株高神話も傾くのか

日本経済新聞

17日の東京株式市場は「GDPショック」に見舞われた。安倍晋三首相が消費税率の再引き上げへの判断材料とする2014年7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値が同日の取引開始前に発表となった。結果は市場予想を大幅に下回るマイナス成長で、株式市場は取引が始まると売りが膨らんだ。その後も売りは止まらず、日経平均株価終値は前週末比517円安の1万6973円と10日以来、1週間ぶりに節目の1万7000円を割り込んだ。急浮上していた衆院解散の観測を手掛かりに買ってきた海外ヘッジファンドが、慌てて利益確定に急いだのが株価急落の背景だ。GDPマイナス成長をきっかけに、投資家はユーフォリア(陶酔)からたたき起こされた格好だ。


 日経平均先物は、日本市場が開く前のシンガポール市場で乱高下した。午前9時50分のGDP発表後、いったん買いで反応し、12月物は1万7500円を上回る場面があった。だが、シンガポール市場で下げに転じると、その後開いた大阪取引所では売り一色になった。GDPが弱い内容なら消費再増税の見送りにつながると、投資家は瞬間的に買いに反応したが、「あまりに悪い内容に次第に売りが優勢になった」(大手証券株式部)ようだ。


 海外ヘッジファンドには、衆院解散後の総選挙で自民党議席を保てば、安倍政権の基盤が再強化されるとの思惑があった。ただ、景気が想定以上に悪ければ「アベノミクス」の失敗と捉える有権者は増えかねない。「自民党は勝てるのか。解散そのものが景気懸念を招くのではなど、市場で不透明感が強まることは避けられない」(大和住銀投信投資顧問の門司総一郎・経済調査部部長)。解散に沸き立った市場は冷静さを取り戻しつつある。