読売新聞は報道機関の義務を果たせ


 自らスクープした記事が次第に怪しくなってきた米国でのIPS報道に対し、まるでそのような事件が存在しなかったように、読売新聞が「誤報」というより自称研究者に騙されたことを一切報道しない事は、日本を代表する新聞としてどうなのだろうか?


毎日新聞 2012年10月12日 15時13分(最終更新 10月12日 15時25分)

 【ニューヨーク草野和彦】日本人研究者の森口尚史氏が米ハーバード大学の「暫定承認」を受けて人工多能性幹細胞(iPS細胞)の臨床応用を実施したと主張している問題で、同大学には森口氏が承認申請をした記録が一切ないことが、ハーバード大関係者への取材で分かった。

 森口氏が今年2月に米国で実施したとするiPS細胞の臨床応用については、読売新聞が「世界初」として報道。だがハーバード大と、森口氏が患者への治療を実施したとされるマサチューセッツ総合病院は11日、▽森口氏は99〜00年に同病院の客員研究員だったが、その後は病院、大学とも関係がない▽いずれの審査委員会でも、森口氏の関わる臨床試験は承認されていない−−との声明を出した。

 さらに同大関係者は「そもそも森口氏が審査委員会に(承認を)申請した記録がない」と指摘。森口氏が主張する「暫定承認」という措置はなく、「承認するか不承認かの判断だけ」だという。

 ハーバード大関係者は「ハーバードに所属していないのに、どうして申請ができるのだろうか」と疑問を呈している。

 ◇報道の読売新聞「確認中」
 11日付朝刊で、「日本人研究者の森口尚史氏が人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った世界初の臨床応用を実施した」と、最初に報じた読売新聞グループ本社広報部は、毎日新聞の取材に対し、「現段階で確認中としか答えられない」と回答。また12日付朝刊で、「森口博士の研究に関連するいかなる臨床研究も大学及び病院の倫理委員会によって承認されていない」とのハーバード大の声明を報じたことについて、同広報部は「必要な取材を行った」と答えた。

 読売新聞の11日付朝刊は、森口氏らが、iPS細胞から心筋細胞を作り出し、今年2月以降、米マサチューセッツ総合病院で、6人の心不全の患者に移植したとの記事を掲載した。