政治: 民進党分裂の前兆?


プレジデント オンライン

 8月8日、民進党細野豪志衆院議員が、民進党に離党届を提出した。旗を立てなければ人は集まらない。細野氏は離党の理由について、「政権交代可能な政党を作る」と話している。だが現時点での同調者はゼロ。民進党は分裂するかもしれないが、そのとき野党勢力の中心になるのは、細野氏ではなさそうだ――。


共産党との共闘」を批判するが…

 8月8日、民進党細野豪志衆院議員が、民進党に離党届を提出した。閣僚も経験した大物議員だが、党内からは冷ややかな目でみられていると聞く。なんといっても、細野氏に同調して離党する議員がゼロというのが大きい。自身の派閥である「自誓会」には約10人の国会議員がいるはずだが、ともに離党するという議員はいなかった。


 なぜ細野氏は離党するのか。細野氏本人は、憲法改正や安保法制への対応、そして「政権交代可能な政党を作る」などと説明している。先に離党している長島昭久衆院議員も同様の理由を挙げていた。細野氏も長島氏も民進党内では右派の政治家として知られている。民進党共産党との共闘を党方針として進めており、右派である長島氏や細野氏は党内にとどまることを受け入れられない、という受け止めが一般的なようだ。


 しかし、そうした理由は苦し紛れのものだろう。なんと言っても今回の離党は同調者が今のところゼロなのだ。仮に自誓会から数人が追随したとしても、小政党にしかならない。政権政党には程遠いだろう。あるいは細野氏に追随しやすくするための「打ち上げ花火」という理解もできるかもしれない。旗を立てなければ人は集まらないのだから、派手に打ち上げるというのは永田町ではよくある話だ。さて、最終的に何人の同調者が出るだろうか。大規模な政界再編が起きて、その中核になる、という話であればまだ理解できるが、現在はそういう状況ではない。


「決められない男」と揶揄も


 では、なぜこの時期なのか。これは細野氏が説明するとおり、「代表選前に」ということが大きいのだろう。代表選を経てからの離党では、新代表への不満から離党したという話になってしまい、それでは何か不満があればすぐ離党してしまう人物のように見えてしまう。一方で、仮に細野氏の支持する候補が代表になれば、退路を断たれてしまうことになる。自らが立候補すれば、「敗れて離党」という筋道も立てられるが、そこまで徹底するのはリスクが大きすぎると考えたのだろう。


 細野氏については離党の機会はこれまでもあったように思う。ひとつは代表代行を辞任したタイミング。蓮舫執行部に反旗を翻しての辞任であり、その勢いで離党することも可能だったのに、そうしなかった。もうひとつは、静岡県知事選への出馬が取り沙汰されたタイミングだ。細野氏が離党し、自民党からの推薦を受けて出馬すれば勝てる、との下馬評もあったが、結局決められずに出馬を逃した。


 こうした経緯をふまえて、細野氏は一部から「決められない男」と揶揄されている。そんな細野氏が、ついに決断した。否、決断せざるをえなくなったということなのだろう。


 では、今後はどうするつもりなのか。小池知事が事実上率いる都民ファーストの会との連携も話題に上っているが、端的に言って、細野氏と都民ファーストとの連携は当面ないだろう。


「新党今はひとり」とでも名乗るしかない


 まず、小池知事が都政そっちのけで軽々に動くようなことはない。都議選で圧勝し、数は確保したが、新人議員ばかりで足元をしっかり固められたとはまだまだ言えない状況にある。そうした中で軽々に国政へ本腰を入れるようなことをすれば、都政がぐらつくとともに、都政をないがしろにする知事として厳しい批判にさらされる。なんといっても、都民ファーストは小池知事の人気と風で成り立っている、ある種バブルのようなものだ。


 結局、細野氏は当面、単独で行動するしかないだろう。党という制約がなくなり、連携先はどこでもありだ。細野氏は細野氏なりに目星をつけているのかもしれない。それがあっての「政権交代可能な政党」ということになれば、与野党を巻き込んだ大規模な政界再編が念頭にあるのかもしれない。


 しかし、繰り返すように自身の派閥である自誓会からの同調者はゼロ。つまるところ細野氏の希望的観測ばかりが先行して、実態が伴っていないということなのではないか。そうなると、細野氏は単独行動どころか完全に独りぼっち。かつての山本太郎参院議員にならって「新党今はひとり」とでも名乗るしかない。


 筆者(政策コンサルタント 室伏 謙一氏)には、2009年1月に自民党を離党した時の渡辺喜美参院議員と重なるようにみえる。それでも当時の渡辺氏には数人とはいえ同調者がいた。これでいつまでたっても細野氏への同調者があらわれないということなれば、本当に悲惨である。


 それでは細野氏が離党した後の民進党はどうなっていくのか。結論から言えば、党の再生や支持率回復は極めて困難だろう。代表戦では、前原誠司衆院議員と枝野幸男衆院議員の一騎打ちになると言われているが、どちらが勝っても、液状化している民進党をまとめることは容易ではない。これは新代表の能力や資質の問題というより、民進党、特に旧民主系の体質に起因する。


3分裂すれば「元の木阿弥」か


 考えられる方向性は、党の分裂だ。代表選を経て、これまで押さえられていた不満が一気に表面化し、前原氏を支持する右寄りのグループ、枝野氏を支持する左寄りのグループ、そして代表選への立候補が取り沙汰されているもののいまだに態度を明らかにしていな江田氏を中心とする旧維新系グループの大きく3つに分かれていくのではないか。分かりやすい枠組みに当てはめて表現するのであれば、旧日本新党系、旧社会党系、旧維新・結い(みんな)系の3つということである。しかし、これでは「元の木阿弥」だ。


 数カ月先には民進党という名前はなくなっているかもしれない。野党勢力が小政党に分裂したとき、だれがキーパーソンになるのか。私の見立ては別稿で明らかにしていきたいが、少なくともその中心は細野氏ではないはずだ。


anan ( アンアン ) 2017/08/23 [ 愛とSEX ]

anan ( アンアン ) 2017/08/23 [ 愛とSEX ]