安倍内閣 自業自得 軒並み支持率低下

 官房長官に代表される「問答無用」の政治がいかに嫌われているかが数字に表れている。安倍首相の尻馬に乗る高村正彦自民党副総裁の「野党はゲスの勘ぐり」発言など、謙虚さを失う強権的な政治に終わりが見えてきた。


NEWSポストセブン / 2017年6月19日

「官邸記者クラブどころか政治部に所属した経験もないので、(6月)6日に初めて(菅義偉官房長官の定例会見に出た時は、さすがに緊張しました」──そう語るのは東京新聞社会部記者の望月衣塑子(いそこ)氏(41)だ。


 2000年に入社後、警察や東京地検特捜部などで事件取材に携わり、2004年には日本歯科医師連盟の闇献金疑惑の取材班にも加わった。2児を出産後の2014年からは武器輸出問題の調査に注力してきた。


 その望月氏が永田町でにわかに注目を浴びたのは、6月8日の菅氏の定例会見でのことだった。


「前川(喜平・前文科次官)さんだけでなく、複数の告発が出ています。もう一度真摯にお考えになって、文書の公開、第三者による調査という考えはないですか」


 そう質問した望月氏に対して菅氏が、「存否や内容などの確認を行なう必要はない」と応じる。


 5月17日に朝日新聞がスクープした〈総理のご意向〉文書。文書がやり取りされた当時の事務方トップである前川氏が「本物」と証言した後も、菅氏は「文科省の調査で確認できなかった」と繰り返していた。


◆クラブの“ルール”は知らなかった。


 だが、この日のやり取りはこれで終わらなかった。望月氏が何度も質問を重ねたのだ。


「(文科省が再調査をしないのは)安倍総理官房長官の菅さんたちが判断しているのではないのか」


 次第に「それはあり得ません」と応じる菅氏の表情が引き攣っていく。事務方から「同じ趣旨の質問は止めてください」と制止されても望月氏は、「きちんとした回答をいただけていると思わないので、繰り返し聞いています」と切り返して質問を続ける。通常10分程度の会見は約40分に及んだ。やり取りはテレビでも大きく取り上げられ、翌9日、文科省は再調査の実施を発表した。望月氏はこう語る。

「9日未明に『政権内に再調査論浮上』という速報が流れた時は驚きました。もちろん、自分の質問がどれだけ影響したかはわかりません。百戦錬磨の官房長官からすると“うるさい女が来た”という程度だろうと思っていましたので」


 とはいえ、菅氏の会見に“異変”が起きた直後の再調査で文書の存在が確認されたのは間違いない。望月氏が振り返る。


「会見場にいた大勢の官邸記者クラブの記者さんたちはシーンとしていて、最初は戸惑いました。政治部の仕事場では、私のように質問を繰り返すやり方は礼を失していると思われたのかもしれません。ただ、幸いにも英字紙『ジャパンタイムズ』の吉田玲滋記者が連動するように質問してくれたので、私も問いを重ねることができました」


 社会部記者の望月氏は、毎日2回ある官房長官会見にこれまで出たことはなかった。執拗な追及は、“部外者”だから可能だった。


官房長官会見では番記者に暗黙の取材ルールがあると聞いています。政府の公式見解を求める場合には事前に内容を通告したり、質問も1人2〜3問程度に留めるのが通例といいます。他社からすれば困った輩が現われたと映ったかもしれません」(望月氏


 6月8日の会見では他社の記者が2〜3回しか質問しないところ、望月氏の質問は実に23回を数えた。

政治家ばかりかマスコミも慣れ合っている。


読売新聞 

 安倍内閣支持率は49%で、前回調査(5月12〜14日)の61%から12ポイント下落した不支持率は41%(前回28%)に上昇した。


 内閣支持率が50%を割ったのは、昨年6月17〜19日調査(49%)以来。下落幅は2012年12月の第2次安倍内閣発足以降で最も大きかった。ただ、最低を記録した安全保障関連法成立直後(15年9月調査)の41%は上回った。内閣を支持しない理由のトップは「首相が信頼できないから」48%で、第2次安倍内閣発足以降で最も高かった。


毎日新聞

 毎日新聞は17、18両日、全国世論調査を実施した。安倍内閣の支持率は36%で、5月の前回調査から10ポイント下落。不支持率は44%で同9ポイント上昇した。不支持率が支持率を上回ったのは2015年10月以来。学校法人「加計(かけ)学園」の問題や、「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法への批判が影響したとみられる。


日本経済新聞

 日本経済新聞社テレビ東京による16〜18日の世論調査で、安倍内閣支持率は49%となり、5月の前回調査から7ポイント下がった。40%台に落ちるのは2016年3月調査以来。不支持率は6ポイント上昇して42%で、15年10月以来の水準だった。学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画を巡る問題や、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の国会運営などが影響したとみられる。

 高支持率を保ってきた安倍内閣は、安全保障関連法を巡り世論の賛否が割れた15年秋以来の厳しい局面を迎えた。


 加計学園獣医学部新設計画を巡っては、政府は適切に手続きが行われたと説明する一方、文部科学省の追加調査で「総理のご意向」などと書かれた文書が見つかった。これまでの政府の説明に納得できるか聞いたところ、「納得できる」は11%にとどまり、「納得できない」は75%に達した。


 内閣支持率は60%だった前々回の4月調査と比べると11ポイント下がった。2カ月間の下げ幅としては安保法を国会で審議していた15年5〜7月以来(12ポイント)の大きさとなった。不支持率も、安保法成立から1カ月後の水準(42%)に並んだ。