ロケット: 今回は通信機器の不良で 飛行を止める でも 次へつながる打ち上げ

北海道新聞

 【大樹】インターステラテクノロジズ(稲川貴大社長)は30日、小型ロケット「MOMO(モモ)」を町内で発射した。高度100キロの宇宙空間には到達しなかったが、打ち上げを一目見ようと、見学会場に詰めかけた大勢の観客や地元関係者は「よくやった」「これからも応援したい」と拍手を送った。


 午後4時30分すぎ、「ゴー」と地響きのような音が聞こえると歓声が上がり、見学会場がどよめいた。


 前日の発射は濃霧のため延期。30日は早朝から打ち上げを予定していたが、機体トラブルなどで夕方までずれこんだ。発射場周辺は30日も引き続き霧が立ちこめており、観客は今か今かと打ち上げを待った。


 パブリックビューイング(PV)会場の町多目的航空公園では、前日から泊まり込む人も。29日に一番乗りし、1泊して最後まで見届けた札幌市の富田豊さん(71)は「ここに一番長くいた。だめかと思ったけど打ち上がってくれ感激」。家族と前日から来ていた室蘭市の中学3年小林拓暉さん(14)は「音がすごくて興奮した」。中札内村の井原蒼斗(あおと)君(5)は「将来は宇宙飛行士になり月に行きたい」と夢を膨らませた。


 打ち上げ後、PV会場には同社創業者の堀江貴文さんと稲川社長が登場。「待たせてすみません」と口々に述べた。堀江さんは「目標は達成できなかった。次かその次には宇宙にいけると思う。応援してほしい」と強調。稲川社長は「モモの改良をするが、そこがゴールではない。人工衛星を打ち上げ、宇宙にアクセスしやすくしたい。大きなロケットも開発したい」と抱負を語った。

実業家の堀江貴文氏らが創業したベンチャー(VB)のインターステラテクノロジズ(北海道大樹町)は30日午後4時32分、観測ロケット「MOMO(モモ)」初号機を打ち上げた。飛行中に機体の情報が受信できずエンジンを緊急停止し海に落下。民間単独開発ロケットの宇宙への挑戦は失敗に終わったが、堀江氏は「後継機を3カ月後に開発する」と次の狙いを語った。

観測ロケット「MOMO」の打ち上げ後、記者会見する実業家の堀江貴文氏(30日午後、北海道大樹町)
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観測ロケット「MOMO」の打ち上げ後、記者会見する実業家の堀江貴文氏(30日午後、北海道大樹町)
■堀江氏「後継機、3カ月後に開発」

 「機体が破損するなどの不具合があった」。記者会見で、インターステラの稲川貴大社長は宇宙空間に届かなかった原因を語った。打ち上げ直後は正常だったが、66秒後に飛行速度がマッハを超えたときに機体が破損したとみられる。配線などが破れて機体からの通信が途絶えた。直後にエンジンを緊急停止させた。到達高度は約10キロで海岸から約6.5キロメートルに着水したという。

 モモは全長10メートルの小型ロケット。民間企業が単独で開発した国内初の宇宙ロケットとして期待を集めていた。打ち上げから約4分後に地上100キロメートルの宇宙空間に到達し、搭載した機器で宇宙に到達するまでの機体の挙動などを調べる目的だった。稲川社長は「宇宙には届かなかったが、機体のデータを取るという意味では満足」と打ち上げの意義を強調した。

北海道大樹町の実験場から打ち上げられる「インターステラテクノロジズ」の小型ロケット(30日午後)=共同
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北海道大樹町の実験場から打ち上げられる「インターステラテクノロジズ」の小型ロケット(30日午後)=共同
 しかし、打ち上げが4回延期されるなどトラブルが連続した。29日午前の発射予定だったが、機材の不具合や天候の影響で打ち上げを2度延期し30日に設定した。

■エンジン開発と姿勢制御は成功

 30日早朝には、ロケットの燃料タンクのバルブや機体を制御する基板部品に問題が発生した。その後、同日正午ころの打ち上げ予定も延期し、午後4時32分に打ち上げを決行した。今後、打ち上げ直前の機体整備のノウハウを蓄積する必要がある。

 今回、エンジン開発と姿勢制御は成功した。機体破損の原因究明と対策が、インターステラが2020年の打ち上げを目指す次世代ロケット開発への第一歩となる。