 フジがTOBで25%超を獲得し、さらに新株予約権の行使で50%超を取得するのに必要なのは1380億円。1月のTOB発表の時点で最大1700億円を想定していたため、資金の手当てはできているという。
 一方、上場廃止などによる既存株主への影響について、ニッポン放送の天井邦夫副社長は「(市場価格が下がっても)TOBに応じれば5950円で売却できる」として、不利益にはならないと説明した。しかし、村上世彰氏が率いる投資ファンドなど他の株主が今後、TOBに応じるか、法的措置に踏み切るかなど、動向が注目される。
 ◇「既存株主犠牲に」批判多く
 フジとライブドアが市場を舞台に激しい株式の争奪戦を展開する姿は、株式の持ち合いでなれ合いの関係が続いてきた日本の企業社会が、市場原理重視の新しい時代に入ったことを示している。新株予約権は、あらかじめ決めた価格で株式を購入できる権利。02年4月施行の改正商法で新設された。当時はストックオプション(自社株購入権)の使い勝手をよくする狙いがあったが、企業の再編劇が相次ぐ中、敵対的買収への対抗策としても注目されるようになっている。 しかし、新株予約権の発行には「既存株主を犠牲にした現経営陣の保身策で、株主公平原則に反する」という批判も多い。買収の動きが明らかになってから、取締役会決議だけでできる予約権発行を認めれば、事実上、敵対的買収の道を閉ざすことにもなる。市場関係者からは「事前に新株予約権を設定しておくならまだしも、買収されそうになってあわてて発行するのは経営者の怠慢」(大手証券)というフジサンケイグループに対する厳しい声も出ている。
 経済産業省の「企業価値研究会」(座長・神田秀樹東大教授)は現在、合法的な自衛策のあり方を示す指針作りを検討中で、▽企業価値を上げるために合理的▽株主総会の了承を得る――ことなどを条件に、自衛策を容認する方向だ。
 今後、発行差し止めを求めるライブドアとの間で、▽フジサンケイグループに残ることがニッポン放送企業価値を最高にするか▽村上ファンドや一般投資家など既存株主の理解を得られているか――を巡る激しい論争が繰り広げられることは確実だ。
 ◇ライブドア 徹底抗戦
 ライブドア堀江貴文社長は23日夜の会見で「突拍子もなく、不当。一般投資家を混乱に陥れる」と述べ、新株予約権の発行差し止め仮処分申請などで徹底抗戦する構えを示した。同社は「想定していたフジサンケイグループの最後の手段。弁護士からは法的に無効との判断を受けている」(ライブドア幹部)とし、特定株主の支配権の排除を目的とした新株予約権の違法性などを訴えていく構えだ。
 ライブドアは今月8日、ニッポン放送株の35%を時間外取引で電撃的に取得し、筆頭株主に躍り出た。フジテレビからの同放送株のTOB(公開買い付け)の申し入れも拒否して買い増しを続け、21日時点で議決権ベースで40.5%を保有した。だが、同放送が新株をすべて発行すれば、保有比率は16.6%まで低下。経営への発言権はほとんどなくなり、堀江社長が描く「インターネットとテレビ・ラジオ・新聞・雑誌との連携によるビジネス構想」は全面的な見直しを迫られる。
 さらに、ニッポン放送株が大幅下落したり、上場廃止になれば、米国系のリーマン・ブラザーズ証券からの調達資金などの中から、これまで株取得に投じた約700億円のかなりの部分が損失になる恐れがある上、相乗効果を狙った事業収益も望めなくなり、グループそのものの足元が揺らぐ恐れも出てくる。
 <企業のM&Aに詳しい保坂雅樹弁護士の話>
 一般論だが、新株予約権を発行する場合、それが定款で定める株式数の範囲内で、しかも(時価に比べて有利な価額で発行する)有利発行でなければ、株主総会を開催する必要はない。このため、買収を仕掛ける側(ライブドア)が対抗するには、株主が不利益を被ったとして、商法上の差し止め請求を行うしかないだろう。
 通常、新株予約権を発行するのは資金調達のためで、もし「特定の株主の議決権を下げるため」ということが主な目的であれば、特定の株主の不利益になるので、裁判所に不公正と判断される恐れはある。このため、買収を仕掛けられた側(ニッポン放送)は「特定の株主の不利益になっても、会社全体にとって、より大きな利益になる」と主張することになるだろう。いずれにしても発行されてしまえば、それを事後的に差し止めるというのは困難なので、(事前の)差し止め請求が勝負になる。
 <ポイズン・ピル
 直訳すると「毒薬」で、企業が敵対的買収を抑制したり防衛するための手段をさす。買収者が一定割合の株を買い占めた場合、その他の既存株主に対して新株を発行、株数を増やして、買収者の議決権割合と持っている株の価値を下げる仕組み。米国では80年代半ばから導入が進み、約6割の企業が導入している。対抗措置として「著しく不公正な発行で、不利益を被る株主は差し止めを求めることができる」(商法280条)との規定がある。昨年、三菱東京フィナンシャル・グループ(FG)とUFJホールディングスが三井住友FGの敵対的買収を防ぐため導入したケースがあるが、発動はしていない。

ホリエモンはこれに対抗するため裁判に持ち込み、さらにニッポン放送株を買い増ししていくだろう。村上ファンドがいつまで「洞ヶ峠」をきめこむのか、そこが焦点かもしれない。上場廃止は損とみればフジあるいはライブドアに株を売却するだろう。
 ホリエモンマネーゲームはもはやゲームではなく死活問題となってきた。