おめでとう

2015年7月17日6時0分 スポーツ報知

 又吉が最も尊敬し、公私ともに親交のある芥川賞作家・中村文則さん(37)は16日夜、スポーツ報知に祝福の言葉を寄せた。


 又吉君と初めて会ったのは、彼がまだほとんどテレビに出ていなかった2007年頃でした。僕はお笑いが好きでよく見ているのですが、正直存じ上げなかった。

 でも、いきなり初対面で「フルーツポンチ」の村上健志さんと「しずる」の村上純さんを紹介されて「これが本当のW村上(村上春樹村上龍の両作家を指す言葉)です!」とボケられたのですが、お二人もまだ無名だったので、ボケに気付かず「あ、はい…」とリアクションしてしまいました。

 独特の雰囲気を持っている人ですし、ネタも面白かったので売れても驚きはありませんでした。でも、彼は売れれば売れるほど謙虚になる。変な人です。


 「火花」は見事な青春小説だと思いますね。大きなものに対するコンプレックスというテーマは、これまでも優れた表現者が描いてきたものですが、正直「芸人が小説を書いた」というレベルじゃない。芸人・又吉直樹という大きな枠の中に作家・又吉直樹がいるように思います。


 先週、久しぶりに会いましたけど、芥川賞の話は出ませんでした。何もたいした話はしていません。僕の下らない話を聞いてくれるだけです、いつも。

 又吉君はいろんなところで僕の作品を読んでくれていると話してくれるので、僕もちゃんと頑張らなきゃなあと思っていますよ。(談)


 ◆中村 文則(なかむら・ふみのり)1977年9月2日、愛知県東海市生まれ。37歳。2002年、デビュー作「銃」で新潮新人賞を受賞。05年「土の中の子供」で芥川賞受賞。14年には米国の文学賞デイビッド・グーディス賞を日本人初受賞。又吉は「何もかも憂鬱な夜に」を生涯の一冊に挙げている。超巨人ファン。


 どこかの少しばかり売れたくらいで、言いたい放題している勘違い「永遠の作家」とは・・えらい違いです。


2015年7月17日6時0分 スポーツ報知

 純文学誌「文学界」(文芸春秋)編集部の浅井茉莉子さん(31)は「火花」の担当編集者で、又吉の文才に注目して小説執筆を依頼した「作家・又吉直樹」の生みの親でもある。伴走した5年間をスポーツ報知に語った。


 「芸人・又吉」を「作家・又吉」へと導いた人は、会見場の片隅から壇上にいる新芥川賞作家の晴れ姿を見つめていた。「編集者として震えるくらいうれしいです」。浅井さんにとっても初めて味わう喜びだった。

 2010年、文芸誌「別冊文芸春秋」編集部に在籍していた当時、うわさを聞いた。「ピースの又吉さんがウチの雑誌を愛読してくれているらしい」。ブログを見ると「別冊文春」への愛をつづっていた。「なんて人だと…。本好きでも、なかなか読まないような雑誌なので…(笑い)」

 翌11年、プライベートで訪れたイベント「文学フリマ」に、やはりプライベートで来ていた又吉の姿を発見。あいさつして「雑誌を毎号送らせてください」と伝えると、自宅の住所を教えてくれた。

 その後、又吉のエッセーや俳句などを読破した。「この人すごい! 面白すぎる!」。詳細な記憶を文章に再現する力、観察眼に文学的才能を感じた。いてもたってもいられず「小説を書きませんか?」とつづった手紙を自宅に送った。するとメールで「小説は好きですが、書くことにはためらいがあります。多くの素晴らしい作家がいる。自分が書く意味を見つけられません」と返信が来た。「誠実な人だなあ、と」。なおさらホレて、数か月間にわたって口説きに口説いた。そして12年4月、最初の短編「そろそろ帰ろかな」の原稿をもらった。

 13年7月に「文学界」に異動したことを機に「また書いてください!」と依頼した。又吉からは高校時代の話、恋愛話などの提案もあったが「今いちばん考えていることを書いてほしい」と伝え、受賞作の構想が生まれた。「打ち合わせは居酒屋の個室、深夜のカラオケボックス…。会社にも来てくれて」。明石家さんまとキャバクラに行ったこと、観月ありさの誕生日会に行ったことなども、たまには話してくれた。

 そして、ある日「火花」と名前の付いた縦書きのワードファイルでメールに添付され、送られてきた。一読し「コレが載ったらウチの雑誌は完売するな」と確信しつつ、編集者として意見を伝えた。不要なシーンはカットし、登場人物を加え、4、5回と改稿。又吉は掲載の直前までゲラを真っ赤にした。

 浅井さんは言う。「又吉さんによって純文学は活性化しましたし、純文学を読むことへの憧れが一般的な読者にもまだ残っていると教えられました」。最近、又吉に告げられた。「昔は40歳ぐらいで死ぬんじゃないかと思ってた。でも、今は長生きしたいです。ずっと小説を書いていきたいから」(北野 新太)


JCASTニュース 2015/1/ 6 12:53

 お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さん(34)が2015年1月7日発売の文芸誌「文学界」2月号(文藝春秋)に中編小説を掲載し、純文学デビューを飾る。5日、各紙が報じた。


報道によるとタイトルは「花火」(注:原文のママ もうこのあたりで間違えている。)で、400字詰め原稿用紙230枚に及ぶ。主人公の若手芸人「僕」の視点から師と仰ぐ先輩芸人の再起と挫折を描いた。


芸能界きっての読書家として知られる又吉さんは12年4月にも「別冊文芸春秋」に自伝的短編小説「そろそろ帰ろうかな」を発表している。


「文学界」は芥川賞作家を多く輩出してきた主要文芸誌の一つで、タレントの起用は極めて異例。


 参照ブログ [http://blog.goo.ne.jp/makyabery7/e/837241c37f3646199f01e32a8c61d3a6:title=『makyaberyroom』 2015/07/17 「又吉さん おめでとう」]





 


総合文学ウェブ情報誌 文学金魚  7月 3, 2012 • 12:00 AM

 設楽哲さんの文芸時評 『No.001 別冊 文藝春秋 2012年05月号』 をアップしましたぁ。人気お笑いコンビ・ピースの又吉直樹さんの小説 『そろそろ帰ろかな』 を取り上げておられます。お笑いの世界でも独特の世界観をお持ちになる又吉さんの、本格的作家デビュー作であります。設楽さんの時評によると、又吉さんは私小説的な作品をお書きになったようです。

 文学金魚の文芸誌時評を読んでいただくとおわかりになると思いますが、日本の小説界では私小説的作品が、文学の最も純なる部分 = 本質としての 「純文学」 となっています。図式的に言えば、それが制度化してしまっていることが、文学の大きな衰退の一因になっています。言いにくいことですが、純文学雑誌でしか有名でない作家さんは大勢いらっしゃいます。多くの人が 「ああ、あの作品を書いた人ね」 と思い出せるような代表作がない作家さんがほとんどです。一番の晴れ舞台は芥川賞受賞時でしょうが、10 年後の文学界での芥川賞作家の生存率は、極め(て)厳しいのが現状です。

文学に限りませんが、どのジャンルでもこれだけは譲れない本質のようなものはあります。日本の小説の場合、私小説がその譲れない部分の一つであることは確かだと思います。しかしそれが目に見えて疲弊しています。作品ではなく、私小説=純文学を守ろうとする制度の方が目に付くようになっています。

 こういう状況では、既存の文学制度にすっかり取り込まれた人よりも、外部から参入した人の方が問題の核心をつかめる可能性があります。ただ芸能人の方の小説の場合、言葉は悪いですが、ネタ勝負という面があって、それが尽きると作品のおもしろさがスッと低下してしまうことがあります。実際には物書きはストックのネタが尽きたところからが勝負です。又吉さん、頑張ってどんどん書いてくださいねっ!。

受賞会見より
Q:作品を書こうと思ったのはいつごろで、そのきっかけは何があったのでしょうか。

「小説を書いてみませんか」という声をかけてもらったのが、大きい理由としてありますね。あとは急にテンション上がったというか、例えが難しいんですけど、ジャッキーチェンの映画を見た翌日に階段を走りながら駆け上がりたい衝動に駆られるときってあるじゃないですか。あの感じ。ちょうど西加奈子さんの「サラバ!」を読んで、無敵になったような気持ちが沸いてきてそれで書けたというのはあります。






サラバ! (上)

サラバ! (上)