報道の偏り正すのは マスコミではない

田中 宇 氏 国際ニュース解説 無料版 2014年3月20日 より

 米欧はクリミアの住民投票を「国際法上、無効だ」と言っているが、その根拠が不明確だ。英国と領有権を争ったマルビナス諸島フォークランド)が昨年の住民投票の結果、英国領であり続けることを認めざるを得なかったアルゼンチンでは、キルチネル大統領が「(米英主導の)国際社会は(米英側が勝っ
た)マルビナスの住民投票を合法と認めたのに(米英側が負けた)クリミアの住民投票は違法だと言う。これは全くおかしい」と発言し、クリミアの住民投票を正当と認めるべきだと主張した。


 クリミアは歴史的、民族的にロシアとのつながりが非常に強く、ウクライナの他の地域と異なる独自性があり、住民投票は国際基準からみて正当だ。アルゼンチンの大統領の主張は正しい。その分、米欧の国際信用が下落している。

  以前の記事に書いたように、ウクライナはロシアに比べて軍隊が非常に弱い。それを補うため、ウクライナ新政権の安保部門の最高責任者であるネオナチ政党スボボダの創設者、アンドリー・パルビーは、6万人の極右ネオナチ支持者に軍事訓練をほどこして「国家防衛隊」を組織しようとしている。


  これは全く悪名高きナチスの親衛隊の再現だ。極右の彼らはおそらくロシア軍と戦うより、ウクライナ国内のロシア系など自分たちに従わない者たちへのテロ行為に注力する。下手をすれば内戦だ。ウクライナ新政権を支援している米欧の倫理欠如が国際的に問題になり、国際政治的な米欧の弱さが増すだろう。


  米国がいずれウクライナNATOに入れるとの予測もあり、そうなると米欧の倫理的な弱さがさらに増す。