この重大な局面 早期の解散「総選挙」で決着をつけよう!

総選挙をやり直せの声 なぜ小沢が悪者で野田が正しいのか
(日刊ゲンダイ2012/6/5)

なにから、なにまで前代未聞の内閣改造だ。

ドジョウ首相は、ほんの5カ月前「最善最強の内閣だ」と豪語して改造したはずだ。半年もしないうちに「最善最強」のメンバーを5人もクビにするとはどういうことなのか。野田首相が組閣するのは、これで3回目。政権発足から9カ月しか経っていないのに、3回も組閣するなんて聞いたことがない。



国会の会期中に改造するのも異例のことだ。しかも、防衛大臣に民間人を起用している。シビリアンコントロールの重要性を、いったいどう考えているのか。

なにより異常なのは、改造した理由だ。内閣改造は、本来、総理の強い意志で行うもの。ところが、ドジョウ首相は、自民党から「問責2大臣を更迭しないと、消費増税法案の成立に協力しないぞ」と、改造を要求され、「はい、分かりました」と二つ返事で応じているのだから、どうかしている。

過去、野党に妥協した総理は何人もいたが、組閣まで言いなりになるなんて、戦後、初めてのことだ。
野田首相は常軌を逸しています。すべては『政治生命をかける、命をかける』と宣言している消費税10%を実現させるためなのでしょうが、冷静さを失っている。

信じられないのは、政党の“命”である政策まで捨てようとしていることです。自民党の要求に従って、マニフェストに掲げた『年金改革』や『後期高齢者医療制度の廃止』まで撤回しようとしている。民主党の総理大臣なのに、人事も政策も、なんでも自民党の言いなりになるなんて、どうかしています」(政治評論家・本澤二郎氏)
政党が政権を目指すのは、選挙で掲げた「政策」を実現させるためだ。なのに、せっかく政権に就いたのに、消費税10%のために野党に要求されて政策を「撤回」するなんて、どう考えてもおかしい。


「4年間上げない」の約束はどうした


 そもそも、自民党がマニフェストの撤回を迫っているのは、民主党をボロボロにするためだ。実際、マニフェストを撤回したら、民主党は政党として終わる。

それでもドジョウ首相は、お構いなし。小沢一郎との会談で「自民党との協議を進めさせていただく」と通告し、近く、自民党の谷垣総裁に直接、協力を求める予定だ。
しかし、民主主義国の日本で、こんな勝手なことが許されるはずがない。

民主党は09年の総選挙で「消費税は4年間上げない」と約束していたはずだ。なのに、選挙で公約した「マニフェスト」は実行しないくせに、「やらない」と約束した消費増税を強行するなんて冗談じゃない。選挙で約束したことは、一体なんだったのか。これでは選挙の意味がない。


 どうしても消費税アップをやりたいのなら、もう一度、総選挙をやり直すのが当たり前だ。



 「誰に対して〈政治生命〉をかけているのか知りませんが、野田首相が政治生命をかけると言うなら、消費税アップを争点にして国民に信を問うのが当然です。選挙もやらずに、支持率20%、不支持率50%の不人気内閣が、国民の6割が“反対”する消費税アップを強行しようなんて許されない。そもそも、国民が一票を投じたのは、〈鳩山代表小沢幹事長〉時代の民主党です。野田首相ではありませんよ。あの時、野田政権なんて、誰も想像しなかった。選挙の洗礼を受けていない野田首相に勝手なことをやる資格は、これっぽっちもありません」(政治評論家・山口朝雄氏)◆「公約違反」を批判しないマスコミの異常

一国の首相が自民党の言いなりになって、大臣を代え、政策まで丸のみする――日本の政治がこんな異常事態に陥っているのも、大新聞テレビの責任が大きい。
政権政党が「公約」を破ったら、どんな国のジャーナリズムだって「公約違反はおかしい」と徹底的に批判するものだ。もし、選挙で「やらない」と約束したことを強行しようとしたら、「だったら、もう一度、選挙をせよ」と迫るだろう。


 ところが、日本の大新聞テレビで「マニフェストの撤回はおかしい」「消費税アップはやらないと約束したはずだ」と、野田首相を批判した社は皆無だ。
批判どころか、朝日新聞は社説で「野田首相がようやく自民党との協調にカジを切る覚悟を鮮明にしたことを歓迎したい」「首相はいよいよ野党、とりわけ第1党の自民党との修正協議を急がねばならない」と後押しする始末。


 どうして、野田首相が国民との約束を破ったことを批判しないのか。
「大新聞テレビの報道は、あまりにも偏っています。本来ジャーナリズムの役割は、政権が暴走したら、チョット待て、とブレーキをかけることです。野田首相が消費税10%で突っ走ろうとしたら『本当に消費税アップは必要なのか』と、“そもそも論”に立ち返り、国民が冷静に考えられる時間を与えるのが当たり前です。なのに、消費税の是非をすっ飛ばし、『決められない政治からの脱却』などと論点をスリ替え、さも増税を当然のように報じている。〈社会保障と税の一体改革〉と言いながら、社会保障が抜け落ちていることにも触れない。これでは国民が、消費税アップも仕方ないか、となりかねない。日本の大手メディアは、おかしいですよ」(山口朝雄氏=前出)


「客観報道」を装って国民を騙す悪ラツ


 「小沢嫌い」の大新聞テレビは、消費税アップに反対する小沢のことを「全く筋が通らない」などと批判しているが、なぜ、「公約を守れ」と訴えている小沢がワル者で、「公約違反」をしている野田首相が正しいのか。
「大増税の前にやることがある」「やるべきことをやった後に税の話をというのが国民の気持ちだ」という小沢の主張は、誰が聞いたってスジが通っている。



 大手メディアは、シタリ顔で「党で決めたことに従うべきだ」と、消費税アップに反対する小沢を叩いているが、だったら09年「マニフェスト」も、党で決めたモノではないのか。大新聞テレビの主張はメチャクチャすぎる。
 国民生活がどうなろうが、政府と一緒になって消費税アップを実現させるつもりだ。これでは戦争を煽(あお)った戦前とまったく変わらない。



 「日本の大新聞テレビは、公正中立、庶民の味方のように振る舞っていますが、実際には政、官、財の権力と深く結びついているのが実態です。日常的に役所から便宜を図ってもらい、大企業をスポンサーにしている。権力と本気で戦うことは絶対にない。読者に気づかれないように、客観報道を装いながら、政府の宣伝をしている。もし、大新聞テレビが、客観報道に徹していたら、いまごろ消費税アップ『反対』は、6割どころか9割に達しているはずです」(本澤二郎氏=前出)



国民は絶対に大新聞テレビに騙(だま)されてはダメだ。もし騙されたら、泣きを見るのは戦前と同じく国民だ。