ワーテルローとウェンブリー
なぜか昔から戦争映画(戦史・戦記および文学)が好きです。でも戦争は大嫌いです(但し、不当な侵略に対する自衛及び抵抗は保持したい)。
筆洗 東京新聞 2012年8月11日
ナポレオンをワーテルローの戦いで破った英国の名将ウェリントンが言ったとされる言葉がある。「ワーテルローの戦いは、イートン校の校庭で勝ち取られた」 ▼その超名門校の校庭で連綿と続くのが、フィールドゲームという球技だ。卒業生曰(いわ)く「ルールが複雑で、サッカーのようでも、ラグビーのようでもある。本当に荒々しく、まさに戦争のようだ」 ▼イートンに限らず、英国の名門校には伝統の蹴球があった。個人の躍動と組織の戦略。勝機と危機の察知能力。陣形を組みつつ野を縦横無尽に駆け回り、ゴールを狙う。校庭を舞台に英国精神の主柱「自由と規律」が育まれたのだろう
▼サッカー女子日本代表の佐々木則夫監督は、チームを率い始めたころ、感じたそうだ。「真面目で頼りすぎるというか、発想、判断する力、ふてぶてしさが足りない」。教育現場の課題を語った言葉にも聞こえた ▼そのなでしこが、サッカーの聖地ウェンブリーで咲いた。優勝は逃したが、主将の宮間あや選手の「できることはすべてやりました」との言葉に、頷(うなず)かぬ人はいないだろう ▼「明るくて正義感があってフェアプレーで、常に相手をリスペクトする。それが結集すると小さい子たちでもパワーを出す」。戦い終えた佐々木監督の評だ。ウェンブリーの戦いの心が日本中の校庭に広まれば、未来には、どんな花が咲くだろう。
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