政治: 東京都議選 奢れるものは久しからず 自民党


読売新聞 社説
都議選自民大敗 「安倍1強」の慢心を反省せよ 2017年07月03日 06時00分

 ◆小池氏支持勢力の責任は大きい


 小池都政の改革に期待したい。それ以上に、自民党の安倍政権の驕おごりと緩みに反省を求める。それが、首都の有権者が示した意思と言えよう。

 東京都議選は、小池百合子知事が代表を務める初陣の地域政党都民ファーストの会」が躍進し、自民党に代わって第1党の座を確保した。

 公明党、無所属などと合わせた小池氏支持勢力の議席の合計は、半数を大きく上回った。小池氏は、都政運営を進める安定的な基盤を築くことに成功した。


 ◆公明と二人三脚が奏功


 自民党は、歴史的な惨敗を喫した。長年、緊密に連携してきた公明党と袂たもとを分かった影響に加え、国政の加計学園問題に関する政府の不十分な説明や、稲田防衛相らの失言が響いた。


 知事が地域政党の先頭に立つ選挙戦は都民の関心を集め、投票率は51・27%と前回を上回った。


 都民ファーストの原動力は、小池氏個人の高い人気だ。公明党との選挙協力も功を奏し、安倍政権に対する批判票の受け皿となった。1人区を次々と制し、複数区でも着実に議席を得た。


 公明党は、小池氏と二人三脚で都政を安定させると訴え、7回連続で全員当選を果たした。

 小池氏は記者会見で「期待以上の成果で、都民の理解を得たことに感動すると同時に、責任の重さを痛感する」と勝利宣言した。


 昨年8月の就任以降、小池氏は豊洲市場の盛り土問題などを追及し、都の縦割り組織の弊害や無責任な体質を浮き彫りにした。情報公開による都政の透明化を掲げる姿勢も都民に評価された。

 市場移転問題では告示直前、豊洲に移したうえで築地を再開発する案を示し、「決められない知事」との自民党の批判をかわした。

 ただ、二つの市場機能をどう併存させるのか、詳細は語っていない。具体的な計画や収支見通しを早期に提示する必要がある。


 ◆閣僚らの失言も響いた

 自民党は、現有の57議席から大幅に後退した。過去最低だった2009年都議選の38議席をも大きく下回った。


 下村博文都連会長は、「国政の問題が都議選に直結したのは非常に残念だ」と語った。


 加計学園問題を巡る疑惑に安倍政権がきちんと答えなかったことや、通常国会終盤の強引な運営、閉会中審査の拒否などに、有権者が不信感を持ったのは確かだ。

 都議会自民党は、小池氏の改革に抵抗しているイメージを払ふっ拭しょくできなかった。麻生副総理兼財務相自民党の二階幹事長が応援演説で、独自のメディア批判を展開したことも、政権党の慢心を印象づけ、逆風を加速させた。

 国政選並みの挙党態勢で臨んだ都議選の敗北は、自民党にとって打撃だ。衆参両院選で4連勝し、「1強」と評される安倍首相の求心力の低下は避けられまい。

 年内に予定される憲法改正自民党案の作成・国会提出など、大切な課題が山積している。来年9月には自民党総裁選も控える。


 安倍首相は、今回の敗北を重く受け止め、政治姿勢を真剣に反省しなければなるまい。国民の信頼回復には、政権全体の態勢を本格的に立て直す必要がある。

 言葉で「低姿勢」を強調するだけでは済まされない。疑惑や疑問には丁寧に説明し、重要政策で着実に結果を出すべきだ。

 民進党は、告示前に立候補予定者の離党が相次ぎ、苦戦を強いられた。自民党の「敵失」を選挙に生かせないのは、国政の野党第1党として深刻な状況だ。

 共産党は、自民党への批判票を集め、議席を増やした。

 都議選で各党は、待機児童対策や防災、受動喫煙防止条例の制定などの公約を打ち出したが、政策論争は概して低調だった。


 ◆知事の監視機能が重要


 新たな都議会では、小池氏支持勢力が多数派を占めても、二元代表制の基本を踏まえ、知事との一定の緊張関係を維持すべきだ。

 懸念されるのは、小池氏との「近さ」を訴えて当選した新人議員たちが単なる「追認集団」になることである。政治経験に乏しい人が多いだけに、知事にモノを言えない可能性が指摘される。

 知事と一線を画し、都政をチェックする役割を果たさなければ、小池氏が批判してきた「古い議会」と同じになりかねない。


 小池都政では、一部の外部有識者らの提言を重視した政策決定が目立っている。無論、議員への過度な根回しなどは排すべきだが、都議会という公式の場で政策論議を尽くすことは欠かせない。

毎日新聞 社説

都議選で自民が歴史的惨敗 おごりの代償と自覚せよ

 「築城3年、落城1日」。安倍晋三首相が自らを戒めたこの言葉を地でいくような結果だ。

 東京都議選は、小池百合子知事を支持する勢力が圧勝し、自民党は歴史的な大惨敗を喫した。


 「加計学園」問題や「共謀罪」法の強引な採決などで安倍政権への批判が急速に強まる中、「小池都政」への評価以上に政権の今後を占う選挙として注目された。

 この選挙結果は「1強」のおごりと慢心に満ちていた政権に対する、有権者の痛烈な異議申し立てと受け止めるべきだろう。それほど自民党への逆風はすさまじかった。

 さらに、首相に近い稲田朋美防衛相の軽率な言動や、「安倍チルドレン」と称される衆院当選2回議員の醜聞が逆風に拍車をかけた。


 首相は今後、早期の内閣改造で立て直しを図るとともに、謙虚な姿勢のアピールを試みるだろう。しかし、数の力で異論を封じ込めてきた強権的な手法が不信の本質であることをまずは自覚すべきだ。

 少なくとも野党の求める臨時国会や閉会中審査に応じ、加計関係者の国会招致を実現する必要がある。


 首相が自民党に指示した憲法改正のスケジュールも不透明になってきた。野党を置き去りにして独断で進めることは厳に慎むべきだ。

 小池氏自ら率いる「都民ファーストの会」は政権批判票の受け皿となり、結成からわずか9カ月余りで都議会第1党に躍り出た。

 小池氏が批判してきたのは従来の都政を十分にチェックできなかった都議会の不透明な体質だ。ただし、新たな知事与党が小池都政を追認するだけになれば、都庁の情報公開は進まない。知事と議会の間には健全な緊張関係が必要だ。


 国政選挙で4連勝してきた安倍首相にとって、政権復帰後、初めて経験する大型選挙での敗北だ。

 にもかかわらず、国政の野党第1党である民進党は政権批判の受け皿になるどころか、小池新党と自民党の対決構図の中に埋没した。


 他方、共産党は前回都議選の獲得議席を上回る健闘を見せた。

 民進党蓮舫代表は次期衆院選共産党との協力を進めようとしている。だが、成算のある路線なのか、厳しい総括が求められている。